ネタバレあります!!注意!!
<あらすじ>
団地に出没する王様の正体は!?
少年の勇気は、残酷な世界の秘密を照らし出す!
団地に住む、小学生のショウタと親友トモヤ。トモヤは不登校で引きこもり。読書三昧の日々を過ごしている。その彼がする途方もないつくり話――近所に魔女が棲んでいる、団地の外に世界がない、子どもの国は残酷な王様が支配している――。しかし、ある日ショウタはつくり話通りの格好の男を目撃する。まさか子どもの王様は実在した!?
(講談社公式HPより)
<感想>
『ハサミ男』や『黒い仏』などで知られる殊能将之先生の作品です。
本作は講談社のジュブナイル向けミステリレーベル『講談社ミステリーランド』から出版された作品のノベルス版となります。
内容は、ジュブナイル向けと言うことで非常に大人し目。
『ミステリーランド』は「ターゲットであるメイン読者層、すなわち子供を主人公にこそしているものの、子供にトラウマを与えかねない作品が多い」中、本作は真面目にジュブナイルしている方だと思います。
少なくとも『ハサミ男』や『黒い仏』の作者が書いた作品とは思えないほど、普通です。
もちろん、ただ普通なワケではなくメイントリックも仕掛けられているワケですが……。
本作のメイントリックは主人公を子供にしたこと。
その子供時代特有の感性を活かし、その立場だからこその作品。
タイトルに比して些か内容こそ重い(DVについて記載アリ)ものの、子供時代を振り返りつつ読むべき作品と言えるでしょう。
アレ?……となると、やっぱり過去に子供だった人の為のジュブナイルとなるのでしょうか。
そうなると、『ミステリーランド』中、本当の意味でジュブナイルとして成立しているのは法月先生の『怪盗グリフィン』なのかなぁ。
<ネタバレあらすじ>
団地に住む小学生のショウタには親友のトモヤが居た。
トモヤは不登校で引きこもり、読書三昧の日々を過ごしている。
ショウタはトモヤとよく語らった。
トモヤの話は不思議に満ちていた。
曰く「近所に魔女が棲んでいる」
曰く「団地の外に世界がない」
曰く「子どもの国は残酷な王様が支配している」
子供心にも嘘だと分かるが、その空想はショウタを喜ばせた。
特に、子供に暴力を奮い支配していると言う「子どもの王様」はリアリティに溢れていた。
ところがある日、ショウタはトモヤの語った通りの格好をした「子どもの王様」を目撃してしまう。
子どもの王様は実在したのか!?
子どもの王様がトモヤの母に暴力を奮う現場を目撃したショウタは警察に通報。
次いで、トモヤに逃げるように告げるとトモヤ宅へ。
其処へ、子どもの王様が迫る。
王様は執拗にショウタを追い続ける。
遂に捕まったショウタ。
王様は「トモヤぁ〜〜〜、済まなかった。一緒に暮らそう!!」と語りかけて……顔色が変わった。
相手はトモヤではないと気付いたのだ。
その瞬間、隙が出来た。
ショウタは王様を道連れに窓から飛び降りた―――。
身長の差により、王様は死亡したが、ショウタは助かった。
しかし、以降、トモヤはショウタと口を聞いてくれなくなった。
そのうちにトモヤは引っ越してしまう。
彼の語る「何も無い筈の外の世界」へ、と。
だが、それも仕方がない。
何故なら、ショウタはトモヤの父親を殺してしまったから。
子どもの王様の正体は、DVにより妻子を追い詰めた父親であったのだ―――エンド。
◆関連過去記事
・『ハサミ男』(殊能将之著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『黒い仏』(殊能将之著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
◆殊能将之先生のその他の作品はこちら。
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