2012年11月24日

『藁の楯』(木内一裕著、講談社刊)

『藁の楯』(木内一裕著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

「生きる価値のない男」を守る。命を懸けて。
「人間の屑」の楯になることを拒否した警察官たちが直面する絶望の果ての最悪とは!?緊迫のエンターテインメント!

2人の少女を惨殺した殺人鬼の命に10億の値がついた。いつ、どこで、誰が襲ってくるか予測のつかない中、福岡から東京までの移送を命じられた5人の警察官。命を懸けて「人間の屑」の楯となることにどんな意味があるのか? 警察官としての任務、人としての正義。その狭間で男たちは別々の道を歩き出す。
(講談社公式HPより)


<感想>

2013年4月26日に映画が公開されるとのことで原作を読んでみました。

【映画情報】木内一裕先生『藁の楯』が映画化!!

物凄くセンセーショナルな内容でした。
そして、きっと読後に虚しさが募ることでしょう。

誰が悪いのか原因もはっきりしている。
その対処法も明らかである。
だが、ルールを守ればその対処法は採用できない。
しかし、放置しておけば被害は増すばかり。
そんな状況下で、ルールを逸脱するだけのさらなるメリットが追加で提示されたとしたら……。
あなたならばどうするでしょうか?
そんな物語です。

任務や正義を通じて自身の無力を痛感させられる主人公・銘苅。
この設定に興味を覚えたら必読です。

抵抗を覚えた方は、かなりマイルドに仕立てたネタバレあらすじにチャレンジしてみては如何でしょうか。
こちらをご覧頂いて興味を持たれたならば本作へGO!!

ちなみに映画版では銘苅役に大沢たかおさん。
白岩役に松嶋菜々子さん、清丸役に藤原竜也さん。
岸谷五朗さん、伊武雅刀さん、永山絢斗さんも出演。
蜷川役に山崎努さんとのこと。

白岩が女性になっていますね。
まさか、あのシーンもこのキャストで再現となるのでしょうか?
要注目です!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
銘苅:主人公、清丸護送を命じられた5人の1人。
白岩:銘苅の同僚、清丸護送を命じられた5人の1人。
神箸:清丸護送を命じられた5人の1人。
奥村:清丸護送を命じられた5人の1人。
関谷:清丸護送を命じられた5人の1人。
清丸国秀:7年前に続きまたも罪を犯した男、10億の賞金首。
蜷川:清丸に孫娘を殺された政財界の大物。清丸に賞金を懸けた。
サライヤ:謎の男、蜷川の依頼を受け手筈を整える。
由里:タクシー運転手、銘苅を助けるが……。


政財界の大物として名高い蜷川、その孫娘が誘拐された。
蜷川は孫娘を救う為ならば金に糸目をつけないと、大金を用意して犯人の要求を待つ。

……ところが、要求は1度も行われることは無かった。
何故なら、犯人の狙いは孫娘自身だったのだから。

蜷川の孫娘は数日後、凄惨な姿で死体となり発見された。
目撃者から犯人の名は清丸国秀と分かった。
清丸は幼児性愛の気があり、7年前にも同様の犯罪を行い逮捕されていた。
罪を償い、社会復帰した直後の出来事であった。
清丸は自身の欲望を満たす為だけに、2人の子供を手に掛けたのだ。
蜷川に配慮した警察は清丸を全力で追ったが、その行方は杳として知れなかった……。

その頃、当の蜷川は憎悪に塗り潰されていた。
孫娘の仇を討ちたい……その為には逮捕では我慢できない。
ありとあらゆる手段を用いても清丸をこの世から抹殺すると心に決めた蜷川。
そんな蜷川に謎の男・サライヤが近付く。
サライヤは多額の報酬と引き換えに蜷川の希望を叶えることを約束するのであった。

それからさらに数日後、三大新聞に清丸の殺害依頼広告が発表された。
「清丸を殺害した者には10億円の報酬を与える。人数や手段は問わない」とされたそれ。
報酬を受け取る条件はただ2つであった。

1.清丸を殺害し、懲役刑を受けた者。
2.あるいは、清丸を殺害したと公的に認められた者。

世間はこれに騒然とした。
内容はもちろん、本来、載る筈の無かった広告が掲載されたことに驚いたのだ。
広告の掲載基準を満たしている筈がないこの広告。
当然、正攻法ではない。
印刷直前に版をすり替えたものと思われた。
関わった人間は全員が罪に問われ、職を追われるだろう。
だが、そこまでしても惜しくないほどの金額が報酬だったのだ。
これを掲載する為だけにどれだけの人間が買収されたのか……蜷川の本気が見て取れた。

さらに、広告には特別サイトのアドレスも公開された。
そこにはリアルタイムで清丸情報が発表されていた。
加えて、清丸情報について問い合わせ窓口まで設置される念の入れようである。

報酬を目的とした清丸狩りが行われるのは、もはや時間の問題であった。
そんな状況の中、清丸が逃走先の福岡にていち早く出頭した。
身を守るための術であったことは明らかであった……。

銘苅は警視庁警護課の刑事であった。
そんな彼は数年前に妻を亡くし、孤独に生きていた。
唯一、同僚の白岩と共に職務に励んでいたが……。

そんな銘苅に清丸護送の命が下された。
日本中が敵となる中で、銘苅と共に護送に挑むのはわずかに4人。
白岩、神箸、奥村、関谷である。、
彼らにはこの緊急時に際し、発砲許可が与えられることとなったが……。

清丸の護送にあたり、幾多の方法が検討され最終的に陸路……それも新幹線による隠密輸送が選択された。
ところが、これが特別サイトに暴露されてしまう。
結果、幾多の刺客に狙われることとなる。

まず、神箸が負傷しリタイアした。
次に、女児を人質に清丸を差し出すよう迫った男を射殺したことで関谷が拘束され、リタイアした。

残るは銘苅本人に白岩と奥村のみである。
ここで車での移動に切り替える。

銘苅は特別サイトにGPS情報が掲載されていることから、裏切り者の存在を確信していた。
白岩か奥村か……悩んだ銘苅は2人のボディーチェックを行おうとする。
これに白岩が反発。
清丸を殺せば、この混乱も終息すると主張し銃を向ける。

ところが、直後に暴徒の奇襲を受け白岩が死亡してしまう。
裏切り者は奥村であった。

奥村は過去に清丸に殺害された少女の事件を担当し、清丸の悪辣さを知り尽くしていた。
その上で、生かしておいては犯行を繰り返すだけと判断し抹殺を考えていた。
其処へサライヤが接触し、仲間に引き込んだのだ。
今回の護送自体も、すべてサライヤのお膳立てであった。

「そいつを殺せばすべてが上手く行く、庇う価値もない奴だ。協力してくれ」
そう誘う奥村。

奥村の考えは正しい―――それが痛いほど分かる銘苅。
だが、白岩を疑い、その結果、彼を死なせてしまった責任を感じた銘苅はこれを拒否。
奥村を放置し、1人清丸を連れ護送を続けることに。

ところが、これすらもサライヤの思惑通りであった。
奥村は清丸が銃を奪い銘苅を人質に逃亡したと報告、出動した警官全員が清丸の射殺許可を持つ状態に至る。
広告にあった条件2の意味は合法的に清丸を抹殺することであったのだ。

もはや、味方が1人もいない。
こんな孤独な状況下で、清丸は自身の行いを悔いるような言葉を洩らし始める。
清丸は母1人、子1人の家庭に育っていた。
清丸は母に自身の懸賞金を渡して最期の親孝行に代えたいと主張。
「懸賞金の一部を母に渡してくれるのならば、銘苅の手で死にたい」とまで口にする。
これを聞いた銘苅は清丸を殺すに忍びなく、彼を守り抜くことを決意する。

銘苅は蜷川の用意した問い合わせ窓口に電話を架ける。
蜷川を呼び出すと「孫娘がこの行為を喜ぶと思うのか!!」と怒鳴りつける。
動揺した蜷川は言葉に詰まると電話を切ってしまうのだった。

少し気分が晴れた銘苅だが、これで事態が解決したワケではない。

矢先、食料を買い出しに出かけたコンビニで清丸が暴徒に囲まれる。
正義の為ではなく、欲望の為に動く暴徒を目にした銘苅は「清丸とこいつらは同じだ」と考える。
苛立った銘苅は容赦なく銃を発砲。
この剣幕に暴徒は蜘蛛の子を散らしたかのように逃走。

と、残された銘苅と清丸に女性タクシー運転手が声をかける。
彼女の名は由里。
先程の様子を見て銘苅に興味を持ったと語る彼女は、銘苅たちをタクシーに乗せて目的地まで連れて行くと約束する。
罠を疑う銘苅だが、他に手はなく由里の提案に乗ることに。

銘苅が感じた疑惑は杞憂に過ぎなかった。
由里は裏表のない快活な性格。
その言葉に癒され、惹かれて行く銘苅。

タクシーの旅も順調に進み、目的地までの距離が少しずつ短くなって行く。
車内の雰囲気も落ち着き、銘苅が安心しきったそのとき、事態が急変した。

ラジオで清丸の母が自殺したとの報が流れたのだ。
息子が与えた影響の大きさに心を痛めた清丸の母は責任を感じ自殺してしまったのだ。

これを聞いた清丸は豹変。
気持ち悪い笑いをこぼすと、由里に襲い掛かる。
事態に気付き、銘苅が取り押さえようとするが遅かった。
清丸の手にかかり由里は死亡してしまう。

やっぱり、こいつは生かしておくべきではなかった……後悔する銘苅。
清丸を殴りつけ続ける中で、ラジオからは新たな報道が。

なんと、蜷川が清丸への懸賞金を取り下げたのだ。
蜷川は銘苅の言葉を聞き、清丸の母の自殺を知り、これ以上の清丸以外の被害者が出ることを恐れ中止を決めたのだった。

遅い、何もかも遅すぎた……無力感を抱く銘苅。
追いついた警官たちに引き離される銘苅だったが、そのまま清丸の護送を続けることに。

だが、懸賞金が消えた以上、清丸を襲う者は居ない。
静けさの中、いよいよ目的地が目前に迫ったそのとき、最後の襲撃者が現れた。

襲撃者の駆る車は、銘苅たちが乗る車に追突。
さらに、襲撃者は逃げ出した清丸を追いこれに刃物で斬りつける。
倒れ伏す清丸。

「懸賞金は消滅したのに何故!?」
そう問いかける銘苅に襲撃者は叫ぶ。

「懸賞金なんて関係ない。7年前の娘の仇だ!!」
襲撃者は清丸の最初の犠牲者の父であった。

この人には清丸を裁く権利がある―――その行動の正当性を認めた銘苅の目の前で父親は逮捕される。
当の清丸自身は一命を取り留めるのであった。

これを見た銘苅は考える。
法はこいつをどのように裁くのだろうか……と。

一方、護送任務を終えた銘苅を映し出すテレビの前で、蜷川は肩を落としていた。
あまりにも不本意な結末であった。
だが、これしか方法が無かった。

そんな蜷川にサライヤが語りかける。
「やっぱり、こうなりましたね。あなたは満足ではないでしょうが私は満足です。では」
返事を求めてなどいないのだろうか、これだけ告げるとサライヤはその場を立ち去る。
残されたのはさらに老け込んだ蜷川の背中だけであった―――エンド。

「藁の楯 (講談社文庫)」です!!
藁の楯 (講談社文庫)





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