2012年11月16日

特別読切「あつい冬」(秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

第3巻も好調な阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書店)。
ネット上で話題となっており、1・2巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。

実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

一方、阿部共実先生の短編集発売が迫る中、収録短編の1つ「あつい冬」が「週刊少年チャンピオン」誌上にて先行公開。
というわけで、2012年11月15日に掲載された短編「あつい冬」のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2012年11月15日「週刊少年チャンピオン」掲載「あつい冬」

春恵と梓は幼馴染。
春恵にはある野望があった。
天然ボケの梓に対し、自身がツッコミを極めることで漫才大会で優勝し、お笑い界を席巻しようとのものである。
早速、天然ぶりを発揮する梓に鋭くツッコミを入れ続ける春恵。

(やれる……これなら、天下が獲れる!!)
確信を深める春恵だったが……。

「熱い……」
唐突に梓が呟く。
季節は冬である。
寒い(実際に春恵は寒さを感じている)にも関わらず、梓が何故か真逆のことを口にする。

(よし、ツッコミどころ)
更なるツッコミを入れるべく梓の姿を視界に戻した春恵は絶句する。
梓の身体は、湯が沸騰するように激しく泡立つと、そのまま崩れ落ちてしまったのだ。
残されたのは……梓の衣服だけである。

(えっ、何……)
暫し思考停止した春恵だったが、「またまた、天然やな〜〜〜」とツッコミを続けてしまう。

だが、梓の姿はおろか返事すらない。

さらにツッコミを続ける春恵。
その脳裏には梓と過ごした日々が過っていた。

まだまだ、梓は消えたきり出て来ない。

さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
しかし、当然、梓が戻って来る気配はない。
その間にも、梓との想い出がどんどん浮かんで来る。

さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
さらに、さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
さらに、さらに、さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。
さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらに、さらにツッコミを続ける春恵。

だが、梓が現れる気配は一向にない。
代わりに梓の笑顔が春恵の脳裏を占めて行く。

もう、梓は戻らない……遂に涙腺が決壊した春恵。
大粒の涙をこぼすと、膝から崩れ落ち、その場に座り込んでしまうのであった―――エンド。

<感想>

2012年11月8日掲載「あつい冬」です。

これはヤバい。
何がどうと言い表すことが出来ないのがもどかしいですが、ヤバい。

う〜〜〜ん、無理にでも言葉に表現するとこんな感じ!?

理不尽に……あまりにも理不尽に不可解な事態で親友を奪われた春恵。
あまりの衝撃に現実逃避した彼女が、事実を受け入れるのにはあまりにも長く時間を必要としました。
それだけに、春恵の悲しみや、春恵の中での梓の大きさが分かり、胸に来ますね。
これがまた上手く表現されている。
オープニングの漫才との落差がこれを助長している点も凄い。
あのスタートからこのゴールなんて想像もつかないですよ。
またも度胆を抜かれました。
阿部先生は読者に幾つの肝を用意させるのか、恐るべし……。

そして、いよいよ次回は「空が灰色だから」が再開。
次回にも期待です!!

「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。

従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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