ネット上で話題となっており、1巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
2012年7月18日には「asahi.com」さんにて「シュールで不思議な短編集」として紹介もされました。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、2012年8月23日に掲載された作品のあらすじをまとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年8月23日「週刊少年チャンピオン」掲載
主人公は下校途中の女子高生・前村。
そんな彼女に同性の友人2人が声をかける。
「ああ、荻原さんと綱田さんか……」
相手の名前を呼ぶ前村だが、呼ばれた2人は首を振る。
「いやいやいや、私は萩原。あっちは網田だし。いつまでたっても人の名前を覚えないなぁ……」
いつものことと諦めた様子の萩原。
「それよりも……」と前村の弟に会わせて欲しいと頼み込む。
「ねぇねぇ、いいでしょ。エースで頭もいい弟君に会わせてよ〜〜〜」
甘えた様な萩原と網田。
だが、前村は断ってしまう。
がっかりした様子で去ってしまった萩原と網田。
1人になった前村は「だって、そんな人居ないから」と呟く。
もともと、前村は萩原と網田の名前も覚えていた。
だが、もしも言い間違えて傷つけたらと思うと怖くなり、敢えて名前を間違えるキャラで通したのだ。
今更、キャラを変えることも出来ずそのまま押し通しているのだった。
そして、自分に関わることで相手が傷付くことが耐えられない前村は人を避ける口実として「スーパーな弟」を生み出した。
もちろん、そんな凄い弟は存在しない。
だが、萩原と網田は弟の興味を抱いていた。
このままでは、萩原と網田にバレるかもしれない。
前村はもう少し設定を練り直す必要があるな……と考える。
帰宅した前村。
屋内には前村よりも年下の男子が数人、屯していた。
「おい、あれだろ?雄大、お前のスーパー姉ちゃん。才色兼備でモデルの」
中の1人が雄大と呼ばれた別の1人に声をかける。
「いや、違うよ。あの人は親戚の人。あれが姉ちゃんなワケないじゃん」
声をかけられた雄大は吐き捨てるように答える。
前村はそんな声を耳にしつつも静かに台所に立ち、夕食の用意を始める。
「おい、親戚の人、勝手に料理作っちゃってるけど……」
「どうせ、お腹でも空いたんでしょ。俺らもご飯食べに行こうぜ」
雄大はそのまま仲間を連れ、外食に出かけてしまう。
此処でも1人残された前村は静かに調理を終えると、食卓に2人分の食事を並べた。
だが、食卓を囲むべき家族の姿は其処にはない。
1人で夕食を摂り終えると片付けを始めるのだった―――エンド。
<感想>
2012年8月23日掲載のものです。
やめて〜〜〜心が痛い!!的な展開。
姉と弟、どちらが先に始めたのか不明なものの、互いに存在を認めず、否定し合う結果に。
ある種、見事なまでの現実逃避ですね。
目の前の現実から目を背け、架空に頼っている点では姉弟ともに同じ。
似た者姉弟なのでしょうか。
ただ、嘘を吐いているものの自宅に友人を呼んでいる分だけ弟・雄大の方が姉以外との人付き合いは問題ない様子。
しかし、前村自身は「相手を傷つけないこと」を口実に相手から逃げ自分を守っている状態。
この姉の極端に自分を守ろうとする姿勢の原因が弟にあるのだとしたら切ない。
さらに、弟が先に理想の姉を吹聴したのだとしたら居た堪れないものがあります。
うわぁ、心に来るわぁ……。
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月10日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月17日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月24日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月31日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月7日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月14日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月28日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月12日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月2日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月16日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
【関連する記事】
- 『スーサイド・パラベラム』第9話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2016vo..
- 「実は私は」第1話から第160話まで(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオ..
- 「ダジャレ禁止令」(志水アキ画、講談社刊「週刊少年マガジン」掲載)ネタバレ批評(..
- 「実は私は」第160話「藍澤渚と藍澤渚E」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」最終話(第35話)「事件の先に」..
- 「実は私は」第159話「藍澤渚と藍澤渚D」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第107話「いつかの文学全集」(加藤元浩作..
- 「黒霊ホテル殺人事件」(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連..
- 「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チ..
- 「実は私は」第158話「藍澤渚と藍澤渚C」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第34話「真犯人」(作画・星野泰..
- 「実は私は」第157話「藍澤渚と藍澤渚B」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第106話「動く岩」(加藤元浩作、講談社刊..
- 「実は私は」第156話「藍澤渚と藍澤渚A」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第33話「真相」(作画・星野泰視..
- 「実は私は」第155話「藍澤渚と藍澤渚@」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「実は私は」第154話「勘違いしよう!!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 【エピソード最終話】「黒霊ホテル殺人事件」最終話、第6話(「金田一少年の事件簿R..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第32話「二重人格」(作画・星野..
- 「ビーストコンプレックス」最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」(板垣巴留作..