ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
謎解き専門の探偵社。所長の古谷と助手の井上が、持ち込まれる軽い謎から奇怪な謎まで鮮やかに解き明かすシリーズ第二弾。
≪あなたの頭を悩ます謎を、カラッと解決いたします≫――閑古鳥の啼く「謎解き専門」の探偵事務所に持ち込まれた七つの事件を、探偵・古谷が鮮やかに解決!
<年上の女性からの誘惑>に悩まされる高校三年の従弟が持ち込んだ「小麦色の誘惑」、密室状態の事務所から盗まれたあるものを見つけ出す「昇降機の密室」、偶然井上が遭遇した駐車場の追突事件の真相を暴く「車は急に……」、リンク切れになったネットのクイズ記事の解答を知りたいという「幻の深海生物」、三十六年前に義絶した弟の死の通知と共に届けられた絵画をめぐる「山師の風景画」、事故で急死した父親が残した秘伝のたれのレシピを探す「一子相伝の味」、古谷の<運命の人>西田カレンから依頼されたストーカー疑惑を解決する「つきまとう男」の七つのファイルを収録。
リアルな日常生活の中で謎解きの面白さを追求する、ミステリの名手による連作短編集。シリーズの新たな展開を予感させる、衝撃の第二弾!
(PHP研究所公式HPより)
<感想>
意外なサプライズでラストを飾った『カラット探偵事務所の事件簿』の続編。
前作が「実は○○だった」とのラストだったこともあり、今作はどのようなラストなのか!!と身構えていましたが、見事に裏をかかれました。
なるほど、そう来たか。
なんといっても、作中人物たちのその後を意外な見せ方で明かしており、オススメです!!
是非、読んで欲しい。
「小麦色の誘惑」「昇降機の密室」「車は急に……」「一子相伝の味」については過去記事にて連載時のネタバレ書評(レビュー)があるので興味があればどうぞ!!
ちなみに、管理人の通う書店では女性作家の棚に並ぶ乾くるみ先生。
で・す・が、れっきとした男性です(これもある意味叙述か)!!
乾先生、市川尚吾名義で評論もされてます。
<ネタバレあらすじ>
書き下ろし短編「つきまとう男」をネタバレ書評(レビュー)。
井上は今回に限り、記述者としてアンフェアな行為を犯したことを認める。
意図的に虚偽の事実を述べたらしいが……。
井上が虚偽を述べたのは「つきまとう男」事件でのこと。
西田カレンから依頼を受けた古谷は早速、謎を解き明かした。
古谷が辿り着いた答えは、カレンの自作自演。
トリック自体は替え玉を用意するシンプルなものだったが、古谷はこれを犯罪でアリバイを主張する為の予行演習と推理。
カレンに実行に移さないよう迫る。
これをあっさりと受け入れるカレン。
トリックを見抜かれたことよりも、何か別のことで心此処に在らずと言った様子だが。
さて、此処で井上の述べた虚偽について触れねばならない。
実は、古谷はカレンの動機を誤っていた。
カレンは犯罪の予行演習ではなく、単に古谷とお近づきになる為だけに事件を演出したのだった。
すべては古谷に恋した故の行動であった。
それに気付いた井上は何をしたか。
古谷がカレンに推理を突き付ける寸前に「古谷が妻帯者で、子供もいる」と嘘を吐いたのだ。
だから、目的を失ったカレンは放心状態だったのだ。
これが冒頭の虚偽の正体である。
ただし、この虚偽もこれを記述している現在では晴れて事実となった(注1)。
これもまた時間差トリックと言えるのだろうか?―――エンド。
(注1)つまり、事件簿2を記述している時点で古谷と井上は結婚し、子供まで居る。
◆「カラット探偵事務所の事件簿1」のラストについて
注意、ネタバレです!!
実はこの事件簿自体が壮大な告白の一環だった……とのラスト。
これに男性だと思われていた記録者・井上が実は女性だったとの叙述トリックが絡む。
多少、蛇足気味ではあるが結構効果的だった。
ある意味、乾くるみという女性的なペンネームで実は男性というのに通じている。
◆「乾くるみ先生」関連過去記事
・「六つの手掛り」(乾くるみ著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「カラット探偵事務所の事件簿 Season2(1)小麦色の誘惑(文蔵2010年11月号掲載)」(乾くるみ著、PHP研究所刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「カラット探偵事務所の事件簿 Season2(2)昇降機の密室(文蔵2011年2月号掲載)」(乾くるみ著、PHP研究所刊)
・「カラット探偵事務所の事件簿 Season2(3)車は急に……(文蔵2011年5月号掲載)」(乾くるみ著、PHP研究所刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「カラット探偵事務所の事件簿 Season2(6)一子相伝の味(文蔵2012年2月号掲載)」(乾くるみ著、PHP研究所刊)ネタバレ書評(レビュー)
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