2012年10月01日

松本清張没後20年特別企画「危険な斜面 偶然再会した元恋人によって、眠っていた“出世欲”に目覚めてしまった男…しかし芽生えたのは殺意だった!普通の男から悪魔へ…このまま男は昇りつめるか転落するか?」(9月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)

松本清張没後20年特別企画「危険な斜面 偶然再会した元恋人によって、眠っていた“出世欲”に目覚めてしまった男…しかし芽生えたのは殺意だった!普通の男から悪魔へ…このまま男は昇りつめるか転落するか?」(9月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)です!!

<あらすじ>

秋場文作(渡部篤郎)は西島電機の一社員、郊外の工場勤務で、出世とはほど遠い生活を送っていた。新年のある日、「西島電機HD新春全体会議」に出席した秋場は、会社のトップ西島会長(中村敦夫)に出会う。西島会長はグループ全ての実権を握っているワンマン会長だ。その側に寄り添う美しい女性…秘書室長であり会長の愛人でもある野関利江(長谷川京子)に秋場は気付く。視線が絡み合う二人…秋場と利江はかつての恋人同士。11年ぶりの再会だった…。
秋場には妻子があったが、利江との再会後二人の関係は一瞬で燃え上がる。時を経てさらに美しさを増した利江にひかれる一方、秋場の心にはこれまで抑えてきた出世欲が湧きあがっていた。“利江を利用すれば、会長に近付けるかもしれない”と…。そして利江も“秋場にはもっと力がある”と信じていた。利江からの情報で秋場は徐々に会長の信頼を得ていく。そんな秋場を見て喜ぶ利江。そして利江は次第に秋場の愛を独り占めしたくなっていく…。「妊娠している、一緒になってほしい」と秋場に告げる利江。その瞬間出世欲にかられた秋場の心中に殺意が芽生える。
利江には秋場と出会う前にもう一人恋人がいた。飲料会社のサービススタッフ沼田仁一(溝端淳平)だ。西島会長と付き合いながら、若い沼田とも付き合っていた利江だが、秋場と再会してからは沼田とは距離を置いていた。そんなある日、利江が突然失踪する。そして数ヶ月後、京都市郊外の山中から白骨化した利江の遺体が見つかる。捜査が難航する中、独自に犯人を突き止めようとする男がいた。沼田だ。彼はある一つの手掛かりを頼りに、利江を殺害した犯人を追いつめる…。
(公式HPより)


では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……

利江の協力で西島会長の知遇を得た秋場はとんとん拍子に出世して行く。
しかし、その分だけ利江は秋場へと支配を強める。
逆に秋場は利江との距離を置くように。
やがて、利江は妊娠したと秋場に打ち明け結婚を迫る。
この事態に秋場は殺意を固めるのであった。

一方、珈琲サービス会社の社員・沼田は利江から捨てられようとしていた。
沼田は利江に異様な執着を見せ、利江の相手が「吉野」という既婚者であることを突き止める。
だが、利江は忽然と姿を消してしまう。

その頃、利江は秋場から再婚を約束され幸せの絶頂にあった。
西島とも別れ会社を退職すると、秋場に言われた通り身を隠していた……。

やがて、夏も終わった頃に利江の遺体が発見される。
この捜査の担当に伊佐山刑事が携わることに。

利江の遺体が紫のオーバーコートを着用していたこと。
2月9日に小物を購入した事実(品物と領収書)が確認できたこと。
この2点から、伊佐山は2月10日に利江が殺害されたと判断する。

一方、利江に執着していた沼田はその死を知り激怒。
殺害犯を捕まえると息巻く。
「吉野」こそが犯人であると考えた沼田はこれが婿入りした秋場の旧姓であることを突き止める。

秋場が犯人に違いないと確信した沼田。
だが、秋場には2月1日から15日まで西島会長のお供でドイツとオランダを巡っていたアリバイがあった。

同じ頃、伊佐山は利江の周囲を探り西島会長に面会していた。
西島は自身が心臓を患っていること、この事実を利江しか知らないことを洩らす。

さらに捜査を続けた伊佐山は、沼田に辿り着いた。
取り調べを受けた沼田は「秋場が犯人だ」と主張する。
取り合わなかった伊佐山だが、何故か妙に気になるのだった……。

どうしても沼田の言葉が気にかかった伊佐山は秋場に接触する。
「会長さんは心臓がお悪いそうですな」
「ええ、あれだけ強心臓の方が……」
利江しか知らない情報を何故、秋場が知っているのか?
実は秋場は利江との逢瀬の最中に、このことを聞いていた。
この一言が伊佐山に秋場への疑念を植え付けることに。

秋場に対し疑念を抱いた伊佐山は沼田と協同歩調をとる。
沼田は利江が京都での4月の桜を楽しみにしていたことから犯行は2月ではなく4月である。
したがって、秋場にアリバイはないと推理するが……。

沼田は、秋場が4月3日から6日まで福岡に出張していた事実を突き止めた。
京都における桜の開花時期と重なる5、6日に出張先から秋場が京都へ向かった可能性に思い至った沼田。
秋場に桜の花びらを模した切り紙を送りつけ、動揺を誘う。
次いで、秋場が殺害当日に利用したと思われる航空機の時刻表を送りつけるのであった。

その頃、伊佐山は4月に利江が生きていた痕跡を求め、京都市内を探索。
「いもぼう」の名店で顧客名簿の中に「吉野」の名前を見つける。

沼田の推理は核心に迫りつつあった。
紫のオーバーコートは4月に殺害後、殺害時期を誤魔化す為に着せられたに違いない。
今度は同種の紫のオーバーコートの布片を送りつけることに。

4月に女性歌手の交際発覚報道が為されたことに着目した沼田。
この報道は秋場が京都入りした日と同日であった。
奇しくも秋場の移動経路となった空港から報道がされていたが……。

秋場はどんどん追い詰められて行く。
遂に沼田はトドメとばかりに脅迫状を送りつける。

秋場が行ったことすべてを知っている―――そう始まる沼田の手紙。
証拠がないと思うだろうが、女性歌手の交際発覚報道の余波であの日に空港に居た秋場の姿が撮影されている。
写真データの入ったSDメモリとカメラを売りたい。

この取引に秋場は乗った。
500万円を沼田に渡した秋場、その手に金と引き換えにSDメモリが……。
だが、カメラで確認すると「データはありません」と画面に表示される。

驚愕する秋場の前に伊佐山が現れた。
すべては沼田と伊佐山が仕掛けた罠であった。
そして、それは秋場が斜面から転び落ちることを意味していた―――エンド。

<感想>

原作は松本清張著『危険な斜面』(文藝春秋社刊)。
過去記事にてネタバレ書評(レビュー)がありますね。

『危険な斜面』(松本清張著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

男は斜面を駆け上がり、転がり落ちました。
これこそタイトルの由来です。

原作に対しアレンジ加えていましたね。
主に現代調への改変だと思われます。

原作では沼田が秋場を追い詰めましたが、ドラマ版では伊佐山も加わり2人で秋場を追い詰めることに。
管理人的にはどうせ改変するのなら、普通に刑事が主人公で良かったような気もします……。
なにぶん、原作で抱いていた沼田のイメージとドラマ版がかなり違っていました。
特に、沼田が推理を巡らせるシーンが悪だくみしているように見えてしまいました……。
全体的には……原作の方が好みだったかなぁ。

松本清張先生といえば『熱い空気』や『疑惑』、『寒流』もドラマ化が決定しており、こちらも目が離せません。

『寒流』(松本清張著、新潮社刊『黒い画集』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『熱い空気』(松本清張著、文芸春秋社刊『事故―別冊黒い画集1』収録)ネタバレ書評(レビュー)

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「家政婦は見た!」がドラマ化決定、タイトルは原作通り『熱い空気』に!!

松本清張先生『寒流』(新潮社刊『黒い画集』収録)がドラマ化されるとのこと!!

<キャスト>

秋場文作:渡部篤郎
野関利江:長谷川京子
沼田仁一:溝端淳平
伊佐山徳司:赤井英和
西島卓平:中村敦夫 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)


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この記事へのコメント
こんばんは、今さらですがコメントさせていただきます。自分もリアルタイムで見てたのですが現代にするなら関空では無理とか一文あった方が…と思ったり。多分自分が関西在住のせいなんだと思うのですが関空がスルーされてたのがひっかかりました。原作が刊行された時には関空が存在してなかったので仕方ないといえば仕方ないのですが正直関空から京都まで直通で電車あるしと突っ込んでしまいました
ドラマの造りだと利江の「私に酷いことしないでね」は薄々秋場の自分への「愛」がない事、自分が殺されるんじゃないかって思ってたのかなと自分に何かあったら沼田が動くんじゃないかと計算してたんじゃないかなと思いました。
利江が生きてた頃から沼田はストーカーでしたし。
付き合ってた頃から沼田のヤバさは感じてたのではないかなと
そう思うとあのセリフとんでもなく怖いですよね。実際秋場は沼田によって足元掬われましたし
Posted by 花 at 2012年10月03日 23:26
Re:花さん

こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!

ドラマ版『危険な斜面』は全体的に現代調に整えられていましたね。
この点だと特に関空でも良かった気がします。

仰る通り利江が何処まで察していたかは気になりますね。
沼田の行動も利江の計画通りだとすると、利江は死して秋場を手に入れたのかもしれません。
Posted by 俺 at 2012年10月04日 23:55
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