ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
戦国の世は終わり、平和が訪れたかのようにみえた江戸時代初頭、徳川の治世。その下では大名の御家取り潰しが相次ぎ、仕事も家もなくし生活に困った浪人たちの間で“狂言切腹”が流行していた。それは裕福な大名屋敷に押し掛け、庭先で切腹させてほしいと願い出ると、面倒を避けたい屋敷側から職や金銭がもらえるという都合のいいゆすりだった。そんなある日、名門・井伊家の門前に一人の侍が、切腹を願い出た。名は津雲半四郎(市川海老蔵)。家老・斎藤勘解由(役所広司)は、数ヶ月前にも同じように訪ねてきた若浪人・千々岩求女(瑛太)の、狂言切腹の顛末を語り始める。武士の命である刀を売り、竹光に変え、恥も外聞もなく切腹を願い出た若浪人の無様な最期を……。そして半四郎は、驚くべき真実を語り出すのだった……。
(goo映画公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
井伊家の門を1人の浪人が叩いた。
浪人の名は元福島家家臣・津雲半四郎。
半四郎は「井伊家の庭先にて切腹させて欲しい」と申し出る。
これに応対するは井伊家家老・斎藤勘解由。
勘解由は半四郎に、同じように切腹を申し出た若侍の顛末について語り出す。
その若侍の名は千々岩求女。
福島家の旧臣を名乗った千々岩は庭先を借り切腹したいと希望した。
これ受けた勘解由は他の井伊家家臣と相談。
其処で「狂言切腹ではないか」との主張が家臣たちから為される。
最近、巷では「切腹の為に庭先を借りたいと申し出ることで、迷惑を避けたい大名家側から金銭を受け取る狂言」が流行っていたのだ。
一種の強請りである。
これに屈してはならぬと衆議が一致。
結果、千々岩の要望通り切腹を叶えてやるべきと結論が出る。
その頃、この結論を知らぬ千々岩は出された菓子を目の前に無邪気に喜んでいた。
だが、結果を知らされ狼狽してしまう。
やはり、千々岩も狂言切腹だったのだ。
必死に「一度、家の者に会ってから……」と訴える千々岩。
しかし、井伊家の者は彼を逃がさない。
さらに、竹光だった千々岩の差料で切腹を迫る。
情けを求める千々岩だが、周囲の者はこれを許さない。
介錯人まで用意され、問答無用で自決を迫る。
逃げ切れぬと察した千々岩は武士の誇りにより切腹を敢行。
切れぬ竹光で腹を裂く。
それをせせら笑う井伊家の家臣団。
介錯人も傍観するのみで、動こうとしない。
痛みに悶絶する千々岩は、その場でのた打ち回る。
その背に浴びせられる罵声と怒号。
暫くしただろうか、流石に居た堪れなくなったのか勘解由の指図で介錯人が動いた。
こうして、ようやく千々岩は苦しみから解放されたのだった。
語り終えた勘解由は「これでも切腹する気か」と半四郎を問い質す。
だが、半四郎に怯えの色は見えない。
それどころか、あくまで切腹に協力するよう依頼する。
中庭に場を設け、井伊家家臣団の見守る中に座り込んだ半四郎。
もはや、引き返すことなど出来はしない。
此処で半四郎は自身の知るある人物について物語を始める。
その人物とは千々岩であった。
半四郎と千々岩は同じ福島家の旧臣。
それどころか、2人は半四郎の娘を通じた義理の親子であった。
福島家在りし頃、幕府の動向に気を配っていた千々岩の実父と半四郎は親交を結んでいた。
だが、城を無断改修したとの罪で御家が断絶となり、家臣団は四方に散った。
この際、千々岩は御家に殉じ死亡。
半四郎は千々岩の遺児・求女と自身の娘を連れ流浪を始めた。
江戸へと出て来た日、半四郎は幼い求女に武門の誇りを語って聞かせ、倣うべき武門の代表として井伊家の門を見せたものであった。
半四郎には夢があった。
それは――――いつか再仕官すること。
半四郎はそれだけを胸に、武士の誇りである差料を大切に保管していた。
やがて、時が過ぎ求女と半四郎の娘は互いに想いを寄せ合い夫婦となった。
半四郎にとって、求女は息子も同然。
それが義理とはいえ本当の息子になるのだ。
半四郎は大いに喜んだ。
やがて、求女夫婦の間には子供も生まれ、仕官こそ叶わなかったがそれなりにやっていた。
ところが、求女の妻子が病になってしまった。
求女は薬を求めたいが金がない。
差料も既に金に換え、竹光である。
舅の半四郎に金の無心をするも半四郎自身も金に困っている始末。
困っていたところ、求女は幼い日の井伊家の門を思い出した。
武門の誇りと憧れを教えてくれたあそこならば……狂言切腹を思いついた求女は井伊家の門を叩くことに。
だが、これが求女の命を奪う結果になるとは、そのときの求女も誰も知らなかった。
その日の夜、求女は血塗れのそれは凄惨な姿の遺体となって戻って来た。
その懐には井伊家で出された菓子が収められていた。
おそらく、妻子への土産としようとしたものだろう。
翌日、求女の妻子……つまり、半四郎の娘と孫は共に自死した。
半四郎は慟哭した。
自分がどうしても許せなかった。
彼には求女には言わなかったが、1つだけ資金を作る方法があったのだ。
それは彼自身が武士として拠所としていた差料を、求女のように手放すこと。
だが、半四郎にはどうしてもそれが出来なかった。
ゆえに、求女たち一家は死んでしまった。
そこまでして、家族と引き換えにしてまで守らねばならぬ武士とは、武士道とは一体何なのであろうか?
半四郎の告白を聞いた勘解由は愕然としていた。
そして、ふと気付いた。
あの日、求女を苦しめ罵った介錯人ら3名の若い家臣が、今日に限って誰1人出仕していないのだ。
そんな勘解由の前で、半四郎は懐から切り取った髷を3名分取り出し、それぞれの名前を読み上げる。
まさか、3名を遺恨から手にかけたのか?
狼狽した勘解由は居並ぶ家臣に半四郎を斬るよう命令する。
この行為に笑い出す半四郎。
半四郎たった1人によってたかって切り捨てようとする武士。
これが武士道の為すべき事だろうか。
これが武門の意地と誇りと謳われた井伊家の行いだろうか。
襲い来る凶刃、そのすべてをかわし逆に相手を倒しつつ勘解由へと迫る半四郎。
勘解由は家臣へと檄を飛ばし、半四郎を討つよう申し伝えると自身は奥へとさがってしまう。
時が過ぎた。
流石に半四郎も討ち取られたであろう―――そう思った勘解由が戻ってみると。
其処には未だ健在な半四郎の姿があった。
井伊家が誇る精鋭は悉く半四郎に退けられていたのだ。
またも驚く勘解由に半四郎が迫る。
座敷を抜け、奥へと進む半四郎の目に井伊家の象徴たる鎧が止まる。
捕まえた家臣をそちらへと放り投げる半四郎。
狙いは違わず頭から家臣が突っ込み鎧は崩れ落ちた。
これを見た半四郎は泣き笑いを浮かべる。
「武士とは何だ?武士道はそんなに大事か?」
急に無抵抗になった半四郎。
だが、井伊家の家臣団は容赦しない。
これまでの復讐とばかりに、半四郎を切り刻んでいく。
こうして、求女に続き半四郎もまた命を落とした。
後に分かることだが、出仕しなかった若侍たちは髷を切られた為に家に籠っていただけであった。
数日後、井伊家の殿様が藩邸を訪れた。
もちろん、求女に続く半四郎の事件は伝えられていない。
恭しく迎える勘解由、殿様は家宝の鎧を見ると大いに喜んだ。
綺麗に手入れがされていたからだ。
「武門の誇りとして手入れは欠かさぬようにしております」勘解由は応える。
だが、事実は異なる。
半四郎により崩された鎧をそのまま飾り直すことが出来なかったからに過ぎない。
しかし、何も知らぬ殿様は上機嫌で勘解由を「武士の鑑」と褒め称えた―――エンド。
<感想>
映画原作は滝口康彦先生『異聞浪人記』(講談社刊『一命』収録)。
過去には「切腹」のタイトルで映画化もされています。
本当の武士道の在り様を描いた作品ですね。
江戸初期にして既に形骸化していた武士道の在り様を“一命を以て”痛烈に批判する半四郎が悲しくもあり、痛快です。
自身が武士でありながら、その武士の非情さを身を以て知った半四郎だからこそのこの結末。
空しくもありますが、何処か強烈に心に迫るモノがありました。
是非、視て欲しい作品!!
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初めてコメントさせていただきます。
この『一命』ですが、たぶん『切腹』という題名でまだ白黒時代の古い映画のリメイクだと思うんですが…私は『切腹』を見たんですが、凄くインパクトのある心に色んな意味で残る作品でした。
もし、機会がありましたら『切腹』もご覧になられてはいかがでしょうか。
オススメです!
こちらこそ初めまして!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
ご指摘の通り『一命』は『切腹』と原作が同じです。
原作は滝口康彦先生『一命』に収録された『異聞浪人記』となっています。
恥ずかしながら『切腹』は未視聴でして、調べてみたところかなり迫力のある作品の様子。
両者を比較するのも面白いかもしれません。
DVDも出ているようなので、レンタルショップで探してみようと思います。
オススメ頂きありがとうございます(^O^)/!!