ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
〈ハヤカワ・ミステリワールド〉傑作保証付き☆新時代の異色作家短篇集「究極の謎=リドルが、貴方に新しいミステリ=謎の扉を開く――」王女サロメが、FBI女性捜査官が、平凡なサラリーマンが、ドッペルゲンガーを見た男が出会った、恐るべき謎!
ミステリ(謎)に必ずしも答えがあるとは限らない。芥川龍之介「藪の中」のように、謎(リドル)があり、結末は読者の想像に任せる物語をリドル・ストーリーという。本書はそんな脳を刺激し興奮の極致へ誘うリドル・ストーリーばかりを集めた世界でも類を見ない短篇集だ。王女サロメと彼女を巡る人々の選択や、連続殺人鬼が出す謎々、サラリーマンが出会う不条理等奇妙な味の謎(リドル)をご堪能あれ
(早川書房公式HPより)
<感想>
『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル)』は、ストックトン『女か虎か』や芥川龍之介『藪の中』のように結末を読者の想像に委ねるリドル・ストーリーを集めた短編集です。
1つのテーマに特化した短編集ということで、リドル・ストーリー好きには堪らないでしょう。
特に冒頭作『異版 女か虎』が目を惹きます。
『女か虎か』をさらに発展させた本作は必見です。
4者4様の分岐点はそれだけで読者に多くの可能性を感じさせます。
ちなみに『女か虎か』と言えば、管理人が思い出すのは、東野圭吾先生『虎も女も』。
『あの頃の誰か』収録です、こちらの存在もお忘れなく。
・『あの頃の誰か』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
ヘロデ王は娘であり姪であるサロメに執着していた。
そんなサロメに愛人が出来た。
当然、王は愛人を憎みその排除を目論んだ。
王はサロメの愛人を捕えると処刑方法として「女か虎」にかけた。
「女か虎」は「事前に女と虎が入った2つの扉を用意する。囚人にはどちらにどちらが入っているか知らされてはいない。その上で、どちらかを選らばせる。選んだものが虎ならば食い殺される。女ならば命が助かり、相手と結婚する」という方法である。
サロメは愛人を救い、また自身が彼と結ばれるべく「女」役を買って出ようとする。
だが、ヘロデ王がそれを許す筈もない。
サロメは一計を案じることに。
自身と体格のよく似た娘を用意し、娘が「女」役をこなすとヘロデ王に信じ込ませ、実際には娘と「女」役を入替ることにしたのだ。
娘にはサロメの身代わりを務めるよう指示し、同時に愛人に対しどちらの扉にサロメが入っているか教える役割も担わせた。
だが、サロメは知らなかった。
その代役の娘もまた愛人と男女関係にあったことに。
さらに、自身に良縁が持ち上がる。
揺らぐ、サロメ。
一方、サロメの愛人をどうしても処刑したいヘロデ王。
こちらも一計を案じる。
2つの扉の中身を両方とも「虎」にしてしまうことで必殺の罠に変えようとの狙いである。
だが、「女」と「虎」をこっそり入れ替えることは出来ない。
そこで、「女」が入った扉の中に「虎」を追加する方法を採用する。
つまり、「女」は「虎」に食い殺されてしまうことになる。
こうして、事態が複雑化していく中、遂に処刑の日が訪れた。
愛人は既にサロメから入れ替わりとそれに続く、身代わりの娘の合図も知らされていた。
だが、愛人は悩んでいる。
果たして、サロメは本当に入替っているのだろうか。
また、入替っていたとして2股をかけていた相手である身代わりの女性がサロメの指示に従い正しい答えを教えるものだろうか?
サロメもまた悩んでいた。
良縁は惜しい。
本当に入替りを行ってまで、愛人を救うべきだろうか?
身代わりを務める女性も悩んでいた。
2股をかけた相手の男を救うべきだろうか?
ヘロデ王も悩んでいた。
今朝になって、サロメの計画が判明したのだ。
もしも、当初の予定通り虎を使えばサロメが死んでしまう。
だが、使わなければサロメは愛人と逃げてしまうだろう。
どのみち、サロメを失うことになる。
関係した皆が皆、悩みを抱える中、処刑の時刻のみが近付いて行く。
果たして、どのような結末が彼らを待つのであろうか―――エンド。
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