2012年09月12日

『身の上話』(佐藤正午著、光文社刊)

『身の上話』(佐藤正午著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

人生にも必ず岐路はあるのか、ところどころで、判断・選択はできるのか。
それとも、人との出会いが人生を決めるのか。

地方都市で書店に勤める古川ミチルは、月に一回出張でやってくる出版社の販売部員を見送るつもりがちょっとしたことから東京まで一緒に行ってしまった。

彼女は職場の先輩たちに頼まれて購入した宝くじを持っている。
23歳の今まで特筆することのない人生を送ってきた彼女だったが、普通には滅多に起こりえない出来事の渦中へと巻き込まれていった……。

あなたに知っておいてほしいのは、人間にとって秘密を守るのはむずかしいということです。たとえひとりでも、あなたがだれかに当せんしたことを話したのなら、そこから少しずつうわさが広まっていくのは避けられないと考えたほうがよいでしょう。(『【その日】から読む本』第二部・第4章)
不倫相手と逃避行の後、宝くじが高額当選。巻き込まれ、流され続ける女が出合う災厄と恐怖とは。
(光文社公式HPより)


<感想>

「第63回日本推理作家協会賞」の候補となった作品です。

第63回日本推理作家協会賞候補作発表!!

何と言っても最大の謎はミチルの夫を名乗る人物の正体。
そして、ミチルについて語っているその目的に尽きるでしょう。

これがラストにて明かされるとき、読者はあっと驚くと共に、ミチルの夫の愛情に頷かされることとなる。
本当に良く出来ています。
内容自体はそれなりにエグイ筈なのですが、上記の仕掛けがあるので読後の印象はなかなかのもの。
此処もポイントです。

ちなみに、『身の上話』は「書店員ミチルの身の上話」としてドラマ化。
2013年1月8日午後10時55分よりNHK総合にて連続10回の放送予定。

ドラマ版ではミチルを戸田恵梨香さん、幼なじみ・竹井を高良健吾さん、恋人・久太郎を柄本佑さん、不倫相手・豊増を新井浩文さん、夫を名乗る男を大森南朋さんが演じるとのこと。
注目せよ!!

<ネタバレあらすじ>

ミチルの夫を名乗る人物が物語を始める。
内容は、彼の妻・ミチルの数奇な人生について―――。

地方都市の書店に勤務していたミチルには恋人・久太郎が居た。
だが、ミチルは月一回で営業にやって来る出版社の販売部員・豊増に付き合い東京へ駆け落ちしてしまう。

ところが、この直前に同僚らに頼まれ1枚余計に購入していた宝くじが当選。
1等2億円の当選金を手に入れる。
これがきっかけとなり、ミチルの運命は大きく変転していく。

幼馴染・竹井と出会ったミチルは彼と高倉のもとへ。
そこへミチルを追いかけ久太郎が現れる。
久太郎はミチルを連れ戻そうとするが……。

ミチルを取られまいとした高倉により、久太郎はフライパンで殴り殺されてしまう。
竹井は久太郎の死体を遺棄。

ここから竹井が暴走。
宝くじの存在を知る豊増を殺害。
さらに消えた久太郎をネタに宝くじの当選金を奪おうとした立石も殺害。
遂には高倉さえも殺害してしまう。

この事実に気付いたミチルは慄然。
恐怖のあまり、竹井のもとから逃げ出す。

そうして、彷徨っているときにバスの運転手である香月に出会った。
誰かに救いを求めていたミチルは香月にすべてを打ち明ける。
ある秘密を持っていた香月は傷付いたミチルを捨て置けずこれを保護する。
後に香月とミチルは結婚することに。
香月は前妻に逃げられており、ミチルは後妻であった。

つまり、ミチルの夫を名乗る男の正体は香月である。
香月との間に一子を設けたミチル。
暫くは平穏な日々が過ぎた。

だが、そこへ竹井が現れる。
竹井の接近に気付いた香月は彼の呼び出しに応じ、彼と交渉の席を持つ。

竹井の提案は香月を驚かせるものであった。
香月の秘密を黙っている代わりに、ミチルを譲れとのものだったのである。
しかも、香月が自殺することでこれを速やかに行えとの指示付きである。
もちろん、未だ手の付けていない当選金が目当てなのは明らかであった。

香月は前妻に逃げられたことになっていた―――表向きは。
だが、実は前妻は別の男と駆け落ちしようとし、香月に殺害されていたのだ。
これこそが香月の秘密であった。

香月がとることが出来る道は2つ。
1つ、秘密を暴露される前に、竹井を口封じするべく抹殺すること。
2つ、竹井の要求に応じミチルの前から姿を消し、自殺すること。

だが、香月は第3の道を選ぶ。
自身と竹井の罪を告発することで、ミチルを守ることにしたのだ。
そう、香月が語って聞かせていた相手は弁護士であった。
香月は自身が逮捕された後、残されたミチルの弁護を依頼していたのである―――エンド。

「身の上話 (光文社文庫)」です!!
身の上話 (光文社文庫)



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posted by 俺 at 12:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ネタバレ有難うございます。
お陰でスッキリしました。
ミチルって、運がいいとは言えないけど、周囲に好かれる(放っとけない)キャラなんですね。
何だか羨ましい…
Posted by ちかたん at 2013年02月20日 02:21
Re:ちかたんさん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

こちらこそ、コメントありがとうございます。
励みになります!!

それにしても、ミチルは引く手数多ですよね。
もともと、宝くじを当てたりと凄い人。
ただ、その機会を活かすことが出来ない。

だからこそ、人間らしく足掻くこととなるのですが、そんなミチルを見守ることも本作の魅力の1つなのかもしれませんね(^O^)/!!
Posted by 俺 at 2013年02月22日 01:45
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