2012年11月03日

「雲を抜けた月のように」(2010年、韓国)

「雲を抜けた月のように」(2010年、韓国)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

文禄・慶長の役―――それは豊臣秀吉による半島進出を目的とした出兵である。
当時の朝廷はこの侵攻に対し、具体的に抗すべき策が無く窮地に追い込まれた。

この危機的状況に、民間の志ある者は国を救うべく立ち上がった。
それが、思想に優れたカリスマであるチョン・ヨリプ、盲目の天才剣士ファン・ジョンハク、これまた孤高の天才剣士イ・モンハクたちである。
彼らはヨリプを頭に「大同契」を結成、義勇軍として倭軍と抗戦する。

「大同契」は大いに民衆の支持を集めた……だが、余りに集め過ぎた。
これに脅威を感じた朝廷は「大同契」を反乱と認定し弾圧を開始する。

一方、「大同契」内部でも、当初の志が忘れられ亀裂が生じつつあった。
やがて、イ・モンハクが密かにヨリプを殺害。
その座を奪い取ってしまう。

モンハクは自身が新たな王となるべきとの野心を露にし、倭軍ではなく弾圧を強める朝廷に弓を引いた。
朝廷の官僚宅を襲撃すると血祭りに上げたのだ。
その陰で、ヨリプの死とモンハクの行動に疑問を抱いたジョンハクはこれを討つべく孤独な追跡を始める。

モンハクの次なる標的は朝廷の重鎮であるハン・シンギュン。
ハン・シンギュンは現在の不安定な朝廷を一身に支える人物であった。
モンハクの襲撃を受けたハン家は一族皆殺しの憂き目に遭う。

一族内で疎まれていたシンギュンの庶子・キョンジャは怒りに駆られモンハクに斬りかかるが、返り討ちにあってしまう。
意識を失うキョンジャ。

次にキョンジャが目覚めたとき、其処にはジョンハクの姿があった。
モンハクを追って辿り着いたジョンハクがキョンジャを手当てしたのだ。
こうして、キョンジャは一命を取り留めた。

ハン家に遺されたのは、キョンジャと、隠れていた為に難を逃れたキョンジャの異母兄の2人のみであった。
異母兄はキョンジャを疎んじ、軍の力でモンハクを討つことを計画。
これに反発したキョンジャは単独ででも仇であるモンハクを討つことを決意。
ジョンハクを師と仰ぎ、剣の修業を受けながら追うことに。

ジョンハクはキョンジャに剣の極意を教えつつ、「大同契」の旧同志を訪ね歩きモンハクの行方を捜す。
その旅の中でジョンハクは、キョンジャにとって厳しさと優しさを併せ持つ父のような存在となった。
ジョンハクもまた孤独を癒され、キョンジャを息子のように慈しむように。

その頃、モンハクは来るべき革命の日に向けて武器の大量生産を命じていた。
そんな彼の心の中にはある女性の存在が。
モンハクの愛人である芸伎・ペクジである。
だが、モンハクは王位に着く為にペクジに別れを告げる。

一方、武器の大量生産の事実を知った朝廷はキョンジャの異母兄を派遣。
彼の指揮のもと、軍が動き「大同契」の支部が1つ潰されてしまう。
これを皮切りに朝廷と「大同契」との抗争は更に激しさを増して行った。
その傍らでは倭軍が首都に迫りつつあった。

朝廷はペクジに目をつけた。
モンハクへの切り札になると考えたのだ。
こうして、朝廷は使いを送り、ペクジの身柄確保に動く。
ジョンハクと別れ、モンハクの行方を追っていたキョンジャはこの場に居合わせ、成り行きで朝廷の使いに反抗しこれを殺害してしまう。
そのままキョンジャとペクジは追われる身となり、共にモンハクを追うことに。

その頃、キョンジャの異母兄はモンハクを討つべく秘策を実行に移す。
モンハクの襲撃先に先回りし、伏兵するとこれを迎え撃ったのだ。
奇襲をかけたつもりが待ち伏せされていたモンハク。
前方と後方の部隊を遮断され、モンハクが率いる前方部隊に弓矢が雨霰と降り注ぐ。
万全の態勢の朝廷軍を敵に回し多くの仲間を喪うことに。

だが、モンハクは鬼神であった。
弓矢に怯みもせず、当たるを幸いに敵を斬り伏せる。
槍を取っては投擲し、高台の射手を撃ち殺す。
高台自体は足場を切り崩し、これを転倒させる。

このモンハクの活躍により、罠を張った筈のキョンジャの異母兄は忽ち劣勢に。
逆に追いつめられるとモンハクの手で殺害されてしまう。

意気上がる「大同契」軍。
其処へ、噂を聞きつけたジョンハクが現れた。
ジョンハクとモンハク、遂に雌雄を決する時が来たのだ。

その戦いは激しく長く続いた。
盲目とは思えぬジョンハクの鋭い剣にモンハクは押されて行く。
だが、耐え抜いたモンハクの攻勢が始まると一転、ジョンハクは劣勢に追い込まれて行く。

そして、決着の時がやって来た。

モンハクの一撃が深々とジョンハクの胸を刺し貫いたのだ。
こうして、ジョンハクは敗れた。
モンハクは嘗ての同志であるジョンハクを一瞥すると、その場を去る。

其処へ遅ればせながら、キョンジャとペクジが駆け付ける。
彼らに看取られながら、ジョンハクは「雲を抜けた月のようであれ」と言い遺すとそのまま落命してしまうのであった。

此処にキョンジャにとってモンハクは父と師、2人の仇となったのである。
キョンジャはモンハクが王を目指す限り首都にやって来ると考え、都へ先回りする。
未だモンハクに想いを寄せ続けるペクジもこれを見届けるべく同行することに。

その頃、「大同契」内では意見が2分されていた。
王となるべく都へ向かうと主張し続けるモンハク。
これに対し、他の幹部は国民を救うべく先に保護して回るべきと主張したのだ。

だが、モンハクはこの意見を聞かない。
遂には歯向かう者は敵だと断言、幹部まで手にかけてしまう。

こうして、モンハクの独裁下となった「大同契」は都へ針路をとる。
だが、都へと辿り着いたモンハクは其処で信じられぬものを目にする。

王は既に都から逃げ出していた。
守るべき国民を捨ててである。
反対した重臣は皆殺しにされていた。

空となった都に入ったモンハク。
国土も国民もない王……こんなものに俺はなりたかったのか?
多くの犠牲を出したことに虚しさを覚えるモンハクの目の前に、キョンジャとペクジが現れる。
モンハクはキョンジャと剣を交えることに。
ところが、「大同契」軍その後方には倭軍が既に到達していた。

準備を整えず強行したことが此処に来て裏目に出た。
モンハクに同行していた「大同契」軍は、倭軍の前にバタバタと倒れて行く。
キョンジャを圧倒するモンハクだったが、彼の目には次々と血だまりに倒れ行く同志の姿しか映らない。
愕然とするモンハク、その手が止まった。

この隙をキョンジャは見逃さなかった。
身体ごとモンハクにぶつかると、体勢を崩したモンハクの胸に剣を突き立てたのだ。
衝撃を受けたモンハクは、キョンジャの首筋を刃で刺し貫こうとして……止めた。
剣を捨てると、自身に刺さったキョンジャの剣をより深く突き刺した。

モンハクの行動に驚くキョンジャ。
倒れ込むモンハクに駆け寄り、抱き起こすペクジ。
そんなペクジにモンハクはこれまでの鬼の如き形相が嘘のように優しく微笑む。

一方、「大同契」軍を壊滅させた倭軍は遂に城内へ侵入。
今や、キョンジャとペクジを取り囲むように展開していた。

遺体となったモンハクを抱えたペクジを背に、キョンジャは剣を掴むと倭軍に飛び込んで行く。

まるで、モンハクが乗り移ったかのように剣を奮うキョンジャ。
だが、多勢に無勢。
キョンジャは人の波に呑み込まれて消えた……。

次にキョンジャが目覚めたとき、其処は穏やかな川辺であった。
傍らにはジョンハクが寄り添っている。
川の中には小舟が浮かび、モンハクとペクジが愛を語らっている。
彼らはひたすらに川を下って行く。
その頭上には、雲を抜けた月が煌々と輝いていた―――エンド。

<感想>

本作はモンハクとこれを追う3人の男女の物語です。

時代の流れに乗り、王となる野心を抱いたモンハク。
過去に同じ理想を戴いた者として彼を止めようとするジョンハク。
一族を殺害されモンハクに復讐を誓ったキョンジャ。
モンハクに想いを寄せ、不本意な別れに納得できず彼を追うペクジ。

ジョンハクたち3人の行動理由は、すべてモンハクを発端としています。
つまり、ジョンハクたち3人は奇しくもモンハクの影と言えます。
彼らの中心には常にモンハクがありました。
そのモンハクが時代の波に乗ろうとし、逆に呑み込まれてしまいました。
結果、モンハクを中心に動いていた他の3人にも等しく波は襲い掛かることに。
最後に残されたのは……虚無でした。

ラストの4人の姿は黄泉の国を行く姿でしょうか。
「雲を抜けた月」は泉下にしか無かったのかもしれません。

本作「雲を抜けた月のように」は、活劇と抒情的な映像とに支えられたなかなかの作品です。
叙事詩のような感覚で視る映画と言えそうです。

◆関連過去記事
・モンハク役を演じたチャ・スンウォンさん主演の映画です。
「シークレット」(2010年、韓国)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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