2012年09月14日

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 傘を折る女』第4話、最終話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 傘を折る女』第4話、最終話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

石岡が耳にしたラジオの奇妙な情報。
雨が降る中、美女がわざわざ傘を折っていたと言う。
これを聞いた御手洗は「何処かで殺人事件が起こったに違いない」と推理する。

翌日、御手洗の推理は的中。
殺人事件の報が伝えられる。
ところが、御手洗の推理を上回る点が1つあった
死体は2つあったのだ。
死体は部屋の住人・宣子と、謎の来訪者・詩子。
詩子が犯人かと思われたが……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

宣子の部屋に何故、2つの死体が並ぶことになったのか?
石岡たちが戸惑いを隠せない中、御手洗は合理的な説明が可能だと主張する。
遂に御手洗が推理を開陳する……。

御手洗の推理は次のようなものであった。
まず、宣子殺害犯と詩子は別人である。
つまり、詩子以外に第3の人物が事件に絡んでいるのだ。

では何故、詩子が事件に絡んで来たのか?
詩子は傘による通り魔の被害に遭っていた。
そして、宣子殺害の真犯人は傘を折り手に握っていた。

ここで、悲劇的な誤解が起こった。
詩子は宣子殺害犯を通り魔と勘違いし、復讐すべく後ろから襲撃したのだ。
ワンピースに泥がついていたことからも激しい応酬があったことは容易に予測できる。
結果、宣子殺害犯が勝利したのだろう。
おそらく、詩子は気絶したに違いない。
そこで、ワンピースが汚れてしまった宣子殺害犯は詩子の服と交換し帰路についた。

一方、残された詩子は意識を回復。
服を勝手に交換されたことに腹を立て、折れた傘に書かれた住所を手掛かりとし、宣子宅を訪ねた。
ところが、宣子はハムスターを飼っていた。
このハムスターに詩子は噛まれたのだ。
詩子はハムスターアレルギー。
あえなく、落命してしまう。

これこそが事件の真相であった。
御手洗は宣子殺害犯のヒントとして、彼女が詩子の服を着て帰宅したであろうこと。
宣子と個人的な関わりがあること。
雨に濡れている以上、風邪を引いている可能性が高いことを指南して去る。

一方、宣子殺害犯である雪子は無事、帰宅した安心感と疲労感から昏倒してしまった。
そして、本人は気付いていないが風邪も引いていたのである。

夢現の雪子は宣子殺害した経緯を振り返る。

雪子は憤りを隠せなかった。
事の発端は、あるバスジャック事件にあった。
少年がナイフを手にバスをジャックしたこの事件、最終的に犯人の少年は強行突入により逮捕されたが、人質となった乗客に1人の死亡者が出ていた。
この死亡者こそが雪子の母であった。
雪子の母が殺害されたのには理由があった。
とある女の犠牲になったのである。

その女の名は宣子。
宣子もまたバスジャック事件の被害者の1人である。
ただし、同時に加害者でもあった。
宣子はバスジャック犯の少年に、外のトイレへ行かせてくれと要求。
受け容れられないと悟るや、譲歩を引き出せるよう必死に懇願したのだ。
根負けした少年は近くに居た雪子の母を条件に出した。
もしも、宣子がそのまま逃げ出せば雪子の母を殺すと脅したのだ。
これを了承した宣子だったが、外に出るや帰って来ることは無かった。
結果、雪子の母は見せしめもかねて殺害されたのである。

この事実を知った雪子は怒り狂った末に一言文句をつけてやらねば気が済まないと決心した。
早速、宣子を訪ねた雪子。

しかし、雪子はまだ宣子を知らなかったのだ。
母の件に謝罪を要求する雪子だが、宣子はしれっとシラを切る。
あくまで知らぬ存ぜぬを決め込む宣子。
尚更、怒りを覚えた雪子は宣子を責める。
そのうちに、宣子が逆上。
あの場の恐怖を教えてやると包丁を持ち出し、振り回し始めた。
明らかに宣子は普通の状態ではない。
このままでは殺されると思った雪子は、怒りもあり、逆に宣子を殺してしまう。

ふと気づけば、血塗れの雪子。
慌てて洗濯機で服を洗ったのだ。
其処へ雨が降り始めた。
これならば多少、濡れていても構わないとそのまま逃亡することに。

しかし、傘をささずに歩くと怪しまれかねない。
宣子宅から傘を失敬したのだが……この傘が派手過ぎた。
人目を引くことを恐れた雪子。
だが、傘は手放せない。
そこで、折れた傘ならばささずとも、持っているだけでも大丈夫ではないかと考えるように。
この為に車に傘を轢かせていたのである。

だが、途中で詩子に襲われてしまった。
何とか撃退したが、ワンピースが汚れてしまった。
其処で、詩子と服を交換することに。

そうして、やっと自宅まで帰って来たのだが……極度のストレスと雨に打たれたことから体調を崩してしまう。
さらに、翌朝になって、宣子の部屋であの襲撃者の死体が見つかったと知り倒れてしまうのだった。

次に雪子が意識の混濁から覚めたとき、其処は警察病院であった。
御手洗の助言に基づいた刑事により、雪子は身柄を拘束されたのである。
事件発生から僅か3日後、スピード解決であった。

事情をすべて察している様子の刑事。
雪子は「同じ立場ならばどうしますか?」と問いかける。
「そりゃ、同じことをしたでしょうね」と刑事。

「ただ、殺しはしません。2、3発殴ってやります」
殴るポーズをとり、退室する刑事。

その後ろ姿に雪子は「男の人はいいわね」と呟く。
女性同士ならばやらなければやられるのだ。
加減など出来ないのである―――エンド。

<感想>

いよいよ『傘を折る女』も全4回中の第4回、つまり最終回でした。
堂々完結です。

原作だと雪子の犯行は倒叙形式で描かれましたが、漫画版では動機も含め最後まで伏せられていましたね。
これにより「雪子は何処へ消えたのかも含めて、如何に不可解状況が形成されたか」がテーマだった原作に比べ「不可解状況の形成」のみにテーマが絞られました。
その代わりに漫画版では「詩子と雪子」のミスリードも加えられ、2話まででは「宣子殺害犯」も第3の人物に殺害されたかのような偽装が施されていた点が印象的でした。

もともと「活字で伝える小説」と「ビジュアルで伝える漫画」とでは表現の幅が異なると思うので、テーマ面を絞り込みつつ、ミスリードを投入したこの方法は正しいと思われます。
好印象でした。

ただ1点惜しむらくは、原作の場合は『UFO大通り』とセットになっており、あるリンクが密かに配されている点も魅力だっただけに其処が惜しいかな。
とはいえ、これは再現不可能な面もあり致し方がないところ。
漫画版は十分にファンの要望に応えたと思います。
次のシリーズにも期待出来そうです、楽しみ!!

そんな次のシリーズは2013年1月予定とのこと、どの作品が漫画化されるのか期待!!

ちなみに、原作『UFO大通り』ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
比較してみるのも面白いかも。

『UFO大通り』(島田荘司著、講談社刊 収録作『UFO大通り』『傘を折る女』)ネタバレ書評(レビュー)

『傘を折る女』(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)第1話ネタバレ批評(レビュー)

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 傘を折る女』第2話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 傘を折る女』第3話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『糸ノコとジグザグ』に続く御手洗潔伝説、再び!!『傘を折る女』(講談社刊『UFO大通り』収録)が『週刊モーニング』誌上でコミカライズ決定!!

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『UFO大通り』(島田荘司著、講談社刊 収録作『UFO大通り』『傘を折る女』)ネタバレ書評(レビュー)

『傘を折る女』収録「UFO大通り (講談社文庫)」です!!
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