日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season11(eleven)」第5話「ID」(11月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
ある朝、甲斐享(成宮寛貴)が特命係に出勤すると右京(水谷豊)が居なかった。
何処に行ったのだろうか……興味を持った甲斐は鑑識課へ。
甲斐の読みは的中。
右京は鑑識課で米沢(六角精児)と宝石強盗事件の防犯カメラ映像を検証していた。
犯人は宝石店のガラスケースの下に遠隔操作装置付きの発煙装置を仕掛け、その発煙装置から煙が発生している間に3億円相当のダイヤを持ち去っていた。
しかし右京は煙の流れから、外部からの侵入者が居ないことに気付き、内部犯行説を唱える。
其処へ米田からメールが届く。
米田は甲斐の交番時代の同僚であった。
なんでも、甲斐が交番勤務時代に知り合った女子高生・樹里(田中美晴)が呼び出しているらしい。
事件が起こったと主張しているのだ。
こうして、何故か右京も連れ立って事情を確認することに。
樹里によれば、昨夜の晩に階段から転落した男(加藤晴彦)を発見し救急車を呼んだ。
ところが、これは自然な転落ではなく何者かに突き落とされたらしい。
それが証拠に、樹里と友人は階段の上にいる不審な人物を目撃していた。
にも関わらず、転落した本人は階段を踏み外しただけと証言していた。
扱いに困る甲斐だったが、右京は俄然興味を示し、階段から落ちた男に事情を聞くべく病院へ。
右京は病室で男のパスポートを発見。
其処には滝浪正樹と記されていた。
滝浪によれば、独身のシステムエンジニアらしいが。
右京は、男の腕時計を巻く姿を目に停める。
さらに、名刺入れからNPO法人「萌木色の会・源恵美」の名刺を発見する。
滝浪によれば、就労支援を目的とする組織で公式HPの立ち上げを依頼されたそうだ。
不審を抱いた右京は滝浪を自宅マンションまで送り届ける。
郵便受けを覗き込むと、内容物を回収する滝浪。
「どうも、送って頂きありがとうございました」
そのまま、エレベーターに乗り込んでしまう。
右京は滝浪の腕時計の下にあった日焼け跡を気にかけていた。
システムエンジニアと言えば、屋内作業が主である。
あそこまでくっきりと日に焼けるものだろうか。
とりあえず、その場から帰ろうとする甲斐だったが、右京は追跡。
滝浪は自宅と称した部屋の前で立ち尽くしていた。
何故か中に入ろうとしない。
其処へ部屋の住人らしい女性が帰宅する。
その人物の名は富田朱美。
彼女は滝浪など知らないと主張。
ところが、滝浪は朱美は妻だが夫婦喧嘩中の為に知らない振りをしているだけだと反論。
結局、家に戻ろうとはしない。
「あなた本当に滝浪さんですか?」
右京と甲斐が疑問を抱く中、滝浪は「パスポートがある以上、本物なのは間違いない」と主張。
遂には、自分が本物であることを証明してみせると宣言する。
行きつけと言う近所の蕎麦屋を訪れた滝浪。
確かに店主は、滝浪のことを知っていると認める。
だが、名前までは知らなかった。
次に滝浪はレンタルビデオ店へ。
其処で『蝮の兄妹とさらば愛しのやくざ』を借りたと主張する。
レンタルビデオ店店員は履歴から、滝浪のレンタルを認める。
しかし、防犯カメラの映像を調べたところ映っていたのは似ても似つかぬ別人であった。
これを目にした滝浪は「何かの陰謀だ!!」と喚く。
甲斐は「男が滝浪に成りすましている。或いは逆に、頭の打ち所が悪かったのでは」と述べる。
これを聞いた右京は「逆に」の用途が間違っていると指摘。
甲斐は不満を募らせる。
角田から連絡が入った。
滝浪が提示したパスポートが本物であったことが判明。
さらに、富田朱美から連絡が欲しいとの電話があったとの伝言を確認することに。
直後、滝浪が頭を抱えて苦しがる。
救急車で病院に搬送するが……滝浪は検査室から忽然と姿を消してしまう。
逃げられたのだ。
右京は滝浪自身の素性に興味を抱き、米沢に調査を依頼するべく連絡をとる。
当の米沢は、殺人現場に居た。
滝浪正樹の名前を聞いた米沢は多いに驚く。
どうやら、この殺人に滝浪が関わっているらしい。
夜になった。
殺害された人物の身許が判明する。
被害者は、強盗に遭った宝石店の警備員・増田直義。
滝浪の名前が浮上したのは、被害者宅のゴミ箱の中から滝浪宅の住所と名前が出て来たためである。
増田を殺害したのは誰か?
例の滝浪は殺害時刻に右京たちと同行しておりアリバイがあった。
しかし、滝浪はもう1人居る。
そう、レンタルビデオ店で撮影された滝浪である。
事情を確認すべく富田朱美を訪ねた右京たち。
やはり、あの滝浪は富田朱美の同棲相手とは別人だったらしい。
だが、滝浪と右京たちの来訪について、レンタルビデオ店で撮影されていた男―――こちらが“本物の滝浪”であった―――に相談したところ、右京に連絡するよう命令されたのだそうだ。
さらに、“本物の滝浪”宅から盗聴器が発見。
滝浪は部屋の鍵の在処を知っていた、まさか……盗聴していたから?
果たして、これらから右京が突き止めた事実とは!?
“本物の滝浪”宅を盗聴していた滝浪。
彼は宝石店強盗の計画を知り、獲物を横取りすることを思いついた。
では、どうやって横取りを目論んだか?
宝石強盗当日、発煙筒を仕掛けたのは“本物の滝浪”である。
そして、煙が溢れだした。
滝浪と増田、店員たちは一斉に脱出した。
その間、誰も店内へと入った者は居ない。
これは防犯カメラの煙の流れから明らかである。
つまり、煙を目隠しに増田が宝石を盗み出したのだ。
そして、増田は盗んだ宝石を宅配郵便の封筒に入れ、ポストに投函したのだ。
滝浪はこの郵便物を“本物の滝浪”に成りすまし、受け取るつもりだったのだ。
富田朱美の証言によれば、“本物の滝浪”は大阪に行っていたそうだ。
これも、滝浪の仕業だろう。
おそらく、増田の名前で「宝石引き渡しの場所を大阪にしよう」と騙したのだ。
これに騙された“本物の滝浪”はいつまでたっても増田が現れなかったことで、増田に騙されたと思い込み殺害してしまったのだ。
それにしても……滝浪は何故、“本物の滝浪”を盗聴していたのだろうか?
右京は角田にある可能性について調べるよう依頼していた。
銀行口座の情報を調べさせたのだ。
そして、滝浪の口座がマネーロンダリングに使用されていたことを突き止める。
これに、ある確信を抱く右京。
滝浪は右京たちの前で郵便受けを漁っていた。
あのとき、宅配郵便の不在票を回収したのだ。
そして、滝浪のパスポートがあれば、手続き上問題は無い。
既に宝石は滝浪の手に落ちたと考えるべきだろう。
こうなると、NPO法人「萌木色の会」が大きな意味を持つ。
甲斐に調査を指示していた右京。
甲斐によれば、就労困難者を支援する為の組織で実在するようだ。
さらに、源恵美も存在が確認された。
こうして、源恵美を訪ねることに。
翌朝、公園で座り込んでいた滝浪。
その背後から、右京たちが声をかける。
思わぬ右京たちの登場に、滝浪は取り乱すことに。
そんな滝浪に右京は事件の真相を語る。
滝浪の狙いは、“本物の滝浪”に成りすまし宝石入りの郵便を受け取ること。
ところが、階段から転落したことで時間に間に合わなくなった。
其処で、必死に“本物の滝浪”を演じたのだ。
滝浪は立野直人であった。
立野は就労支援を受けていた。
右京たちが滝浪を待ち伏せできたのは、源の協力を得てのことであった。
階段から立野を突き落としたのは源。
後述する事情で滝浪と揉めた為だ。
そして、立野が何故、滝浪を調べたのか?
この謎に、右京たちは驚くべき解答を導き出す。
立野直人……彼こそ正真正銘の滝浪正樹だったのだ!!
滝浪は自身の名義を他者に売っていた。
つまり、“本物の滝浪”を名乗り強盗を行った男こそ、彼から身分を金で買った偽物であった。
立野こと滝浪は金に困り、身分を金に換えたのだ。
右京がこれに気付いたのは、滝浪の銀行口座がマネーロンダリング用に名義だけが1人歩きしていたことからであった。
身分を売り、立野を名乗った真滝浪は自堕落な生活を送っていた。
半ば、捨て鉢になっていたのかもしれない。
そんなある日、NPO法人で活動していた源恵美と出会う。
彼女の支援を受け、就職活動を始めた滝浪。
いつしか、源と恋愛関係となった。
そして、源は妊娠した。
お腹の子供の父親として、源と結婚したいと考えた滝浪だったが肝心の身許が無い。
其処で身許を取り戻すべく購入者を追った。
滝浪の身許を買った男の名は矢島雅彦。
身許を詐称するようだから、矢島は叩けば埃が出る筈だ。
証拠を掴み、警察に通報すれば身許を取り戻せると考えた滝浪は盗聴器を仕掛けた。
盗聴器を使用した滝浪は驚いた。
矢島は増田と強盗を計画していたのだ。
金があれば……常々そう考えていた滝浪は宝石を横取りすることに。
ところが、この滝浪の動きを源恵美は疑っていた。
妊娠した自分を捨てようとしているのではないか……不安に駆られた源は滝浪と揉め、階段から彼を突き落としてしまう。
これが、強盗決行日の前日のことであった。
これにより、滝浪は不本意な入院を強いられ、右京たちに目をつけられる結果となったのである。
真相はこうして明かされた。
滝浪の罪状は「窃盗、盗聴、住居侵入」である。
罪は罪、普段の右京ならば断罪も辞さないと思われたが……。
「自首しますか?」右京は滝浪に更生の道を示す。
「はい……」これに素直に応じる滝浪。
「子供の為にもしっかりしなきゃ!!」甲斐も滝浪を応援するのであった。
その頃、矢島は伊丹たち捜査一課により逮捕された。
樹里たちには右京から事件解決に貢献したご褒美としてパフェが振る舞われることに。
「あたしたちでも役に立ったんだよね〜〜〜」と大喜びの樹里たち。
その夜、甲斐と悦子。
「特命係になってから、逆に事件解決しまくってるよね」
「あっ、今、逆って言った!!杉下右京に突っ込まれるタイプだね」
悦子が洩らした「逆」という言葉に過剰に反応する甲斐。
かなり、気にかかっていたようだ。
同時刻、「花の里」。
「自分が自分であることを証明するのって難しいんですね……」
右京から事件の概要を聴き、感想を洩らす幸子。
「日本は戸籍社会ですからね。外国では国民総背番号制もあるのですが……」
「番号をつけられるのはコリゴリです」
自身の過去を思い出す幸子。
そんな幸子の言葉に微笑む右京―――5話了。
<感想>
シーズン11(eleven)第5話。
脚本はハセベバクシンオーさん、協力として守口悠介さん。
さて、今回はというと……。
偽滝浪、“本物の滝浪”、真滝浪、果たして正真正銘の滝浪は誰か―――「存在証明」とでも言うべき展開でしたね。
サブタイトル「ID」も此処から来ているのでしょう。
何を以て「存在証明」とすべきか、結局のところ今回の滝浪の場合は源恵美とそのお腹の子供こそが彼が生きた証となりそうです。
さらに樹里たちの発言「あたしたちでも役に立つ〜〜〜」。
彼女たちも存在意義を求めていたのだと思います。
今回、事件解決に協力したことでそれを確認出来たことでしょう。
人は人から必要とされることこそが「存在意義」であり「存在証明」となるのでしょう。
テイストこそコメディ調でしたが、本筋自体は「身許売買」などなかなか重いテーマでした。
それを気付かせないよう話を運んだのは良かった気がします。
展開自体もスムーズで分かり易く面白かったと思います。
そして注目すべきは、滝浪が意外に嘘を吐いていないこと。
彼が「自分を滝浪だ」と名乗ったことは事実。
「富田朱美が滝浪の妻」というのも、矢島が滝浪を名乗っていた以上、事実。
嘘を吐いていたのは、突き落とされたことを自身の過失と言い張ったこと。
そして、システムエンジニアを名乗ったことぐらいか。
もっとも、咄嗟にシステムエンジニアとの職業が出て来るとも思えず、これも前職だったりするのかもしれない。
さらに、宝石強盗については、関与すら尋ねられていないし。
もっと、此処を強調してストーリーを展開しても面白かったかも。
それにしても、右京と甲斐の関係は「相棒」と言うよりはやっぱり「師弟」のように見える。
特に今回はそれを意識したのか「逆に」との言葉使いを正すなど、教師っぽい面がクローズアップされていましたね。
でもって、今回は峰秋は登場せず。
代わりに「花の里」登場でした。
次回(第6話)も注目です!!
2012年11月8日追記:
コメントにて「花さん」から「本話がボーダーラインのIFである」とのご指摘頂きました。
・「相棒season9」第8話「ボーダーライン」(12月15日放送)ネタバレ批評(レビュー)
本話は「存在意義」や「存在証明」、人と人との関わりなどの点で「ボーダーライン」と鏡合わせとも言える存在なんですね。
「ボーダーライン」では、柴田が自身の存在意義を次々と奪われて行きました。
本話も滝浪は名前など存在意義を奪われましたが、源恵美とお腹の赤ん坊の存在が彼を証明することで彼を繋ぎ止めました。
人と人との関わりの重要性が彼らの運命を分けた。
滝浪はもう1人の柴田と言えるのかもしれません。
追記終わり
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もちろん滝浪の事を考えたらハッピーENDと手放しでは言えないのですが滝浪は恵美に出会わなければ「ボーダーライン」の被害者の様な終わりを迎えていたのでは?と思いました。
そう思うと人の助けとは凄いモノなんだと思いました。
滝浪の性格もあるのかもしれませんが、結構憎めないキャラだなぁと思いました。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
そうです、それです!!
何か引っ掛かりを憶えていたのですが、まさにそれ!!
確かに別バージョンです。
本話はある意味「ボーダーライン」と鏡合わせの存在なんですね。
「ボーダーライン」では、柴田が自身の存在意義を次々と奪われて行きました。
本話も滝浪は名前など存在意義を奪われましたが、源恵美とお腹の赤ん坊の存在が彼を証明することで彼を繋ぎ止めました。
本話単独よりも「ボーダーライン」と比較することで、より人と人との関わりが映えるような気がします。
(感想)
1、「ボーダーライン」と今回の「ID」は、脚本家が違うにもかかわらず、表裏?の関係の作品になっている時点で、相棒の脚本の質の高さを感じますし、書き手によって、過去作との矛盾が生じるような事がない点も素晴らしいと、改めて思いましたね。シーズン11まで来ると、矛盾点が出ても致し方ないですが、それがないのは驚きです。
2、角田課長が、滝浪(本物の)のパスポートが本物あると告げた時点で、5話のテーマが、「個人情報の不正使用」かなと考えていましたが、「存在証明」というテーマとなると、本物のパスポートは、本来、彼の存在を証明する「公的証明」になりうるのに、ひょんなことから、そうではなくなってしまった。考えれば考えるほど、深いテーマです。
3、ラストシーンで、幸子が「私の場合、運転免許証・パスポートを持っていないので、証明は難しい」という趣旨の発言をしていました。とはいえ、幸子は右京さんに存在証明してもらえますし、カイトは父ではなく恋人に、高校生3人組はカイトたちに、存在証明をしてもらえる。その点を、ラスト数分で提示していた点は、評価できますし、「存在証明」の形を我々に示している様な気がしました。多様であるという事を。
4、管理人さん御指摘通り、カイトと右京さんの関係は、「師匠と弟子」ですね。今まで、言葉の使い方、言動に対する注意が多く見られますよね。今までの相棒シリーズで、このようなシーンはあまり見かけませんでした。4話の英単語の意味を知らない事まで、指摘するのは、細かすぎるかもしれませんね(笑)。
次回予告で、カイトの父が花の里に現れますね。どんな感じになるのか、期待です。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
1.そうなんですよね!!
今回のように作品内でシリーズの別作品をモチーフとしたかのような作品を作ることが出来る……これが11シーズンに渡る歴史を持ち、作品を重ねた「相棒」の懐の深さかもしれません。
2.そうですよね、本来ならば公的な証明となる筈のものが、それだけでは用を為さなくなっている……考えさせられました。
3.人の存在証明はまた人であると言えそうですね。
4.師弟関係だとすると、甲斐の成長譚の側面もありそうです。
次回、峰秋登場で物語が動くのかもしれませんね。気になります(^O^)/!!
IDとはそういう意味ですか。
謎だったんですが解けました
女子高生もそういう意味での登場だったんですね。
加藤晴彦演じる
「タキナミマサキ」を名乗る人物は
一体何者なのか―
序盤これで視聴者をひきつけたのは見事な手法だと思いました。
宝石を盗むアイデアもなかなか良かった。
滝浪が愛する人のために自分の名前を取り戻そうとした、しかし最後?と決めた犯罪で相棒の二人に捕まってしまった。
「どんな犯罪でもいつか必ず白日のもとに晒される」ですね
最後、滝浪が土下座して謝罪してましたけど
本当に2人に迷惑をかけ反省し心から悪いと思っている。
だからチャラチャラしてても憎めないんでしょうね、この人。
次回も楽しみです!!
今日はサッカーでお休みなのでまた来週!
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
序盤から何処に注目すべきなのか謎の焦点が明確だったのは良かったですよね。
物語にすんなり入れました。
宝石盗難が内部犯行であると見抜く右京さんの推理もなかなかでした。
意外な結末も上手くまとまっていましたね。
なるほど、滝浪は軽い印象がありましたが、恵美たちと出会ってからの彼には何処か芯が出来ていたのでしょうね。
そんな滝浪には再起の道が残されています。
またいつかゲストとして登場してくれると面白そうかな。
今日はお休みですが、その分次回がより楽しみですね(^O^)/!!