2012年10月19日

「名探偵マーニー」第10話「宮島先生の恋」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第10話「宮島先生の恋」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第10話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師、10話より登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話より登場。
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話に登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

マーニーとゆりかが廊下で野球にチャレンジしていた。
と、その現場を教師の宮島小百合に見つかった2人はこっぴどく叱られてしまう。
小百合は女性ながら恰幅の良い、頑健な女性。
学生の間では、男のような性格と評判であった。
もっとも、若かりし日の小百合は線の細い、か弱い女性だったらしいが。
ともかく、今の小百合にきつく叱られれば心が折れてしまうこと請け合いだ。

困ったゆりかは話を逸らすべく「マーニーが探偵をしている」ことを小百合に明かしてしまう。
これを聞いた小百合はマーニーに依頼をすることに。

依頼内容は初恋の相手・舟木真治を捜して欲しいとのものだった。
2人の恋は互いの学生時代にまで遡り、真治とは在学中ずっと交際していたそうだ。
ところが、卒業を控え真治が楽器制作の職人になる為に海外へと渡って10年の間、音沙汰が無いらしい。
海外で頑張っているに違いないと自身を励ましていた小百合だが、最近になって帰国していた真治を目撃したとの噂を耳にしたらしい。

小百合は教師である。
断ることで、探偵調査のバイトを禁止されては敵わないと、この依頼を引き受けたマーニー。
噂の主に確認したところ、間違いなく礼服を着ていたが真治だったと云う。

次に舟木家を訪ねたマーニー。
だが、妙なことに真治の母は小百合の名前を耳にしても頑なに真治について行方を明かさない。
そこへ“真治の妹”を名乗る女性が現れる。
“真治の妹”は真治は帰国していないと説明するが……。

その夜、マーニーは小百合に「どんな真実があったとしても、真治と会いたいか?」と確認する。
これに小百合は「たとえ諦めるにしても、きちんとけじめをつけたい」と答えるのであった。

翌日、“真治の妹”を呼び出したマーニー。
呼び出された“真治の妹”は其処にある人物を見つけ、言葉を失う。
其処で待っていたのは、10年の時を経て昔の面影を失い恰幅の良くなった小百合であった。
そして、小百合も相手の正体に気付く。

そう、“真治の妹”は偽物であったのだ。
その人物こそ、本物の真治だったのである。

10年前、職人となるべく海外に修行に出た真治だったがこれに挫折。
その過程で自身の真実の性が女性にあると目覚め、性転換していたのだ。
礼服を着て男装していたのも、親に頼まれて仕方なくだったらしい。
この事実を小百合に伝えられず、帰国後も連絡をとっていなかったのである。

互いに10年前の面影を失っていた2人。
そのまま立ち尽くしてしまうが……。

数日後、職員室を訪れたマーニーは其処でひそひそ声で電話する小百合を目撃する。
「ええ、出来ればまた会いたいの。そう、是非話したくて……」
相手は真治であろう、ニッコリ微笑むマーニーであった―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。

今回はその第10話「宮島先生の恋」です。
なかなかに深いですね。

当初は「10年1昔、人も変わる」がテーマで「10年を経て、恋愛対象から女性同士の友情へシフトした話」かと思いきや、読み直してみると「真治が女性になった」のは明らかですが、小百合も「男性に近くなっている」んですよね。
つまり、「男女が逆転したものの恋愛は続いている」ともとれます。
どうやら、10年前と精神性自体は変わっていないようですし。
真治と小百合が10年前に交際したのも、当時から「互いの性が入れ違っていることに気付いていた」からかもしれませんね。

というワケで「10年前から続く宮島先生の恋は未だ終わっておらず、これからも続くだろう」的な話だったと理解しています。

そういえば、学生時代の真治と小百合を見て、スタジオジブリの「耳をすませば」を思い出したのは管理人だけでしょうか。
特に職人修行シーンの真治がソレっぽい。

一方、ミステリ的に興味深かったのは「意外な人物が真治だったこと」かな。
「誰が犯人か?」ではなく「誰が真治か?」ということで「フーダニット」ですね。
特にこの点では、“真治の妹”の名前が明かされていないこと、真治の母が“妹”に対して名を呼ばないことなどで読者に対してフェアだったことは良かった。

全体的に今回も満足いく回だったと言えるでしょう!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第2話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第3話「ドッペルゲンガー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第4話「結婚式か葬式か」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第5話「なくしもの」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第6話「侵入者」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第7話「笑う男」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第8話「ペンフレンド」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第9話「モンスター」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

◆関連過去記事
「フランケン・ふらん 最終話(最終回) Dream」ネタバレ批評(レビュー)

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「Phase20」(木々津克久作、「チャンピオンRED 2012年1月号」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「鋏女(チャンピオンRED 5月号掲載)」ネタバレ批評(レビュー)

「ヴァンパイア・アナライズ (チャンピオンRED 7月号掲載)」(木々津克久著、秋田書店刊)ネタバレ批評(レビュー)

これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話に登場。
前花:マーニーの友人。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話で登場。
累:白鳥の友人、1話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師、10話より登場。

【警察】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話で登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:大学生、4話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話より登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。

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