2012年09月01日

「名探偵マーニー」第3話「ドッペルゲンガー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第3話「ドッペルゲンガー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

ファミリーレストランにて食事するマーニーとロイド。
其処へ1人の女性がロイドを訪ねて来る。

女性の名は亜羽、以前のロイドの依頼人である。
何か相談事があるようだが……。

亜羽の相談内容は「自分以外にもう1人自分が居る」とのものだった。
何でも自分の記憶にない日時や場所で知人による自分の目撃証言が相次いだらしい。
しかも、決まって男性と共に車に乗っている姿が目撃されていた。

まさか、ドッペルゲンガー?
不安がる亜羽にロイドとマーニーは事態を解決しようと約束する。

亜羽の証言をもとに出没地域を限定するマーニー。
一方、ロイドは亜羽の本質は「甘えながら人を意のままに利用すること」であると指摘、マーニーに注意を促す。

翌日、ロイドは後輩刑事の毛利を訪ね、ある資料を入手する。
毛利はロイドに「あの事件」について触れ「もう戻って来てもいいのでは」と呼びかけるが、ロイドの顔は浮かない。

その頃、マーニーは「もう1人の亜羽が常に男性と車に同乗していたこと」に注目。
とある店に聞き込み調査を行う。
結果、其処に犯人の痕跡を見出すのだった。

そんなマーニーにロイドから連絡が。
亜羽が以前に勤めていた会社の同僚に会っていたらしい。
ロイドが以前に解決した亜羽の事件とはストーカー事件、これに今回の事件が関係あると考えたらしい。

矢先、ロイドが何者かに襲われ負傷することに。
マーニーは怒り心頭、毛利刑事と共に犯人を追う。

ロイド襲撃犯は、徳吉すばる。
ロイドが以前に解決した亜羽のストーカーであった。

実は、徳吉は事件を起こしたつもりは無かった。
もう1人の亜羽の正体は、彼が注文した亜羽ソックリのラブドールだったのである。
ロイドに諭され、リアルの亜羽を諦めた徳吉。
だが、彼の亜羽自体への執着は強く、ソックリの人形を作ったのだ。
まるで、恋人のように接していた徳吉だが、やはりどこか物足りない。

其処で、外へも連れ回すようになったのだ。
見せびらかしたい気持ちも強かったのであろう。
車に同乗している状態でのみ目撃されたのはこの為であった。

ところが、騒ぎが大きくなりロイドまで出て来たことに恐れを為して襲ってしまったのだった。
マーニーは追い詰められた徳吉が次に摂るであろう手段はラブドールとの心中であると考え先を急ぐが……。

同じ頃、断崖絶壁には徳吉と亜羽のラブドールの姿があった。
「リアルでは誰も僕を認めてくれない、こうなったら2人で死んで幸せになろう」と訴える徳吉。

だが、相手は人形である返事のあろう筈もない……ところが!!
亜羽の人形は「嫌よ、何であんたなんかと!!」と本物同様に本性を剥き出しにした。

「えっ!?」
驚いた徳吉はそのままバランスを崩し断崖から転落してしまう……。

駆け付けたマーニーと毛利刑事の前には亜羽の姿を模したラブドールがひっそりと立つのみ。
もちろん、彼らには何が起こったのか知る術は無い。
だが、徳吉が助からないであろうことだけは間違いなかった。

そして、マーニーが気付く。
「あれ、この人形……なんだか笑っているような?」―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。

今回はその第3話です。
今回も切なく寂しく……歪な物語でしたね。

普通、この手のパターンだと「愛情を注いだ所有者に人形が応え、2人(?)あの世で楽しく生きる(?)」ことになるのかと思いきや、あの仕打ち。
痛烈です。
ロイドの亜羽評が、ラストのラブドールの態度に表れようとは誰が思ったでしょうか。
かなり、心に来ましたね。

物語的には「相手の上辺しか見なかった男が自身の独占欲を満たそうとした挙句、相手の本質により自滅した」となるのでしょうか。

確かに徳吉の趣味は褒められたものではなく、寧ろ批判されるもの(知り合いに似せて了解も得ずラブドールを作るのはやり過ぎ……)ですが、倫理的に難はあれど、法を犯したわけではなく、ロイドの襲撃さえなければ追い詰められることも無かったのではと思うと、やはり自滅という言葉が最適なのかもしれません。
ここらも含めて、悲しい男のサガですねぇ……。
3話の裏のテーマは「趣味嗜好は適切な範囲内で、ね!!」と言えそうか。

一方で本作に共通する謎についても触れられていました。
ロイドが刑事を辞める発端となった事件が存在する様子。
これがマーニーの母と関係がありそうなのは語るまでもありませんね。
しかも、ロイドとマーニーは何処か余所余所しい関係なのも気にかかります。
本当の親娘では無さそう。
話数を経るごとに着実に伏線らしきものが張られているのも注目です!!

一見、明るく見えるマーニーの物語。
その実、裏には毒が満ちている……流石、木々津克久先生ですね。

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第2話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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「ヴァンパイア・アナライズ (チャンピオンRED 7月号掲載)」(木々津克久著、秋田書店刊)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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