2012年11月23日

「空が灰色だから」50話「飛んで落ちて死んで」(2012年11月22日掲載)ネタバレ批評(レビュー)

第4巻の発売も近付く阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書店)。
ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。

実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

というわけで、2012年11月22日に掲載された50話「飛んで落ちて死んで」のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2012年11月22日「週刊少年チャンピオン」掲載 50話「飛んで落ちて死んで」

友人と談笑しつつ帰路につく女子高生・知香。
そんな知香をずっと待つ人影が……満である。

知香と満は中学校時代からの親友。
今日も満は知香と下校しようとその帰りを待っていた。
ところが、現れたのは友人らしき2人を連れた知香の姿。

「2人で帰ろうと約束したじゃない」
「うん、そうなんだけど……みんなで帰った方が楽しいでしょ」
批難するような満の言葉にも知香は特に動じる様子が無い。
満も合流し、そのまま帰路につくことに。

人の輪の中心で笑いながら語り合う知香。
その輪から離れ、少し後ろをトボトボと歩いて行く満。

なんとか話題に喰らい付こうと必死だが……。
タイミングがずれるし、そもそも知らない話題が多過ぎてどうしてもついていけない。

前を行く知香との間には大きな溝がある。
少し前まではあんなに身近な存在だったのに……。

と、満の歩みが遅くなり知香との距離が大きく離れた。
これに気付いた知香は満へと歩み寄る。

(気付いてくれた!!)
内心の喜びを押し殺す満。

「どうしたの?」
そんな満に声をかける知香。

「別にどうでもいいよ……」
飛び上がらんばかりに嬉しい満だが、素直になれずぶっきらぼうな返事に終始する。

以前ならこれで知香は満の傍に居てくれた。
だが、今は……。

「どうしたの、知香?」
先を行く2人が知香を呼ぶ。

「ん、今行く」
知香はまたも満から離れようとして……満は思わず知香の手を握る。
その手を握り返す知香。
2人は揃って駆け出しかけて……。

「そう言えば、満もカラオケ行くでしょ」
「え……」
知香の突然の誘いに有頂天になる満、すぐにでも頷こうとして。

「他のみんなも来るんだよ」

……凍り付いた。
2人だけではないのだ。

「別にどうでもいいよ……」
思わぬ言葉に何故か傷付いた満はカラオケを断ってしまう。

そのまま、1人で家路につく満。

「どうでもいいよ」
知香の顔が浮かぶ。
足が進む。

「別にどうでもいいよ」
知香との楽しかった思い出が浮かぶ。
さらに足が進む。

「本当にどうでもいいよ」
そんな知香が遠くに行ってしまったことを実感する。
足が止まり……。

「どうでもいいわけないだろ……」
その場で泣き崩れる満であった―――エンド。

<感想>

2012年11月22日掲載の50話「飛んで落ちて死んで」です。

自分の親友であった知香が、見知らぬ誰かの親友になることが許せない満。
何故なら、それは満自身が置いて行かれた気がするから。
何故なら、満自身は変化が怖いから。

人は大人になるにつれ、限られた世界ではなく広い世界を構築するものです。
当然、常に新たな出会いを繰り返します。
これを未知の恐怖ととるか、未知の可能性が広がったととるか。

満は前者と捉えた為に、その場から動けなくなってしまいました。
既にある自身の世界に固執し、それを失うことを恐れた。
変化を恐れ、時間を止めようとした。

しかし、知香は満の所有物ではありません。
当然、知香自身の世界(交友範囲)は広がり続けることに。
結果、満は知香に対し疎外感を抱くようになりました。

無理からぬこととは言え、切ないですね。
でも、この現象。
満ほどではないにしろ、誰もが何処かで経験したことの筈。

たとえば、クラス替え。
仲の良かったあの子が、何時の間にやら新しい仲間を作り、自分とは疎遠になる。
一方で、自分もまた新しい仲間に囲まれていたりするものです。

大学から社会に出ても同じような経験を積むでしょう。
大学時代の友人も生活環境が異なることで疎遠になることも多い。

しかし、だからこそ……クラスが替わっても、社会に出ても、環境が変わっても、続く友人は尊いのです。

満は知香へと心を通じ合わせようと飛んで、しかし届かず落ちて、心が死んでしまいました。
でも、挫けないで欲しい。
知香に新しい友人が出来たように、満にもまた新しい友人を作る機会は与えられているのだから。
このピンチを新たな友人を作るチャンスと捉えて欲しい―――そんな応援歌のように思える作品でした。



……ごめん、これ嘘。
やっぱり、つらいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
無理やん、無理やん、絶対に無理やん。
そんな前向きに生きて行けるなら、そもそも1人に拘らないやん。
シャイな人間だっているやん。
辛い時には殻に閉じ籠ったり、相手に依存することが堪らなく甘美だったりもするわけやん。
だから、無理、無理、無理、無理、無理。

ホンマ、キッツイで。
これ、心をエグルで。
流石、空が灰色だからやで。

うわ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ;あ。

ゴホン……取り乱しました。
満ですが、この回の乙香と相性が良さそうな気がします。

2012年7月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)

いや、改めて考えると気の所為かもしれない。
ハハハハハ……やっぱり、「空が灰色だから」は素敵ですね(^O^)/!!

ふぅ、ちょっと落ち着いた……。

いや、やっぱ無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。
心にくるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。

―――――――1時間経過。

ハァハァハァ……くそぅ、思わぬダメージを負った。
やっぱり、「空が灰色だから」は用法容量に注意すべきだな。
今後も注意せねば。

そんな「空が灰色だから」ですが、4巻が発売決定。
さらに同時発売される「阿部共実短編集(仮)」の正式タイトルも判明。
「大好きが虫はタダシくんの 阿部共実短編集」だそうです。
もうタイトルからしてやる気満々ですな(←ダメージのあまり妙なキャラが出ている)。

そして確実に言えることは短編集には「大好きが虫はタダシくんの」が収録されるってことさ。
これに前回の「あつい冬」もついてくるんだぜ(←まだ、妙なキャラが出てる)。
やっぱり、うわあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・―――51話の感想に続く?

そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。

従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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