2012年10月05日

「名探偵マーニー」第8話「ペンフレンド」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第8話「ペンフレンド」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第8話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。
亀井:村枝の文通相手。
エリオット:マーニーの愛猫。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

ご機嫌斜めなエリオット。
どうやら、お気に入りの食事が提供されず不満のようだ。
エリオットはその腹いせに鬱憤をマーニーにぶつけてくる。
マーニーは手を焼くが……。

一方、ロイドは刑事仲間の紹介で依頼を受けるべく外出しようとしていた。
これに困り果てていたマーニーも同行する。

今回の依頼者は村枝紗平。
ロイドによれば村枝は政財界のフィクサー。
多くの愛人を抱えるも、独身で妻子はいないらしい。
絶大な権力を持ち、常に「黒い噂」の絶えない人物らしく敵も多いとのことだが……。

そんな村枝の依頼内容は「ペンフレンド」を捜して欲しいとのものであった。
村枝の厳つい容姿と噂に似合わぬ依頼に驚くマーニー。

なんでも、村枝には顔も知らぬが40年に渡る文通相手が居るらしい。
ところが、最近になって相手からの手紙がプッツリと途絶えてしまった。
そこで事情を調べて欲しいと言うのだ。

依頼を引き受けたロイドとマーニーは手紙の住所を頼りに調査を開始する。
だが、既に引っ越した後であった。
転居先を追うロイド。

別行動をとったマーニーは、文通した手紙の内容に手掛かりを求め村枝を訪ねる。
渋る村枝だったが、押し切られる形で手紙を見ることを許す。

そこには、村枝と文通相手・亀井による互いの遣り取りが記されていた。
手紙の内容を目にしたマーニーはまたも驚くことに。

村枝によれば亀井を手紙で励ましていたとのことだったが、手紙には常に村枝自身の自慢や亀井への説教が記されていたのである。
亀井が就職に困っていれば、出来て当たり前だと応える。
亀井が恋人が居ないと相談すれば、作る努力をしないからだと応える。

すべてに目を通し終えたマーニーはあることに気付く。
手紙の中の村枝は現実の村枝とは異なっていたのだ。

現実の村枝は独身で子供も居ない。権力はあるが敵は多い。
一方、手紙の中の村枝は妻子と共に多くの家族がおり、皆に愛されていたのである。

そして、亀井の手紙の内容に注目したマーニーはその居場所に思い当たるのであった。

病院へと村枝を連れて来たマーニー。
だが、亀井は既に病院のベッドで冷たくなっていた。
その周囲を取り囲むのは彼を愛する家族たち……。

亀井は最近の手紙で村枝の健康面の心配ばかりしていた。
これは裏を返せば、自身の身の上に同様のことがあったからに他ならない。
つまり、亀井は病気だったのだ。
これに気付いたマーニーは病院を調べたのである。

亀井の家族は村枝に亀井の最期の手紙を手渡す。
其処には亀井が村枝を父のように慕っていたことが書かれていた。
涙を流す村枝。

村枝が現実と手紙の中とでキャラクターを変えていたように、亀井もまたキャラクターを変えていた。
村枝が亀井を叱咤激励していたように、亀井も村枝を尊重していたのである。
彼らは手紙で互いに気を遣い合っていたのだ―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。

今回はその第8話「ペンフレンド」です。
40年の長きに渡る顔も知らない2人の交流と絆を描いた作品でした。

横柄で傲慢な村枝。
おそらく手紙の中でのみ素直な自分になれたのかもしれません。
だからこそ、理想の自分像を手紙に託した。

そして、そんな村枝の想いを汲んで自身も実像を隠していた亀井。
実際は村枝が手紙の中で思い描いた自身の理想を地で生きていました。
ある意味、もう1人の村枝と言える存在だったのかもしれません。

互いが互いに手紙の中で別の自分を演出していたことは興味深いです。

それにしても、村枝の理想が手紙に反映されているようだったので、途中までは村枝の自作自演を疑っていたのですが、結果としてこちらの方がより思いを深める良いラストとなっていました。
アリです。

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第2話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第3話「ドッペルゲンガー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第4話「結婚式か葬式か」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第5話「なくしもの」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第6話「侵入者」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第7話「笑う男」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

◆関連過去記事
「フランケン・ふらん 最終話(最終回) Dream」ネタバレ批評(レビュー)

「フランケン・ふらん 59話 BestFriend」ネタバレ批評(レビュー)

「Phase20」(木々津克久作、「チャンピオンRED 2012年1月号」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「鋏女(チャンピオンRED 5月号掲載)」ネタバレ批評(レビュー)

「ヴァンパイア・アナライズ (チャンピオンRED 7月号掲載)」(木々津克久著、秋田書店刊)ネタバレ批評(レビュー)

これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
ゆりか:マーニーの友人。4話、5話に登場。
前花:マーニーの友人。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話で登場。
累:白鳥の友人、1話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。

【警察】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話で登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:大学生、4話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。

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