2012年09月28日

「空が灰色だから」47話「幸福パンデミック」(2012年9月27日掲載)ネタバレ批評(レビュー)

第3巻の発売も近付く阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書店)。
ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。

実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

というわけで、2012年9月27日に掲載された47話「幸福パンデミック」のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2012年9月27日「週刊少年チャンピオン」掲載 47話「幸福パンデミック」

「おはよ〜〜〜ございま〜〜〜す!!」
朝早くから街頭に立ち、道行く人々に元気よく挨拶している3人組が居た。

彼らは自らを「ハッピーハッピーハッピークラブ(略称:H3C)」と名乗っていた。
彼ら「H3C」の目的は、明るく元気な気分を周囲に振り撒くことで全員を「幸せ」にすること。
その為に、こうして朝早くから挨拶を繰り返しているのだ。

「H3C」のメンバーは、中央に立つリーダー風の3年生女子が部長。
その左に立つのが唯一の男子であり3年生の俊哉。
そして、2人とは対照的に寧ろ元気のない1年女子のルルカ。
ルルカだけは何処かやる気のない様子だが……。

部長と俊哉が挨拶していても、ルルカ1人だけは黙ったまま俯いている。
ゴミを拾っていても、別の場所でソッポを向いている。
再度、挨拶を始めてもやはり俯いたままだ。

これに激怒した部長!!
「少しはあんたも声出しなさないよ!!」
と檄を飛ばすが、ルルカは何処か虚ろな表情を浮かべたきり返事もない。
結局、その場は解散となり、部長と俊哉は連れ立って去ってしまう。

残されたルルカは1人で携帯に「死死死死死」と不気味に打ち込み続けるのであった。

翌朝、登校途中のルルカ。
その目つきは明らかに異様である。
周囲全てを睨み付け、敵だと見なしているようにも見える。

そんなルルカに道を尋ねる老女。
ルルカはこれを無視する。

道を行く小学生にぶつかるが、これまた無視。
小学生は飲みかけのジュースを落としてしまう。

そして……俊哉と出会うルルカ。
俊哉はルルカに声をかけるが、これまたルルカは無視すると足早に先へ進んでしまう。
慌てた俊哉はルルカを追いかけ……頭から転倒してしまう。
地面にはじわりと血が流れ出て……。

流石にこれには足を止めたルルカ。
急いで俊哉に駆け寄ると抱き起す。
俊哉は軽傷であった。
流れ出た血は鼻血だったのだ。

「ありがとう、ルルカちゃん。僕は身体が弱くて」と俊哉。
どうやら、俊哉は病弱な為に部長の信念に惹かれ「H3C」に加わったらしい。
部長の信念を褒め称えつつ、自分を助け起こしたルルカをも褒める俊哉。

これにルルカは幸せ顔。
顔を真っ赤にしつつ、携帯に向かう。
今度は「生生生生生」と文字を打ち続けるルルカ。

そのまま、先ほどの老女のもとへ。
彼女に道を教え、感謝される。

続いて、小学生が落としたジュースを拾う。
併せて周囲のゴミも集めることに。
通りがかった人々は「感心だねぇ」とルルカの行動を褒める。

これを目撃した部長。
「やっとやる気になったんだな!!」と感激。
ルルカを抱きかかえるのであった。

認められたことで喜びを感じるルルカ。
その顔は嬉しさに溢れほころんでいる。
そんなルルカに部長は「ほら、やる気になったんなら行動に移すように」と俊哉の背中にルルカを押し付けるのであった―――エンド。

<感想>

2012年9月27日掲載の47話「幸福パンデミック」です。

あらすじだけからでは分かり辛いかもしれませんが、ルルカの原動力は実は俊哉です。
作中描写から見る限り、ルルカは俊也に恋しているのでしょう。
だからこそ、「H3C」に加わったものか。

そして、部長はそんなルルカの気持ちに気付いている。
だから、ラストで俊哉にルルカを押し付けることになりました。

ただ、俊哉の気持ちが何処にあるのかまでは不明なので、ルルカの喜びが何処まで続くかは不明ですね。
個人的には俊哉は部長に恋に近い憧憬を抱いているようなので、正直難しい気もします。
てっきり、ここらを捻って「周囲を幸福にする筈のH3Cが、実はその活動を通じて部長と俊哉しか幸せにしていない、寧ろルルカは苦痛に感じている的な矛盾を活かして来るか」と思っていただけに、今回の結末はまさに意外でした。
でも、将来的な結末は曖昧とは言え、現状でのハッピーエンドはいいよね。
ルルカがこのまま第2の部長のようになれば、俊哉も振り向いてくれるかもしれないし。
あるいは、また別の異性を好きになることも出来るでしょう。

それにしても、ルルカの極端な性格は人間の2面性を現しているようでもあり興味深かった。
人間って機嫌がいい時は何でも楽しく感じるけど、機嫌の悪い時は同じことでも辛く感じることってあるよね。
そうすると、自然と周囲への対応も変わって来るし、そこが変わると周囲もまた自身への対応を変えて来る。
これが好転すれば良い方に回るし、逆ならば悪循環に陥る。
世界に対し、どう自分が接するかとも関わって来そうです。
ですので、「H3C」の目的は「世界を幸せにすること」よりは「自身を取り巻く世界を幸せにすることで自身も幸せになること」あるいは「自身が世界と認識した範囲内を幸せにすることで自身もまた幸せになること」と言えそうです。

その意味で部長の信念は心得や心構えとして正しい。
それは、作中のルルカが体現してる。
今回はそんな1つの真理を上手く漫画化した作品でした。

そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。

従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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