<あらすじ>
マンションの一室で、美術評論家の槙野(小木茂光)が刺殺体で発見された。さらに、同じマンションの屋上から、槙野の妻・さおり(寺田千穂)の遺体も発見される。警視庁捜査一課の管理官・山形(三浦浩一)は、槙野の女性関係に悩んださおりが槙野を殺害後に屋上で自殺したものと考え、裏付け捜査を命じる。しかし、多摩南署のたたき上げ刑事・近松丙吉(伊東四朗)は、さおりの手に血痕が付着していないことに違和感を覚え…。
あるマンションの一室で、美術評論家の槙野圭一郎(小木茂光)が刺殺体となって発見された。玄関には凶器となった包丁と、包丁を包んでいたとみられる朝顔の絵柄の便箋が落ちており、寝室には直前まで槙野が女性と一緒に過ごしていたと見られる痕跡が残されていた。槙野はこの部屋を仕事場として借りており、携帯には「さおり」という女性との通話記録が残っていることが判明する。その直後、早朝に屋上のドアを閉める大きな音がしたとの証言を聞き屋上へと向かった捜査陣は、首を吊って亡くなっている女性を発見する。それは、槙野の妻・さおり(寺田千穂)だった。
現場に居合わせた美術誌の編集者で、さおりの高校の同級生だった坪内昇子(菊池麻衣子)の証言から、さおりは槙野の派手な女性関係に悩み、心を病んでいたことが判明する。槙野の死は、思いつめたさおりによる無理心中だったのか…?それを裏付けるように、さおりが着ていた若草色のコートには槙野のものと見られる返り血が付着していた。警視庁捜査一課の管理官・山形(三浦浩一)は、さおりが夫を殺害後、屋上で自殺をしたものと考え、裏づけ捜査を命じる。しかし、多摩南署の刑事・近松(伊東四朗)は、さおりの手に返り血が一切付着していないことが気にかかっていた。
仮にさおりが手袋をはめて犯行に及んだのなら、なぜ階段を駆け上がる音や屋上のドアを閉める音には気を配らなかったのか?しかも、現場から手袋は見つからず、屋上に設置されていた水道にもさおりが血を洗い流したような血液反応は検出されなかった。そこで近松は、捜査会議でさおりの犯行と断定するのは早いのではないかと主張する。しかし、近松を目の敵にする管理官の山形から、近松の推理はチームワークを乱すだけだと厳しく咎められてしまう。
そこで近松は相棒の刑事・西尾(マギー)と地道な捜査に乗り出した。すると、槙野がある絵画を巡り巨額の金を手に入れていたことが判明し…。
(水曜ミステリー9公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
槇野が殺害され、その屋上で妻のさおりが自殺していた。
槇野は刺殺、さおりは縊死である。
槇野殺害に用いられた凶器はさおり宅にあった包丁と断定。
便箋2枚が包装に用いられていた。
このことから、さおりが槇野殺害後に自殺したと思われた。
近松はさおりの手だけが、返り血を免れていたことに疑問を抱く。
手袋を使用していたとしたら、何処へ消えたのか?
さらに、さおり宅で発見された便箋は2つ。
1冊は使い切られており、2冊目が使いかけの状態であった。
そして、2冊目からは罫紙が消えていた。
手袋と罫紙……この2つは何処に消えたのか?
槇野が脱税に関与していたことが判明。
荒井と言うゴルフ場経営者と組んで、槇野から荒井が絵を買ったとして、1億円を脱税したらしい。
絵の出所に興味を持つ近松。
矢先、さおりの親友である昇子がさおりからの手紙を持参して現れた。
その数は2枚。
どうやら、槇野を殺める前にさおりが投函した手紙らしい。
しかも、昇子の証言で、槇野の1億円の絵が安部絵里子の所持品だと明らかに。
絵里子もまた、昇子と同じくさおりの親友らしい。
どうも、いわくありげだが……。
安部絵里子を訪ねた近松。
口元の黒子が特徴的な絵里子は3年前に夫と離婚、幼い息子・隆史と2人で生活していた。
絵里子によれば、絵は祖父の遺産。
換金しようと槇野に渡したところ、百万円で買い取られた。
しかし、同じ絵を槇野は1億円で売ったのだ。
まるで詐欺である。
これに怒った絵里子は槇野を問い詰めたらしい。
だが、相手にもされなかったそうだ。
絵里子はさおりから送られて来た手紙を近松に差し出す。
こちらも2枚。
これを読んだ近松はある疑問を抱く。
昇子宛に届いたさおりの手紙と見比べる近松。
絵里子宛の手紙には「さようなら さおり」と記されている。
だが、昇子宛の手紙には、結びのその一言が無かったのである。
何か意味があるのではないか……近松は悩む。
犯行当日の朝、槇野のマンションから慌てて逃げ出す女性の目撃証言が得られる。
その女性の口元には黒子があったらしい。
黒子と言えば、安部絵里子である。
こうして、絵里子が取り調べられる。
夫と離婚した絵里子は隆史と2人、生活に不安を感じていた。
槇野は金銭的支援を餌に絵里子に関係を迫った。
もともと、過去に槇野と交際していた絵里子はこれに応じたらしい。
犯行当日、逢瀬の最中に電話がかかって来た。
槇野によれば、相手はさおりらしい。
無言で切られたと聞いた絵里子は、慌てて逃げ出したのである。
そこを目撃されたのだ。
近松は絵里子の証言に嘘は無いと判断。
情報を手に入れるべく聞き込み捜査を行う。
その夜、公園で老人が何者かに殺害された。
さおりは6時23分に、自宅から携帯で槇野のマンションへ電話をかけた。
その後、自宅からマンションへ向かった筈だ。
近松は同時刻の道を、さおりの写真を手に歩く。
目撃証言を得る為だ。
近所の主婦の証言が得られた。
だが、それによれば、さおりらしき人物は「自宅からマンション」ではなく、「マンションから自宅」へ向かっていた。
ふと、昇子の自宅が近くにあったことを思い出す近松。
昇子宅を訪れた近松。
昇子の婚約者・戸川にさおりの手紙について尋ねたところ、どうにも反応が鈍い。
訝しむ近松。
その近くに、例の老人殺し現場があった。
老人は槇野のマンション付近を根城としていたことが判明。
近松の頭に閃くモノが……。
老人の名前がサブさんだと判明。
トリハダのことをサブイボと呼んだかららしい。
しかも、サブが「空からツキが降って来た」と語っていたことも分かる。
サブの住居を調べた近松は「立入禁止」と書かれた紙を発見し、驚愕する。
さらに、血塗れの手袋も……。
手袋から槇野の血痕が検出された。
そして「立入禁止」の紙こそ、消えた罫紙だったのである。
もしも、さおりが犯人ならば、槇野を殺害し自殺する前に一度自宅方向に戻ったことになる。
つまり、戻った人物はさおりではないのだ。
近松は便箋に注目。
使いかけの便箋からは6枚使用されていた。
安部絵里子に2枚、昇子に2枚、包丁の包装用に2枚。
確かに数が合う。
だが、さおりは常に2冊の便箋を所持していた。
ちょうど1冊目が残り1枚となっており、これを書き終えたさおりは2冊目に移った。
筆圧から、1冊目には絵里子宛の内容が記載されていたことが確認されている。
つまり、さおりは1冊目の1枚と2冊目の1枚で絵里子宛の手紙を書いた。
その後、包丁用の包装紙に2冊目の2枚を使う。
最後に昇子宛に2枚使用したとしても……残された便箋の枚数と数が合わない。
どこかにさらに1枚使用されている筈なのだ。
近松は昇子宛の手紙に「さおりからの結び」が無かったことから、もう1枚あったのではないかと推理。
それを裏付けるように、回収された罫紙から記載された内容が判読された。
そこには、絵画を売った1億円の在処が記されていた。
これこそが消えたもう1枚の正体、さおりは絵里子に1億円を返却するよう昇子に依頼していたのである。
その頃、戸川は回収した1億円を手に海外へ逃亡しようとしていた。
その傍らには昇子とは違う別の女性が……。
だが、近松たちが現れ取り押さえられることに。
戸川の裏切りを知らなかった昇子は、これを知らされると肩を落とした。
昇子は取り調べを受けることに。
さおりからの手紙を受け取った昇子は、さおりの自殺に気付いた。
まだ間に合うかもと必死に駆け付けたさおりだったが、既にさおりは自殺していた。
此処で昇子は悪心を起こしてしまった。
もし槇野さえ居なければ1億円が手に入る……。
この誘惑は昇子を堕落させた。
昇子はさおりの服を着ると、さおり宅に包丁を取りに戻った。
この姿を近所の主婦に目撃されたのだ。
その後、槇野のマンションへ無言電話をかけた。
これは絵里子の証言通りだ。
だが、電話の主はさおりではなく昇子だった。
電話により絵里子が退出。
入替りに昇子が槇野を訪ねこれを殺害。
その後、さおりに服を戻した。
こうして現場を整えると、帰路についた。
しかし、ここでミスを犯してしまう。
途中で手袋と罫紙を捨てたのだが、それをサブに拾われたのだ。
しかも、昇子は顔を覚えられてしまった。
事件が表面化し、サブは昇子の犯行を確信。
これを脅迫した為に、昇子により口封じに殺害されたのだった。
昇子は戸川の為に大金が必要だったのだ。
戸川は昇子にとって恩人だったそうだ。
さおりや絵里子同様に、昇子もまた槇野と交際していたのだ。
別れたくても槇野と別れられなかった昇子。
そんな昇子を戸川は許し、結婚を約束したそうだ。
だが、戸川には別の恋人が居た。
昇子は金蔓に過ぎなかったのである。
「後悔はしていません。本当に愛した人の為だもの」毅然と呟く昇子だったが……。
「愛していたのなら、人を殺すべきではありませんでしたね」近松の言葉に泣き崩れるのだった。
「親友3人が1人の男と関係を持っていたんだなぁ……」村越の言葉。
「コワイですねぇ」近松が頷く―――エンド。
<感想>
「多摩南署・たたき上げ刑事近松丙吉」シリーズ10作目。
前作は2012年1月25日に放送されているので、実に7ヶ月ぶりの新作となりました。
過去記事にてネタバレ批評(レビュー)していますね。
・水曜ミステリー9「多摩南署・たたき上げ刑事近松丙吉 見知らぬ死体〜時間差殺人の罠 二人の女の罪深き事情我が子の為に…父の涙に迫る刑事の執念(接点のない女2人の刺殺体 消えたカメラに真相が…復讐誓った父の涙)」(1月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
もともとは東野圭吾先生の短編をテレビドラマ化したこのシリーズ。
管理人にとっては非常に思い入れの深いシリーズとなります。
詳しく説明すると、3作目までが東野圭吾先生原作。
4作目が飛島高先生、5作目がオリジナル、6作目が日下圭介先生の原作と変遷し、7作目からは夏樹静子先生の原作が用いられています。
そんなシリーズ10作目の原作は、これまでと同じく夏樹静子先生『早朝の手紙』(新潮社刊『夜更けの祝電』収録)。
<あらすじ>
死体のそばの紅いバラは何を見たのだろう?
バツイチのOL美幸は、孤独をかみしめながら39回目の誕生日を迎えた。その夜突然届けられた数本の紅いバラ、そして彼女は翌朝死体で発見された……「夜更けの祝電」。交通事故、自殺、怨恨など、一見ありふれた事件の背後に隠された周到な計画殺人。犯人の小さなミスを手がかりに、お多福顔とおっとり口調に似合わぬシャープさで、真相に迫る検事霞夕子の人気シリーズ。4編収録。
(文藝春秋社公式HPより)
検事・霞夕子シリーズが原作だったんですね。
では、そんなドラマ版の感想を。
かなり、良かったですね。
伏線の張り方から回収方法までなかなか面白かった。
ロジックも良し。
特に便箋2冊を用いての枚数勘定ロジックはイイ。
全体的に、手堅くかつ魅力的にまとめられていたように思えます。
そして、近松はホンボシしか取り調べないんだなぁ……と気付いた。
今回も絵里子は山形が取り調べしてたし。
分かっててやってるな……近松。
かなり楽しめました!!次回にも期待!!
<キャスト>
近松丙吉:伊東四朗
村越実:角野卓造
近松春子:市毛良枝
山形治:三浦浩一
坪内昇子:菊池麻衣子
槙野圭一郎:小木茂光
戸川純太:窪塚俊介
安部絵里子:吉田羊
西尾昭夫:マギー ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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