<あらすじ>
元・警察官で、今はホープ探偵事務所の探偵である佐伯修一(滝沢秀明)は、少年院を出所した男・坂上洋一(要潤)の追跡調査を頼まれていた。依頼人は、十一年前、その男に息子を殺された夫婦。息子を殺したその男が今どんな生活をしているか、その男を赦すべきか、赦すべきでないかを判断してほしい――という特殊な調査だった。事務所の経営難のため木暮所長(渡哲也)と庶務の染谷(戸田恵子)から命じられたのだが、佐伯には、息子を殺された夫婦の気持ちが痛いほどわかった。佐伯も、十五年前、大好きな姉を暴行され亡くしていたからだ。自分の誕生日に、ケーキを買いに行った姉は、その帰り道で襲われた。薄暗い廃屋で制服を引き裂かれ、動かなくなっていた姉――その姿を思い出すと、犯人への激しい憎悪は、十五年経っても少しも色あせていない。それは父・順一郎(大杉漣)も同じだ。警察官を懲戒免職になったのも、ある暴行犯の口に怒りから思わず拳銃を突っ込んでしまったからだった。調査の結果、「私なら赦せません」と依頼人の両親に告げた一週間後―悲劇は起きた。佐伯の報告が、被害者遺族の心の引き金を引かせたのだ。
その後も、被害者遺族から犯人の追跡調査の依頼が舞い込んだ。そのひとりは、一歳児の弟を遺棄致死させた実の母の追跡をしたい、という青年だった。
青年は当時三歳。母に部屋に閉じ込められ、弟の死体を見ながら、絶望的な空腹の中で生米と雑誌をかじりながら生き延びた。被害者にとって苦しいのは、加害者が幸せに暮らしていたときだ。
そんな中、ずっと追い続けてきたある男を見つける。ラーメン店経営者の田所健二は、姉を殺した犯人の一人、忘れたくても忘れられない名前だった。佐伯は、田所の馴染みのキャバクラで彼の様子をうかがっていた時、キャバ嬢のはるかと出会う。
ある日、サプライズで、ロウソクの灯ったケーキとプレゼントを用意したはるか。佐伯は、姉の事件以来、誕生日というものを忘れていた。自分の誕生日は、姉の命日だからだ。けれど、はるかの純粋で真っすぐな恋心を知った佐伯は、思わずつぶやいた。「ありがとう……」「修ちゃん……ひとりにならないで!私がそばにいるから…」
翌日、刺殺された寺田の遺体が河川敷で発見された。寺田も、佐伯の姉を暴行した三人組の一人だ。寺田は十六年前の事件をネタに、独立が近い田所を脅迫していたらしい。間もなく田所が逮捕された。姉を貶めた犯人の二人が、もつれあうように地獄に落ちていった。佐伯が茫然としていたその日――はるかがマンションを引き払い、姿を消し―。
佐伯は、探偵を辞める決意を木暮に告げた。だが、木暮から直々に、最後の調査を命じられる佐伯。調査対象は榎木和也――姉を殺した主犯だった。
「この男の魂を殺してやりたい…俺は悪党になるんだ」
自分に言い聞かせた佐伯は、行動を始めた…。
(公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
佐伯は暴行犯の言動に怒りを覚え、感情から銃を突き付けたことが原因で警察官を退職していた。
今では、同じく元刑事の木暮が営む「ホープ探偵事務所」で調査員として働いている。
細谷夫妻から「息子を殺した男を調べ、許せるかどうか判断してくれ」との依頼を受けた佐伯。
調査対象は坂上という男であった。
坂上は過去の罪に対し反省する素振りも見せず、現在も振り込め詐欺グループのリーダーとして贅沢の限りを尽くしていた。
この事実を報告し「許せはしない」と評したことが細谷を復讐に走らせた。
思い詰めた細谷は坂上を刺してしまう。
坂上は一命を取り留めるが、下半身付随の重傷を負った。
責任を感じる佐伯だったが、一方で彼自身も自身の復讐に悩んでいた。
過去に姉を榎木、寺田、田所という3人の男性に暴行された上に殺害されてたのだ。
当時、3人は未成年だったことで大した罪にも問われていなかった。
これに納得出来なかった佐伯は個人的に彼らを追っていたのである。
この心の傷が佐伯を警察官に導き、また銃を抜かせる原因ともなったのだ。
犯人の1人・田所を調査していた佐伯は、バーテンダーをしていたはるかと出会う。
はるかと親しくなった佐伯は、彼女と接することで心が癒されるのであった。
矢先、今度は早見剛という青年から依頼を受ける佐伯。
早見は前畑紀子の行方を捜していた。
前畑紀子は早見の生みの母。
だが、紀子は育児放棄し、早見の弟を死なせていた。
紀子を捜し当てる佐伯。
だが、報告すべきかどうか悩んでしまう。
紀子には夫となるべき男性がおり、その男性との間に子供まで妊娠していたのだ。
この報告を受けた早見は紀子と接触。
ある言葉を呟くことで復讐を果たす。
その言葉とは「お久しぶりですね、お母さん。その子が男の子なら弟の生まれ変わりですね」とのものであった。
この言葉を耳にした紀子は絶叫してしまう。
生まれた子供の顔を見る度に、殺した子供を思い出すこととなるのだろう。
細谷に早見、2人の復讐を目撃した佐伯。
自身の復讐について考え始める。
田所を介し、寺田の居所を突き止めた佐伯。
はるかが寺田に気に入られたことを利用し、寺田宅に盗聴器を仕掛けるよう依頼する。
はるかは佐伯の依頼を無事達成する。
これを通じて、佐伯とはるかの仲はさらに急接近。
姉を失うまでの理想の職業が「理髪師」だったことや、自分からは決して明かすことのなかった姉の事件の詳細まではるかに伝えるほどとなった。
一方、盗聴器により、田所が寺田に脅されていることが分かる。
田所は大手チェーン店の社長令嬢との婚約が持ち上がっており、過去の事件を知られることで破談になることを恐れたのである。
さらに、寺田は佐伯の姉が暴行される様子を撮影したビデオまで所持していた。
やがて、追い詰められた田所は寺田へ殺意を募らせるが……。
翌朝、木暮のもとを弁護士の鈴本が訪れる。
鈴本は細谷の弁護を担当しているらしい。
さらに、鈴本は過去に榎木の弁護も担当していた。
木暮が警察を辞めるに至った理由も、鈴本が過去に凶悪犯を弁護し、それを守り抜いたことに腹を立て殴りつけたことが原因であった。
鈴本に関連し、過去の出来事を思い出す佐伯。
佐伯は姉を辱めた榎木たちが許せず、殺害しようとナイフを手に裁判所へと向かった。
ところが、そこを刑事に見咎められナイフを押収されてしまっていたのだ……。
何故、今頃になってこんなことを思い出すのか……。
その夜、はるかが重傷を負い病院へ搬送される。
寺田宅にビデオを奪いに侵入し、見つかった為に暴行されたのだ。
はるかの見舞いに訪れた佐伯。
はるかの本名は伊藤冬美であった。
何故、危険を冒してまでビデオを回収しようとしたのか―――佐伯の問いにはるかは答える。
15歳の時に母親の再婚相手に性的虐待され、以来、関係を強要され続けたはるか。
大学に進学、両親が離婚し、義父との接点も断たれた。
やっと悪夢から解放されたかに思えたはるかだったが、ある日、恋人から別れを切り出された。
原因は―――義父がネットに流したはるかの痴態であった。
何処で誰がこの映像を見ているか分からない……これにショックを受けたはるかは整形し冬美を消した。
以来、はるかとして生きていたそうだ。
佐伯の姉を死してなお、そのような目に遭わせることが耐えられなかった……涙ながらにそう訴える。
ビデオは無事回収し、はるかの手で既に処分されているらしい。
翌朝、河川敷で寺田が何者かに殺害され死体で発見される。
明らかに、口封じを目的とした田所の犯行である。
盗聴器から身許を割り出された佐伯は警察に身柄を確保される。
だが、ビデオの件があり、事実を明かせない。
数時間後、田所の犯行が立証され佐伯は釈放された。
ところが、はるか……冬美は姿を消してしまう。
はるかは置手紙を残していた。
はるかが佐伯に興味を抱いたのはその目が澄んでいたからだったそうだ。
だが、自身と共に居ることでその目が濁ることを恐れ、姿を消したのだ。
手紙には、処分された筈の佐伯の姉のビデオも同封されていた。
寺田は死亡。
田所は寺田殺害で逮捕。
残る仇は榎木のみ。
そこで木暮は、自身からとして榎木の調査を佐伯に依頼する。
木暮は調査を受けるにあたり、結果を木暮に報告することを条件に出す。
これを受けた佐伯は調査を開始する。
これまでに培ったノウハウを活かし榎木を追う佐伯。
途中、坂上と出会う。
坂上は「悪党は悪事を止められない代わりに、悪事を働けば働くほど何かを失う」と佐伯に告げる。
もしも、復讐すれば佐伯もまた悪党になってしまうのか?
思い悩む佐伯だったが、はるかが残した姉のビデオを見ることで、復讐心を募らせる。
見つけたら……榎木を殺す!!
その覚悟のもと、遂に榎木に辿り着いた佐伯。
だが、榎本は余命幾許もない入院患者であった。
愕然とする佐伯。
その目の前に鈴本が現れる。
鈴本は榎木の生い立ちに問題があると主張。
両親が離婚した榎木は、父に引き取られたことで母に捨てられたと思っていたそうだ。
それこそが、動機らしい。
鈴本は「人間に生まれながらの悪人は居ない」と榎木を庇う。
佐伯は榎木への殺意を押し留め、代わりに他の方法で復讐しようと決意する。
姉の死の映像を榎木に見せつける佐伯。
さらに言葉で追い詰めようとするが……榎木には微塵も動揺が無い。
死を覚悟しており、開き直りに近い状態であった。
佐伯は次なる手段を模索する。
鈴本の話を思い出した佐伯は、榎木の母こそがウイークポイントになると考え、接触する。
ところが、榎木の母は「息子は死んだ」と繰り返すばかり。
佐伯はこの発言を録音、榎木の精神に止めを刺そうと企む。
死の直前に母親の自身を否定する言葉を聞かされたとしたら……。
いよいよ、榎木の死が近付いた。
レコーダーを持ち込み、計画を実行に移そうとするが。
其処へ、榎木の母が現れた。
「死んでも許さないから!!」
母からこの言葉を聞かされた榎木はうっすらと涙を流し、そのまま事切れた。
その涙は失望から来る物だったのか、あるいは、母の姿を見た喜びだったのか……誰にも分からない。
母親を呼んだのは鈴本であった。
「私なりの彼への罰だよ」
鈴本の言葉を聞いた佐伯を混乱が襲う。
自分は何をしたかったのか?
自分は満足しているのか、不満なのか?
許すとは何なのか?
何をどうすれば良かったのか?
佐伯は混乱の果てに、木暮へと報告を行う。
そんな佐伯に例のナイフを返却する木暮。
佐伯からナイフを取り上げた警官こそが木暮であった。
木暮が鈴本を殴り、刑事を辞める原因となった事件こそ姉の事件だったのである。
以来、木暮は佐伯を気にかけ続けていた。
意外なところで、自分が見守られていたことを知った佐伯。
すべてが終わり、佐伯は長年、避け続けていた実家へと足を運ぶ。
父の手で髪を切って貰う佐伯。
佐伯の父は「いつでも笑ってないといけないんだ」と彼に語る。
これを聞いた佐伯は、これからは自身の為に生きようと心を決める。
それこそが、姉の為にもなるのだから。
佐伯は今も木暮のもとで働いている。
今日は盛岡へ出張していた。
其処ははるかの故郷―――とある美容院の前を通りがかった佐伯は目的の人物を発見する。
佐伯の視線の先には美容師見習いとなった「冬美」が居た。
笑顔で店の扉を潜る佐伯。
世界では今日も事件が報道されている。
悪党は世の中から消えることはない―――エンド。
<感想>
ドラマ原作は薬丸岳先生『悪党』(角川書店刊)。
過去記事にネタバレ書評(レビュー)がありますね。
・『悪党』(薬丸岳著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・薬丸岳さんの「悪党」を山村基毅さんが批評されました
では、早速ドラマの感想を!!
ドラマ版は原作と比較すると大筋こそ同じながら細部にてドラマ版よりもライトに作られていた印象かな。
特にエピソードの並びが変更されていたことから構成と設定が一部、アレンジされていたのかな。
例えば、はるかの職業がバーテンに変更されてましたね。
ラストで美容師見習いになっていたことも原作にはありませんね。
美容師については、姉を失うまでの佐伯の夢が「散髪屋さんになること」だったのを受けてでしょうね。
ここらは大胆な改変でした。
そういえば、鈴本のエピソードも割愛されていました。
その為に、鈴本の榎木への罰が分かりづらいものになったかも。
他にも佐伯の姉がビデオ中で「修ちゃん……」と名前を呼び、弟とは知らない榎木が「そいつはお前のことなんてすぐに忘れるよ」と絶望を与えるエピソードも省略されていました。
これはあった方が佐伯の無念が伝わり易いと思うのですが。
詳しくは原作ネタバレ書評(レビュー)をご覧になって頂いた方が良いかも。
・『悪党』(薬丸岳著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
とは言え、ドラマ版は原作を上手く表現出来ていたと思います。
ラストにて、佐伯の苦しみは終わったが、世の中に蔓延する問題それ自体は解決したワケではないことが強調されていました。
此処もドラマ版のオリジナルですが、問題提起として成功していると思われます。
アリです。
<キャスト>
佐伯修一:滝沢秀明
坂上洋一:要潤
染谷伸子:戸田恵子
佐伯順一郎:大杉漣
鈴本茂樹:奥田瑛二
木暮正人:渡哲也
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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