2012年09月18日

『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)

『帰省』(誉田哲也著、小学館刊『東と西 2』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

日本のどこかを描いた新しい小説集第二弾
漁師たちが、伝説のマグロと奇妙な遭遇をする『野島沖』。来世をセミとして生きる男が主人公の『来世不動産』。交際相手の女性が出先から纏ってきた匂いをもとに話が転じる『肩先に花の香りを残す人』。江戸の酒問屋に嫁いだ元花魁に駄賃をねだろうとする父に災厄が訪れる『続すみだ川』。戦時中から残る建物を改築した謎のホテルを舞台にした『ダラホテル』。暴力的な恋人から逃れ、姉とともに郷里へと向かう妹の顛末を描く『帰省』。ある日、高校生の集団を突如襲った謎の物体Xが世界を変えてしまう『微塵島にて』。日本をテーマに描いた新しいかたちの小説集の第二弾。
(小学館公式HPより)


<感想>

何と表現していいのか、複雑な気持ちになる短編です。
女性は強いと云うべきか。

代々続くあの宿業。
凄まじいとしか言えません。
いや、あれこそが愛の姿なのか……。

そして、本編最後にて幹子の望みが語られますが、あれによりまだまだ続くことが匂わされています。
やっぱり、強いと云うべきか。
うん、そうとしか表現しようがないなぁ……。

<ネタバレあらすじ>

田舎から都会に憧れ、姉・房子の反対を押し切り共に都会へと出た幹子。
だが、都会の生活は甘くは無かった。

バイトから正社員にはなれない。
しかも、店長からはセクハラ三昧。

失望しかけていたところに、ヒロが甘言を以て近付いて来る。
幹子はあっさりと騙された。

ヒロと同棲するようになった幹子。
ヒロは本性を現すと、幹子に風俗で働くよう強要。
拒否すると、暴力を奮われた。
結局、風俗で働き始めた幹子。
やがて、ヒロの子供を身籠ることに。
だが、ヒロの態度は一向に変化しない。

これを見かねた房子は幹子にヒロと別れ田舎へ帰ろうと勧める。
この勧めに従い、幹子は帰省を決意。
しかし、ヒロは別れようとしない。

強制的にヒロとの関わりを断つことを決めた幹子はヒロと住まいを別にした。
だが、それでもヒロはやって来る。

田舎へと帰省する前夜、遂に幹子はヒロに捕まってしまう。
河原へと連れ出される幹子。
ヒロは幹子に乱暴を働こうとする。
抵抗した幹子がヒロを押した弾みでヒロは坂を転がり落ちて行った……。

動揺しつつ自宅に逃げ帰った幹子。
翌朝、約束の時間よりも遅く房子が迎えに訪れた。
こうして、共に新幹線で帰ることに。

何故か携帯の電源を切る房子。
幹子もそれに倣わされる。

だが、幹子は内心、それどころではなかった。
ヒロは必ず復讐する男だ。
それが今朝は現れなかった。
もしかして、あのままヒロは死んでしまったのではないか……。

そんな幹子の不安を煽るように「……川で男性の遺体が発見」と電光掲示板にニュースが流れて行く。

耐え切れなくなった幹子は遂に房子にそれとなくヒロのことを打ち明ける。
だが、房子は大爆笑。
「あんたは殺してないよ」と請け負う。

そう言えば……幹子は房子の泰然とした様子に何かを感じ取る。
房子は約束の時間に遅れていた。
まさか、ヒロに止めを刺してくれたのではないか……。

しかし、そんな幹子の妄想も房子にかかれば一溜りも無かった。
「そんなことするワケないでしょ〜〜〜が」

では、この自信は何処から生ずるのか?
幹子は戸惑う。

そうこうするうちに、とうとう実家に戻って来た。
幹子たちに両親は居ない。
居るのは祖母のみだ。

ところが、実家に足を踏み入れると男の客が居た。
それも招かれざる客である……ヒロであった。

ヒロは幹子に復讐すべく先回りしていたのだ。
「あんな真似してただで済むと思うなよ!!」
怒り狂ったヒロは幹子を乱暴に殴りつける。
ショック状態で放心する幹子。

そこへさらなるヒロの拳が降り注……がなかった。
何時の間にやらヒロの首にはツルハシが刺さっていた。
刺したのは幹子の祖母である。

「お前の所為で昌子が!!」
憤懣遣る方ない様子でツルハシを叩きつける祖母。
ちなみに昌子とは房子と幹子の母である。

どうやら祖母は昌子と幹子を勘違いしているらしい。
そして、父とヒロをも勘違いしているのだ。

絶命したヒロ。
だが、房子に驚きの色は無い。

「埋めに行くか……」
ぼそりと呟くのであった。

幹子はここで知ることになる。
ヒロが埋められる先には、父と祖父も埋められていることを。
代々続く宿業なのだろうか。

幹子は生まれてくる子供が祖母似の美人であることを強く祈るのであった―――エンド。

◆「誉田哲也」先生関連過去記事
【姫川玲子シリーズ】
・シリーズ1作目「ストロベリーナイト」はこちら。
「ストロベリーナイト」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ2作目「ソウルケイジ」はこちら。
「ソウルケイジ」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ3作目、短編集「シンメトリー」はこちら。
「シンメトリー」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ4作目「インビジブルレイン」はこちら。
「インビジブルレイン」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズスピンオフ作品「感染遊戯」です。
「感染遊戯」(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『アンダーカヴァー(「宝石 ザ ミステリー」掲載)』(誉田哲也著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『女の敵』(誉田哲也著、宝島社刊『誉田哲也 All Works』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『ブルーマーダー』(誉田哲也著、光文社刊『小説宝石』連載)まとめ

【ジウシリーズ】
『ジウ 1〜3』(誉田哲也著、中央公論新社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【その他】
『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『三十九番』(誉田哲也著、双葉社刊『痛み』収録)ネタバレ書評(レビュー)

【ドラマ版】
土曜プレミアム ストロベリーナイト「大ベストセラー小説初ドラマ化!!連続猟奇殺人事件のカギを握る感染死体…真相に迫る孤高の女刑事悲しみの過去と驚愕の結末!!」(11月13日)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第1話「シンメトリー」(1月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第2話「右では殴らない(前編)」(1月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第3話「右では殴らない(後編)」(1月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第4話「過ぎた正義(前編)」(1月31日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第5話「選ばれた殺意の径〜過ぎた正義(後編)」(2月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第6話「感染遊戯」(2月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第7話「悪しき実(前編)」(2月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第8話「悪しき実〜嗚咽(後編)」(2月28日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第9話「ソウルケイジ(前編)」(3月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」第10話「檻に閉じ込められた親子〜ソウルケイジ(中編)」(3月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)

連続ドラマ「ストロベリーナイト」最終話(最終回、第11話)「こんなにも人を愛した殺人者がいただろうか〜ソウルケイジ(後編)」(3月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「東と西 2 (小学館文庫)」です!!
東と西 2 (小学館文庫)



【関連する記事】
posted by 俺 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。