2012年10月12日

「名探偵マーニー」第9話「モンスター」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第9話「モンスター」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第9話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。
前花:マーニーの友人。
ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話に登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

マーニーの友人・前花が学校で“モンスター”を目撃したらしい。
この事実を「秘密よ」とこっそり前花から教えられたマーニー。
なんでも、目撃したのは暗闇の中の真っ赤な眼だったそうだ。

これを偶然耳にしていたゆりかは当初こそ「前花の言葉だから」と相手にしていなかったが……。
数日後、自身も前花が語っていたものと同一と思われる“モンスター”を目撃することに。

途端にゆりかは豹変。
「モンスターは実在する」と騒ぎ立て始める。
こうなると、ゆりかの行動力は脅威である。

あっという間に噂が噂を呼び、校内ではモンスターで持ち切り。
ネット上ではそれは恐ろしいモンスターが旬のトピックとして取り沙汰された。
遂にはゆりかの投書がテレビでも取り上げられる始末。

この事態にマーニーと前花は眉を顰める。

一躍、話題となったモンスター。
ニュース番組の人気キャスター・野宮真理までが学校に取材にまでやって来る事態に。

これが更なる波紋を呼び、モンスターの証言が集まるや自称被害者まで登場。

曰く、牙が尖っていた。
曰く、口から血を滴らせていた。
曰く、モンスターは10メートルはあった。

次々と噂が集まり、野宮はこれを連日報道する。
これを自宅で視聴した生徒とその父兄。
モンスターが徘徊するとされた学校は半ばパニック状態となり、休む者も出始めた。

そんな中、ゆりかが野宮にマーニーの存在を洩らしたことがきっかけで、探偵としてマーニーがこのモンスターの謎に挑むことになってしまった。
流石にパニックを捨て置けないと判断したマーニーは事態を収集するべく調査を開始。
結果、モンスターの正体を突き止める。

前花やゆりかに、野宮らテレビスタッフを交えて、モンスターの正体を明かすマーニー。
モンスターとして教室に連れて来られたのは、毛の抜けた一匹の獣。

「この正体は分かっているよね?」
前花に問うマーニー。

前花が明かした事実は意外なものであった。
モンスターの正体は疥癬―――つまり、皮膚病に罹った狸だったのだ!!

前花はこの事実を知りながら、話が面白くなるように少し盛った。
もちろん、何の気はない。
話が少し面白くなれば程度のものであった。

ところが、これをゆりかが耳にし、ゆりか自身もモンスターを目撃してしまった。
もちろん、本来は狸である。
だが、ゆりかは前花から先入観を与えられていたことと、自身が深層心理で望んでいたこともあってさらにこれに盛ってしまった。
しかも、ネット上の事実かどうか確認できない噂もこれを加速させた。

こうして、関わる者が少しずつ話を盛って行くうちに大事に発展してしまったのだ。
此処に、モンスターの正体は明かされ事件は終わったかに思われたが―――。

その夜、自宅にてロイドと共に野宮が出演するニュース番組を目にしたマーニーは驚く。
番組中、マーニーが明かしたモンスターの正体については触れていた。
ところが「こういった説もあるが他にモンスターが存在するかもしれないことは否定出来ない」と話を盛っていたのである。

「盛り過ぎだよ〜〜〜」
頭を抱えるマーニーの姿―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。

今回はその第9話「モンスター」です。
まさに、都市伝説の成立過程ですね。
その意味で、伝聞あるいは噂話の不確かさや風評被害などがテーマ。

本作的には、噂を形作った無責任な大多数こそがモンスターであったとなりそうですね。
さらに一歩進めれば不特定多数だけでなく、そんな噂を膾炙する個人個人の心の中にこそ、モンスターが潜んでいるのかもしれません。
噂話好きの方はご用心を!!

本話はオチも軽快で、コンパクトながら正統派でなかなかの完成度でした。
良かった。

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第2話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第3話「ドッペルゲンガー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第4話「結婚式か葬式か」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第5話「なくしもの」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

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「名探偵マーニー」第8話「ペンフレンド」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

◆関連過去記事
「フランケン・ふらん 最終話(最終回) Dream」ネタバレ批評(レビュー)

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「Phase20」(木々津克久作、「チャンピオンRED 2012年1月号」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「鋏女(チャンピオンRED 5月号掲載)」ネタバレ批評(レビュー)

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これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話に登場。
前花:マーニーの友人。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話で登場。
累:白鳥の友人、1話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。

【警察】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話で登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:大学生、4話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。

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