ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
日本のどこかを描いた新しい小説集第二弾
漁師たちが、伝説のマグロと奇妙な遭遇をする『野島沖』。来世をセミとして生きる男が主人公の『来世不動産』。交際相手の女性が出先から纏ってきた匂いをもとに話が転じる『肩先に花の香りを残す人』。江戸の酒問屋に嫁いだ元花魁に駄賃をねだろうとする父に災厄が訪れる『続すみだ川』。戦時中から残る建物を改築した謎のホテルを舞台にした『ダラホテル』。暴力的な恋人から逃れ、姉とともに郷里へと向かう妹の顛末を描く『帰省』。ある日、高校生の集団を突如襲った謎の物体Xが世界を変えてしまう『微塵島にて』。日本をテーマに描いた新しいかたちの小説集の第二弾。
(小学館公式HPより)
<感想>
シチュエーション勝負の短編です。
本作はこの世界観に嵌るか、嵌らないかの2択のみ。
他にはありません。
人を建物と比喩したことがポイントです。
あなたは本作に嵌れるか!?
ちなみに、小学館公式HPのあらすじにオチが書かれているのは問題のような気も……。
<ネタバレあらすじ>
88歳の私が死亡した、大往生である。
医師により死亡宣告が為されたのだから間違いない。
この死亡宣告が蝉の声で聞き取り辛かった。
ともかく、昨今、蝉がうるさい。
と思ったら看護師にピシャリと窓を閉められた。
当の私はゆらゆらと漂っている。
これが、世に言う霊体という奴なのだろうか。
ゆっくりと上昇していく。
それにしても、蝉がうるさい。
そして、あまりに上昇速度がゆっくり過ぎる。
なんだか、酔ってきた。
他のことを考えつつ、ふらふらと過ごしていると、やがて白い世界に辿り着いた。
其処には1軒の建物が。
先客によれば、ここは「来世不動産」。
死者が生まれ変わるべき生き物を決める不動産会社だそうだ。
人間、犬、猫とそれまでの善行ポイントに応じて生まれ変われる生き物を選ぶことが出来るのである。
早速、店の中に入った私は担当者と言葉を交わす。
相手は爽やかな青年であった。
青年は私の生前の行動を細大漏らさずコンピュータに表示する。
東京タワーに上った回数。
蟻を殺した回数。
女の子を助けた回数……などなど。
生きている限り、さまざまなものに影響を与えているのだなぁ……と私は思う。
とりあえず、善行ポイントはそこそこあって「人間」を選ぶことも可能なようだ。
そこへ、青年からオススメ物件を教えられる。
蝉はどうかと言うのだ。
蝉ならばすぐに倍する善行ポイントが貯まるらしい。
しかも、寿命が短いので転生するのにも向いているのだそうだ。
そこで早速、蝉を選択することにした。
蝉として生を受けた私。
7年間、地中で生活を余儀なくされるが、蝉なので特に不満は感じない。
そして、ようやく空へと飛び立った。
この解放感を伝えたい。
蝉として鳴き声を上げる。
周囲の蝉たちも同調した。
物凄い音が鳴って、看護師がピシャリと窓を閉めた―――エンド。
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こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
「世にも奇妙な物語」でドラマ化されるんですね。
割とシュール系に属しそうな作品なので、ドラマ化も気になります!!
原作者であるバカリズムさんも出演するとのこと。
不動産屋の青年役でしょうか。
となると、主人公との掛け合いがキモになりそうです。