2012年10月26日

『かんがえるひとになりかけ』(近田鳶迩著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.55 2012年10月号』掲載)

『かんがえるひとになりかけ』(近田鳶迩著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.55 2012年10月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

第九回ミステリーズ!新人賞受賞作決定
胎児に憑依した男が体験する不思議な数か月。
「幽霊探偵」の新機軸、第九回ミステリーズ!新人賞受賞作
(東京創元社公式HPより)


<感想>

「第9回ミステリーズ!新人賞」受賞作です。
「第9回ミステリーズ!新人賞」には他に次の2作が佳作として選ばれました。

からくりみしん先生『○の一途な追いかけかた』
天野泡吟(あまのほうぎん)先生『清然和尚と仏の領解』 

「第9回ミステリーズ!新人賞」受賞作発表!!第10回も募集中!!

さて、本作『かんがえるひとになりかけ』。
紛うことなきイヤミスです。
ほんわかした平仮名のタイトルから抱いたイメージに騙されました。
それと「幽霊探偵でもない」ですね。
全体としては、どちらかと言えば批判的な意見になりそうかなぁ……。
もっとも、イヤミスだからどうこうではなく、本作が個人的に趣味ではないだけです。
なので、この空気が好きな人は好きだろうとは思います。

本作、確かに意外性はある。
其処はアリ。
それと、遺伝子上で繋がりがあったからこそ、憑依していたのだろうことも理解できる。
(これらについて詳しくはネタバレあらすじ後の補足を参照)

ただ、正直、彼女の復讐は復讐になっていない気が。
2人は入籍していないから、男にダメージは少ないんだよね。
男自身は別に相手もいるし。
ここがサプライズ込みの結末ありきで進んでいるようでどうにも納得できなかった。
それも含めて正常な判断力を失った彼女が狂気に陥っている描写なのかもしれないけど、この点が物凄くモヤモヤした。
読んでいて特に惹かれる点も無かったし。

このカラーが本作のみのモノか、或いは続くのか。
続くとしたら、ちょっと合わないかなぁ……。
近田鳶迩先生の次回作にも注目です!!

<ネタバレあらすじ>

私は其処で目を覚まし、愕然とした。
私は胎児になっていたのだ。
どうやら、私を殺した女の胎児に憑依してしまったらしい。

私は此処までの経緯を振り返る―――。

幼い頃の私は転校しがちであった。
何処へ行っても、異質な存在として迫害を受ける日々。
ところが、ある転校先で運命の出会いを果たす。

活発な少女に誘われ、私同様に転校生のグループに加わったのだ。
メンバーは私を含め4人。
私と活発な少女以外に、背の高い少年、控えめな少女が居た。

私たちは意気投合すると、それぞれをあだ名で呼び合うことにした。

活発な少女が「トモエ」。
背の高い少年が「ケンシン」。
控えめな少女が「ギンコ」。
そして、私が「ムサシ」である。

私たちは卒業までを楽しく過ごした。
その後、進学した私だったがトモエたちとも疎遠となり、両親を亡くすと、いつしか引きこもりになっていた。
私と周囲の間には大きな溝が出来ていたのだ。

憂鬱な日々が続いた。
そんなある日、私はトモエたちと再会した。
トモエはケンシンと交際していた。
傍目にもお似合いのカップルであった。
私はトモエの美しさに惹かれつつ、これを祝福した。

ところが、意外な事実が発覚する。
ケンシンが二股していたことが判明したのだ。
しかも、相手はギンコ。
さらに、ギンコはケンシンの子供を妊娠していた。

私はトモエの為にケンシンを許せず、彼を責めたがケンシンは聞く耳を持たなかった。
仕方なく、私はギンコを呼び出した。
其処で、ケンシンのことを悪し様に罵り、ギンコに殺害されたのだ。

そう、犯人はギンコであった。
ところが、ギンコは一向に逮捕されないのだ。
それどころか、ギンコに撲殺された私の遺体はバラバラに切り刻まれ臓器が持ち去られていたらしい。
これは、一体どうしたことだろうか……。

やがて、母が出産する日を迎えた。
父であるケンシンもその場に立ち会うようだ。
最近は私の意識もだいぶ薄くなってきた。
どうやら、この胎児自身の意識が強くなってきている様子である。
そろそろ、去るべきときが来たようだ。
この数ヶ月間、私は胎児として母の愛を受けて来た。
そして、子を慈しむギンコの態度に彼女を許すこととした。
では、さらば―――。

私の意識が消失して数時間後、其処では驚くべき事態が発生していた。

「なんだよ、こりゃ!!お前、何をしてたんだ!?」
愛しい私の子供を目にしたケンシンが愚かにも慌てふためいていた。
その瞬間、私は復讐が成功したことを確信した。

でも、それもこれもケンシン自身が悪いのだ。
ギンコと浮気などするから。
そして、ムサシを殺す原因を作ったのだから。

あの日、ケンシンの浮気についてムサシに相談しに出向いた私。
其処でムサシの無惨な死体を発見して泣いた。

ケンシンはこれからも子供を残していける。
現にギンコとの間に子供を為しているではないか。
だが、ムサシはもう子供を作れないのだ。
彼の血は此処で絶たれてしまった。

そう考えた私は、咄嗟にある方法を閃いた。
其処で、彼の臓器をバラバラにして持ち去った。

今思えば、これに時間をかけてしまったことでギンコにはアリバイが出来てしまったことだけが痛恨事であった。
だが、これも後ほど復讐すれば良いだけのことだ。

その後、私はムサシの子供を体外受精した。
確率は半々だった。
どちらに出るか分からなかった。
だが、どうやらその賭けに勝ったようだ。
ケンシンは自分の子供だと信じていたその子が、ムサシの子供であると知り憤怒に囚われている事だろう。

やがて、看護師が私の子供を抱えてやって来た。
その顔には困惑の表情を浮かべている。

(ムサシ。いえ、ジェシイ、あなたの子よ!!)
私は子供を受け取ると、その黒い肌に頬擦りした―――エンド。

捕捉:ムサシの本名はジェシイ。
つまり、ムサシだけは日本人ではなかったんですね。
だから、転校先で異質な存在とされ、断絶していた。
そして、最後にジェシイとの赤ん坊を体外受精した人物はトモエです。
ケンシンへの復讐にジェシイとの子供を身籠ったことになります。
もっとも、復讐だけではなくトモエ自身はジェシイへの好意もあったようです。

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「ミステリーズ! vol.55」です!!
ミステリーズ! vol.55





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