ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
まだ生きている誰かのために。それが、不器用な女刑事の決めたルール。
彼女が捜査一課に戻らぬ理由。それは人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていることが喜びだから――。練馬署強行犯係・魚住久江。本部復帰を断り続け、所轄を渡って四十二歳。子なし、バツなし、いまどき肩身の狭い喫煙者……。タフだけれど生き方下手な女刑事が駆ける新シリーズ!
(新潮社公式HPより)
<感想>
新主人公・魚住久江による短編集です。
久江は「生きている人を助けたい」との想いから、捜査一課ではなく強行班係を選んだとの設定。
それだけに関わる事件に対しては、久江の主義を貫くケースが多い。
本作『ドルチェ』に収録されている作品は『小説新潮』に掲載された次の6作品。
・袋の金魚
・ドルチェ
・バスストップ
・誰かのために
・ブルードパラサイト
・愛したのが百年目
このうち、印象的だった『袋の金魚』と『ドルチェ』の2短編のみネタバレ書評(レビュー)しています。
これにて興味を持たれた方は是非、原作をどうぞ!!
それと、本作は2012年10月にテレビドラマ化されることも明らかになっています。
・誉田哲也先生『ドルチェ』(新潮社刊)が「金曜プレステージ」にてドラマ化!!
ドラマ版のあらすじを読んだところ、『袋の金魚』が原作みたいですね。
ただし、かなり改変している様子。
こちらも注目です!!
<ネタバレあらすじ>
・袋の金魚
警視庁練馬署強行班係に所属する魚住久江は42歳。
10年前には金本とともに捜査一課で活躍し、「新宿鮫」に対抗し「袋の金魚」と呼ばれていたものの、今は所轄を転々としていた。
何故、捜査一課から転属したのか―――問われることもある。
だが、久江が捜査一課に戻らないのは自身の意志であった。
久江は何度となく、捜査一課への復帰を望まれたものの敢えて拒否しているのだ。
これには理由があった。
矢先、事件が発生する。
喘息を患っていた幼児が溺死したのだ。
幼児の父・明が帰宅したところ、妻・由子は姿を消していた。
看護に疲れた由子が殺害したのか?
あるいは看護の疲れが原因となり、不慮の事故で死なせてしまったのか?
まずは由子の身柄確保が先決である。
由子の立ち回り先を捜す久江だが……調べれば調べるほど由子の印象が不鮮明となる。
まるで、由子が複数存在しているかのように。
そんな中で由子が出頭して来た。
由子は明に怯えている様子、息子を殺したのも自分だと主張するが……。
これに久江は違和感を覚えた。
明には手出しさせないと説得した久江。
由子が語る真実とは?
実は出頭した由子は由子ではなかった。
本物の由子は半年以上も前に明に殺害されており、この事実を隠す為に、当時明と不倫関係にあった女性が由子を名乗り生活していたのである。
だが、子供に愛情を注ぐうちに本当の親子のようになってしまい、抜け出せなくなったのだそうだ。
子供を殺してしまったのも、故意ではなく看護疲れによる事故であった。
こうして、事件は意外な形で解決。
久江は女性を助けられたことに満足する。
実は久江が捜査一課に戻らない理由も此処に在った。
一課の担当する案件は既に殺人にまで発展したものとなる。
久江は生きている誰かを助ける、その為に強行班係に留まり続けるのだ―――エンド。
・ドルチェ
女子大生が公園で何者かに襲撃された。
被害者は腹部を刺されたが一命は取り留めていた。
なんでも、強盗に遭い抵抗したところ刺されたと言う。
この事件に久江が挑む。
抵抗したとの女性の証言にも関わらず、腹部以外に傷跡が残っていなかったことから強盗事件ではないのでは……との疑問が浮上。
さらに被害者が隠したと思われるハンカチも公園内で発見される。
ハンカチがあったのならば、何故、傷口にあてなかったのか?
疑問に思った久江は捜査を進め、真実に辿り着く。
犯人は予想通り被害者の顔見知りであった。
そして、被害者は犯人を庇っていたのだ。
実は、犯人は被害者の家庭教師先の教え子であった。
惚れっぽい性格だった被害者は教授相手に不倫しており、その関係に悩んでいた。
矢先、悩みを打ち明けていた家庭教師先の教え子から「教授と別れ自分と交際して欲しい」と告げられ、彼と交際を開始する。
直後に妊娠が判明。
彼の子かもしれないし、教授の子かもしれない。
どちらにしろ、まだ若い彼には耐えられないだろう。
そう思い詰めた被害者は彼に別れ話を切り出す。
ところが、これに彼は怒った。
被害者を本気で愛していた彼は学校を辞めてでも生活の面倒をみると主張。
これを断ったところ、子供さえいなければと彼女の腹部を刺したのである。
こういった事情の為に、被害者は彼を庇ったのであった。
こうして、久江はまた1つ事件を解決したのである―――エンド。
・金曜プレステージ「特別企画 ドルチェ ストロベリーナイトの誉田哲也傑作原作を初映像化!重体の幼児消えた母親…白骨死体その女は聖母?魔女?嘘つく女VS心を読む女、女の壮絶取調室開幕」(10月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
◆「誉田哲也」先生関連過去記事
【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ1作目「ストロベリーナイト」はこちら。
「ストロベリーナイト」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
「シンメトリー」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
「インビジブルレイン」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・シリーズスピンオフ作品「感染遊戯」です。
「感染遊戯」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『アンダーカヴァー(「宝石 ザ ミステリー」掲載)』(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『女の敵』(誉田哲也著、宝島社刊『誉田哲也 All Works』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『ブルーマーダー』(誉田哲也著、光文社刊『小説宝石』連載)まとめ
【ジウシリーズ】
・『ジウ 1〜3』(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『三十九番』(誉田哲也著、双葉社刊『痛み』収録)ネタバレ書評(レビュー)
・『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ版】
・土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第1話「シンメトリー」(1月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第2話「右では殴らない(前編)」(1月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第3話「右では殴らない(後編)」(1月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第4話「過ぎた正義(前編)」(1月31日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第5話「選ばれた殺意の径〜過ぎた正義(後編)」(2月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第6話「感染遊戯」(2月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第7話「悪しき実(前編)」(2月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第8話「悪しき実〜嗚咽(後編)」(2月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第9話「ソウルケイジ(前編)」(3月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」第10話「檻に閉じ込められた親子〜ソウルケイジ(中編)」(3月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・連続ドラマ「ストロベリーナイト」最終話(最終回、第11話)「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか〜ソウルケイジ(後編)」(3月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)
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