ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、2012年9月20日に掲載された46話「アリス14歳乙女座の乙女の告白」のあらすじをまとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年9月20日「週刊少年チャンピオン」掲載 46話「アリス14歳乙女座の乙女の告白」
「久美子〜〜〜晩御飯よ〜〜〜」
階下から聞こえる声、その主は久美子の母である。
一方、呼ばれている久美子は14歳の乙女、自室で何かに集中していた。
「ゴード、あなたのことが好きなの」
「よしてくれ、リンダ。君のことはどうとも思っていないんだ」
人形を手にごっこ遊びに興ずる久美子。
彼女が手にしたゴードとリンダの前に第3の人形が。
「やめなさいよ、ゴードが嫌がっているでしょ!!」
「ああ、君は学園1の美女・アリスじゃないか」
「なによ、アリス。あんたは関係ないじゃない」
「いいえ、困っているゴードを見捨てることは出来ないわ」
そこへさらに新たな人形が。
「あら、リキマル。さぁ、リンダをやっておしまい」
「きゃあ、覚えてなさい」
リキマルと呼ばれた人形の体当たりを受けたリンダはすごすごと引き下がった。
後に残されたのはゴードとアリス。
「アリス、なんで助けてくれたんだい?」
「ゴード、それは……あなたが」
「久美子、早く来なさい!!」
そこへ再度、響く母の声。
心なしか怒りも混ざっているようだ。
「んもう……」
いいところを邪魔された久美子。
諦めるかと思いきや、再度同じ行為を始める。
またも、リキマルの体当たりがリンダを強襲し、ゴードとアリスの例のシーンに。
久美子の顔には妄執の色が……。
「アリス、なんで助けくれたんだい?」
「コード、それはあなたが好きだからよ」
「な、なんだって。実は僕もアリスが好きだったんだ」
抱き合うアリスとコード。
久美子は心底スッキリした表情で人形を見詰める。
そこへ、3度目の母の声が。
「久美子〜〜〜いい加減にしなさいよ!!」
流石にヤバいと思った久美子は慌てて階段を駆け下りた……。
翌朝、よくある登校風景。
多くの学生の中に1組の男女の姿が。
「ねぇねぇ、神門(ごうど)」
「ん、なんだ林田」
神門は男子生徒、林田は女子生徒である。
カップルなのであろう仲が非常に宜しい。
そんな2人の前に久美子が立ち塞がる。
「やめなさいよ、ゴードが嫌がっているでしょ!!」
「えっ、何!?」
「お前、何だよ!?」
突然の久美子の言葉に驚く神門と林田。
「ちょっと、困るでしょ。きちんと台詞を喋ってよ」
そんな神門と林田の狼狽など気にもかけない久美子は逆に駄目だしし始める。
神門と林田が混乱に拍車をかける中、久美子はそのまま続ける。
「まぁ、いいわ……困っているゴードを見捨てることは出来ないわ!!」
「いや……俺、困ってないし」
「神門、こいつなんなのよ?」
「一体、なんなんだ?」と困惑する神門だったが、おそるおそるかつあっさりと「ひょっとして告白?だったら断るから」と口にする。
プルプルと震え出す久美子。
ここで神門が相手の素性に気付く。
「お前、もしかして有栖か」
「えっ、誰?」
「ほら、苗字が有栖って言うんだよ」
フルネーム・有栖久美子の身体がさらに小刻みに震える。
そこへ2人の男子が通りかかる。
「おい、力丸!!」
これを聞いた途端、まるで条件反射のように久美子が飛んだ。
「喰らえ、リンダ!!」
久美子の体当たりを喰らった林田、久美子はそのまま逃げ出してしまう。
「なに、あいつ!?」
「なんだったんだ……」
後には呆然とする神門(ゴード)と林田(リンダ)が―――エンド。
<感想>
2012年9月20日掲載の46話「アリス14歳乙女座の乙女の告白」です。
人形劇と現実世界の2重構造が特徴の物語でした。
ある意味、人の心は人形のように自分の自由には出来ないという喩えなのかもしれません。
それにしても、タイトルからして一筋縄ではいかないことを匂わせているのがなんとも。
あらすじだけでは分かり辛いと思うので、各人物について改めてまとめてみましょう。
()の中が久美子が人形につけていた名前ですね。
有栖久美子(アリス)
神門(ゴード)
林田(リンダ)
力丸(リキマル)
と、こうなっていたんですね。
つまり「久美子は神門に恋心を抱いており告白したかった、その予行演習を人形でしていた」ことになります。
だからこそ、人形を操る時点で告白の成功に拘っていたワケです。
さらに「その神門と交際している林田に敵愾心を抱いていた」ことも間違いありません。
そこでそれぞれの人形を「ゴード」、「リンダ」と名付けていた、と。
直接、実際の名前をつけなかったのは乙女心でしょうか。
この際、アリスが名前ではなく久美子の苗字だったことがポイント。
まさに叙述トリックでした。
これには「あっ!!」と驚かされました。
今回はテクニックといい、内容といい、なかなかハイレベルだったように感じます。
良かったです、未読の方は読むべし!!
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月10日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月17日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月24日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月31日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月7日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月14日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月28日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月12日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年7月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月2日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月16日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月23日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年8月30日の「空が灰色だから」43話ネタバレ批評(レビュー)
・「空が灰色だから」44話「なのるなもない」(2012年9月6日掲載)ネタバレ批評(レビュー)
・「空が灰色だから」45話「初めましてさようなら」(2012年9月13日掲載)ネタバレ批評(レビュー)
【関連する記事】
- 『スーサイド・パラベラム』第9話(道満晴明作、講談社刊『メフィスト 2016vo..
- 「実は私は」第1話から第160話まで(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオ..
- 「ダジャレ禁止令」(志水アキ画、講談社刊「週刊少年マガジン」掲載)ネタバレ批評(..
- 「実は私は」第160話「藍澤渚と藍澤渚E」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」最終話(第35話)「事件の先に」..
- 「実は私は」第159話「藍澤渚と藍澤渚D」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第107話「いつかの文学全集」(加藤元浩作..
- 「黒霊ホテル殺人事件」(「金田一少年の事件簿R」、講談社刊「週刊少年マガジン」連..
- 「兄妹〜少女探偵と幽霊警官の怪奇事件簿〜」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チ..
- 「実は私は」第158話「藍澤渚と藍澤渚C」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第34話「真犯人」(作画・星野泰..
- 「実は私は」第157話「藍澤渚と藍澤渚B」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第106話「動く岩」(加藤元浩作、講談社刊..
- 「実は私は」第156話「藍澤渚と藍澤渚A」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第33話「真相」(作画・星野泰視..
- 「実は私は」第155話「藍澤渚と藍澤渚@」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 「実は私は」第154話「勘違いしよう!!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャ..
- 【エピソード最終話】「黒霊ホテル殺人事件」最終話、第6話(「金田一少年の事件簿R..
- 「ABC殺人事件 名探偵・英玖保嘉門の推理手帖」第32話「二重人格」(作画・星野..
- 「ビーストコンプレックス」最終話(第4話)「カンガルーとクロヒョウ」(板垣巴留作..