ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、2012年9月6日に掲載された45話「初めましてさようなら」のあらすじをまとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年9月13日「週刊少年チャンピオン」掲載 45話「初めましてさようなら」
今回の舞台は幽霊が出ると噂の中学校。
廊下では、あるグループが「何でも屋上で女子の泣き声が聞こえるらしい」とヒソヒソ語り合っている。
そんなグループに1人だけ夏服の少女が混ざっている。
少女は真剣な表情で周囲の話に耳を傾けていた……。
深夜の屋上へ通じる扉の前、其処にあの夏服の少女の姿があった。
少女は息を呑むと、屋上へと足を踏み出す。
ぎぃぃぃぃぃ……鈍い音と共に開く扉。
其処には先客の少女が……。
「「ひっ!!お化け〜〜〜」」
2つの叫び声が上がる。
……ん、2つ?
互いに顔を見合わせる少女たち。
「ああ、お化けじゃないのか……」
ほっと胸を撫で下ろし彼女たちは自己紹介を交わす。
「私、磯部」夏服の少女が名乗る。
「私は宮本」先客の少女がそれに応える。
磯辺は自身が此処に来た理由―――お化けを捜しに来たことを打ち明けると、宮本が此処に居る理由を尋ねる。
宮本が明かした理由とは……自殺未遂であった。
宮本は両親が離婚することとなり、どちらかに引き取られることとなった。
だが、どちらに引き取られても環境の変化は避け得ない。
シャイな宮本は新しい環境で友達が出来ないことを恐れていた。
そこで睡眠薬を多量に摂取し自殺いようとしたらしい。
だが、こうして目覚めている以上、失敗したのだろうと語る。
失敗したことを残念がる宮本を見た磯辺は激怒する。
「そんなことで死ぬな〜〜〜絶対に後悔するぞ!!現に私がこうして後悔してるんだから!!」
えっ……?と止まる宮本。
「現に……」ということは……。
宮本へと手を差し出すものの、通り過ぎる磯辺。
実は磯辺こそ、噂の幽霊その人であった。
磯辺も宮本と同様に引越しが決まり、環境の激変を恐れ自殺してしまったのだ。
だが、磯辺はその選択を後悔していると言う。
磯辺は寂しがり屋。
だからこそ、1人になることが耐えられず自殺してしまった。
しかし、幽霊になってしまったことで誰にも気付いて貰えない。
真の孤独を味わうことに。
しかも、磯辺は怖がり。
幽霊となり、学校から出られなくなった磯辺は毎夜、暗闇の学校で恐怖と戦うこととなった。
屋上に来たのも仲間を探してのことらしい。
さらに、家族は磯辺の死を惜しみ、毎月手を合わせに来てくれるが、そんな家族にメッセージを伝えることも出来ない。
「こんな筈じゃなかった!!」
磯辺は「だからこそ宮本には後悔して欲しくない、生きろ!!」と励ます。
これを受けた宮本は自殺を取り止め生きることに。
「フレーフレー宮本!!」
「ありがとう、磯辺!!」
涙ながらの磯辺の声援を背に、屋上を後にしようとする宮本。
だが、その足が扉の先で止まる。
「もう、遅かったみたい……」
そう呟く宮本。
その足元には宮本の遺体が転がっていた。
宮本も磯辺のように幽霊になっていたのだ。
だからこそ、磯辺が見えたのである。
唖然とする磯辺に宮本は……。
「でも良かったよ。これから2人一緒だね」
吹っ切るように告げる。
「ば、ばかやろ〜〜〜」
涙ながらに叫ぶ磯辺―――エンド。
<感想>
2012年9月13日掲載の45話「初めましてさようなら」です。
「後悔先に立たず」がテーマですね。
これに幽霊を加えたのが「空が灰色だから」らしいと言うべきか。
それにしても、磯辺が宮本を説得し立ち直ったと思ったら、既に手遅れとは……。
確かに、宮本の家族たちにとっては悲しい結末でしたが、磯辺と宮本本人たちにとっては良かったのか悪かったのか……。
まさに灰色の結末と言えるでしょう。
構成自体もしっかりしていました。
当初、普通の少女2人と思わせておいて。
磯辺が幽霊と判明。
次いで、宮本は生きていると思わせて、実は幽霊との結末。
2段階になってます。
そして、伏線もしっかりしています。
まず、磯辺が1人だけ夏服であることで、幽霊であることを示唆。
次に、その磯辺を目視出来ることで宮本もまた故人であることを示唆。
おかげで結末にもスッキリ納得です。
でもって、何より意外だったのが「チャンピオン」掲載上の構成。
この週では、「空が灰色だから」の後に「名探偵マーニー」が掲載されましたが、両者に意外な共通点が。
両方好きな管理人としてはさらに嬉しいサプライズとなりました。
総評として、なかなかに捻りのある回となりました。
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月10日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月17日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月24日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月31日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月7日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月14日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
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・2012年7月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月12日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月2日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月16日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月23日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月30日の「空が灰色だから」43話ネタバレ批評(レビュー)
・「空が灰色だから」44話「なのるなもない」(2012年9月6日掲載)ネタバレ批評(レビュー)
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