ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
2012年7月18日には「asahi.com」さんにて「シュールで不思議な短編集」として紹介もされました。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、2012年9月6日に掲載された44話「なのるなもない」のあらすじをまとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年9月6日「週刊少年チャンピオン」掲載 44話「なのるなもない」
その日、同級生のイジメっ子・翔栄にいじめられた小学生の鈴鹿光生少年。
トボトボと帰宅途中に立ち寄った公園で、茂みに隠れる不審な女子中学生を発見する。
彼女の行動に興味を持った光生は声をかけてしまう。
彼女は自身を「名乗るほどでもない」と名乗り、「追っ手から逃げている」と告げる。
年頃の少年にとっては魅力的なその言葉に光生はメロメロ。
自身がいじめられていることを話してしまう。
これを聞いた彼女は光生に檄を飛ばし、鍛えてやると相撲をとることに。
相手は女性とはいえ、中3と小学生である。
そこには大きな差が広がっている。
光生はコテンパンにのされることに。
そんな光生に少女は「諦めないことが大事だ!!」と教えるのだった……。
この教えを受けた光生は早速、翔栄に挑戦。
一度は追い込むものの、返り討ちに遭いボコボコにされてしまう。
再度、公園を訪ねた光生は少女に「話が違う」と詰め寄る。
そんな光生を諭し、もう1度相撲を取るよう指示する少女。
「そんなのだからお前は負けるんだ!!お前はクズだ、それを認めろ!!」
罵りながら光生を投げ飛ばす少女。
その顔には何故か嗜虐の喜びが溢れている。
カッとなった光生は怒りのままに少女にぶつかり、押し倒しかけて……。
少女に背中からエルボードロップを喰らい、倒れ伏してしまう。
「分かったか、勝てば官軍なんだ。どんな手を使ってもいい、勝て!!」
少女の教えに感銘を受けた光生は、少女を「アネゴ」と呼び慕うように。
翌日、少女の教えを忠実に実行に移した光生は翔栄を背後からの不意打ちで叩きのめした。
(やったよ、アネゴ。俺、アネゴの教えを守ったよ!!褒めて褒めて!!)
浮かれた光生はアネゴが公園に居なかったことから、彼女の在籍する学校へ。
と、其処で驚きの光景を目にする。
「おい、クズ。荷物を運べよ……まったく使えねえなぁ」
「ひゃい……」
複数の男女に取り囲まれ、荷物運びをさせられている女子が居る。
表情は卑屈に周囲のご機嫌を窺い、口には鞄を咥えさせられている。
さらに、浴びせられる罵詈雑言。
にも関わらず、女子は一言も反論するでもなく唯々諾々と従っている。
その女子生徒こそ、アネゴであった。
其処には公園で見せた姿は微塵も無い。
呆気にとられた光生は立ち尽くすのみであった―――エンド。
<感想>
2012年9月6日掲載の44話「なのるなもない」です。
これはまた心を抉る話ですね。
他の漫画だと、この展開になれば光生少年がアネゴを助けに飛び出すか、後日の公園で衝突しつつも和解するパターンも思い浮かびますが「空が灰色だから」の世界ではどうもこのままの予感。
となれば、この出来事が光生少年の心に影を落としたことは想像に難くありません。
まさに、トラウマです。
それにしても、アネゴは何が目的で光生少年に接していたのでしょうか?
自分のようにしない為でしょうか?
いえいえ、あらすじからでは分かりづらいかもしれませんが、アネゴは自分よりも弱者にストレスをぶつけていただけでした。
途中、嗜虐の喜びに顔を歪ませていると書いたように、漫画でも明らかに喜びの表情を浮かべています。
それは光生少年の成長を喜ぶものではなく、もっと後ろ暗い笑いです。
一方、あらすじからではこれまた分かりづらいでしょうが、光生少年もまた素直にアネゴの言葉を信仰しているワケではありませんでした。
彼もまた相撲を通じてアネゴとのスキンシップに性的な喜びを見出していることが作中で描写されています。
互いに欲望を刺激し合っていたワケです。
この歪んだ関係性こそが、「空が灰色だから」なのでしょうね。
これはもう本作を読んで貰うしかない!!
やはり、一味違うのです!!
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月10日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月17日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月24日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月31日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月7日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月14日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月28日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月12日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月2日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月16日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月23日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月30日の「空が灰色だから」43話ネタバレ批評(レビュー)
【関連する記事】
- 『スーサイド・パラベラム』第9話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2016vo..
- 「実は私は」第1話から第160話まで(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオ..
- 「ダジャレ禁止令」(志水アキ画、講談社刊「週刊少年マガジン」掲載)ネタバレ批評(..
- 「実は私は」第160話「藍澤渚と藍澤渚E」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」最終話(第35話)「事件の先に」..
- 「実は私は」第159話「藍澤渚と藍澤渚D」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第107話「いつかの文学全集」(加藤元浩作..
- 「黒霊ホテル殺人事件」(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連..
- 「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チ..
- 「実は私は」第158話「藍澤渚と藍澤渚C」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第34話「真犯人」(作画・星野泰..
- 「実は私は」第157話「藍澤渚と藍澤渚B」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第106話「動く岩」(加藤元浩作、講談社刊..
- 「実は私は」第156話「藍澤渚と藍澤渚A」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第33話「真相」(作画・星野泰視..
- 「実は私は」第155話「藍澤渚と藍澤渚@」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「実は私は」第154話「勘違いしよう!!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 【エピソード最終話】「黒霊ホテル殺人事件」最終話、第6話(「金田一少年の事件簿R..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第32話「二重人格」(作画・星野..
- 「ビーストコンプレックス」最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」(板垣巴留作..
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
確かに、途中までの良い話と後半とのギャップが凄い。
とはいえ、このギャップこそが『空が灰色だから』の持ち味。
読めば読むほど病み付きになる作品です(^O^)/!!