ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
父親が被害者で母親が加害者−−。高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。
(双葉社公式HPより)
<感想>
TBSにてドラマ化されるとのことで再読しました。
・【ドラマ情報】湊かなえ先生『夜行観覧車』(双葉社刊)がTBS系金曜23時枠にて連続ドラマ化決定!!
そう、実は既に1度読んでいました。
ただ、その時は特に何か感じることも無かったのですが……。
で、再読してみての感想。
やっぱり、特に何か感じるワケでもないなぁ。
間に挟まれる小島さと子パートはラストのオチに向けて仕掛けられているんだろうけど、それが効果的かと言われるとどうかなぁ。
一応、下記のネタバレあらすじではかなり改変してるので、気になる方は本作をきちんと読まれることをオススメする。
個人的には湊先生の著作で評価すると『少女』や『境遇』よりは上、『贖罪』や『白ゆき姫殺人事件』よりは下との印象。
ミステリというよりは群像劇みたいな印象も受ける。
活字よりも映像化することで映えそうなパターンか。
その点でドラマ化は正解と言えそう。
後はエピソードの取捨選択とオリジナルエピソードの追加に気を配れば、なかなかの作品にはなりそう。
一方、フジテレビ系土曜23時枠にて『高校入試』も放送中。
こちらはいよいよ佳境。
このシナリオ版が『小説 野性時代』にて連載開始されてます。
謎が謎を呼ぶ『高校入試』。
その謎を解くヒントがシナリオ版の中にあるかも……。
興味のある方は本記事下部にある「小説 野性時代」のリンクをどうぞ!!
・湊かなえ先生がドラマシナリオを!!フジテレビ系列土曜ドラマ「高校入試」に注目か!?
<ネタバレあらすじ>
坂の上にある高級住宅街「ひばりヶ丘」。
誰もが憧れる閑静な住宅街である。
此処に住むことはステータスであった。
すんなステータスに惹かれて、引っ越して来た遠藤家の面々。
一家の大黒柱・啓介、その妻・真弓、その娘・彩花。
だが、遠藤家には大きな問題があった。
1人娘の彩花が中学受験に失敗、以来、コンプレックスを抱き癇癪を爆発させると家庭内暴力を繰り返していたのだ。
この暴力にさらされるのは真弓である。
啓介は見て見ぬふりを決め込み、家へ帰ることを苦痛に感じるようになっていた。
そんなある日、遠藤家の向かい側にある豪邸に住む高橋家で事件が起こる。
エリート医師である弘幸が殺害されたのだ。
犯人は妻の淳子とされていた。
ところが、その動機には不明な点が多く、また、高橋家次男の慎司が姿を消したことから、慎司が犯人ではないかとの噂が囁かれるように。
真弓は慎司の失踪当日に1万円を貸しており、逃亡手段を提供した自分にも責任があると悩む。
その一方で、彩花の癇癪はますますエスカレート、日に日に手に負えない状態に。
真弓は彩花を娘ではなく、異物として見るようになる。
他方、高橋家の長女・比奈子は泊りがけで遊びに来ていた親友・歩美宅で事件の報を受け、愕然としていた。
エリートの子女から一転して人殺しの娘になってしまったからだ。
これを契機に比奈子との仲も疎遠になってしまう。
誰も信用できなくなった比奈子は長男・良幸に連絡をとりつつ、真相を知るであろう消えた慎司を追う。
比奈子から連絡を受けた良幸。
良幸は関西の医学部に通うエリートとして期待されていた。
それだけに事件の報を受けて大きく動揺。
そんな良幸の気持ちを交際相手が逆撫でする。
「あなたは大丈夫よね、犯人と血が繋がってないんだもの」と。
実は良幸と、比奈子、慎司は母親が違う。
淳子は後妻で、良幸は先妻の子供だったのだ。
だが、家族は家族である。
交際相手のこの言葉に幻滅した良幸は比奈子のもとへ急ぐ。
比奈子は遂に慎司を捕まえる。
ところが、慎司自身は事件についてまったく知らなかった。
唯一、事件当夜に慎司が癇癪を起していたことが分かる。
慎司は必死に勉強に励むと同時にバスケ部の試合に出られるよう努力していたが、成績が思わしくなく試合に出ることを淳子に禁止されたらしい。
これに憤った慎司が向かいの彩花の影響もあり、癇癪を爆発させたのだ。
淳子は大変驚き戸惑っていたと言う。
それから、弘幸が帰宅し、数時間後に淳子からコンビニへのお使いを頼まれた。
出掛けてみて戻って来ると、大騒ぎになっており怖くなった為に逃げ出したのだそうだ。
途方に暮れる比奈子と慎司。
だが、良幸が合流し「ひばりヶ丘」の自宅へと戻ることにする。
その頃、「ひばりヶ丘」では高橋家が嫌がらせに遭っていた。
住人の留守を良いことに、「人殺しは出て行け」とのビラ、投石などが繰り返されていたのだ。
これを行っていたのは「ひばりヶ丘」草創期から住む小島さと子であった。
さと子は「我々が懸命に築き上げたひばりヶ丘のイメージを損なわせた」として攻撃していたのだ。
さと子の仕業と知らない彩花は自身も便乗しようとして、真弓に止められる。
だが、逆に「やってもないのに疑われた」とこれを攻撃、心が折れた真弓は彩花を手にかけようとする。
この異変に気付いたのはさと子と啓介。
だが、啓介はこれを見て見ぬふりをして仕事に逃げた。
啓介が逃げ出したことに呆れ果てたさと子は自身が介入し、惨劇を止めるのであった。
だが、彩花は態度を改めず真弓を「人殺し!!」と批難。
これに耐えかねた真弓はこれまでの想いのすべてをぶちまける。
しかし、それでも彩花は変わらない。
逃げ出した啓介、実は弘幸が殺害された当日も高橋家で尋常ではない物音を聞きながら逃げ出していた。
啓介は癒しを求めて、仕事の関係で出会った弘樹、歩美兄妹に接触。
歩美が比奈子の親友であると知ると、現実逃避するべく高橋家のビラ撤去に協力を要請する。
こうして、高橋家のビラを撤去する啓介、弘樹、歩美。
それを見咎めたのはさと子である。
「私が与えた罰を何故、邪魔する!!」と揉めることに。
これに歩美が反論。
「比奈子を見捨てたことを反省し、こんな卑怯なことは許せない!!」と主張。
偶然、帰宅しようとしていた比奈子たちがこれを聞きつけ、比奈子と歩美は和解する。
一方で良幸は事件当夜に何が起こったのかをはっきりさせようと、事情を知っていそうな啓介、さと子、真弓を呼ぶ。
これに何故か物見遊山気分の彩花も加わり、事件当夜の情報が整理されることに。
啓介によれば、弘幸と淳子は慎司の成績の件で会話を交わしていたらしい。
「やっぱり、慎司には無理だったんだ」と弘幸が語れば、淳子はそれに反論していたそうである。
特に殺害に繋がりそうな会話ではない。
だが、これを聞いた彩花は「坂道病」だと呟く。
通常の人は平地に立っているが、何かあれば坂道に立っているような精神状態になる。
その状態で些細なきっかけが与えられれば、後は坂を転がり落ちるだけだと口にしたのである。
これに良幸たちは事件の真相を察した。
だが、事件をだしに家族仲の再生を図る遠藤家の面々やさと子には知られたくない。
そのまま、辞去を促すことに。
良幸たちが気付いた淳子の動機は「先妻に負けたと思い込んだ」ことであった。
あの晩、弘幸は「慎司には無理だ」と断じた―――諦めたのだ。
これに先妻の子である良幸よりも慎司が劣ると判断されたと感じた淳子はコンプレックスを刺激され夫の殺害に及んだのである。
だが、この真相は誰も救わない。
其処で良幸たちは死人に罪を背負って貰おうと考えた。
数日後、新聞記事には「良幸が限界に悩む慎司を責め立て精神的に追いつめた為に、我が子を救おうとした淳子が非常手段を採用した」とのストーリーが掲載されることになった。
一方、遠藤家。
一度は娘の殺害を考えた真弓だが、高橋家の事件について世話を焼くことで多少、冷静になることが出来た。
彩花については今後も衝突し続けるのだろうが、それはそれで仕方がないと納得するのであった。
そして、小島さと子。
独立した息子を溺愛する彼女だが、当の息子は実家に戻ることもない。
孤独な魂を抱えつつ、「ひばりヶ丘」という場所自体に癒しを求めていた。
やがて、息子が帰って来る日を夢見て、「ひばりヶ丘」を守らなければならないのだ―――エンド。
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