日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season11(eleven)」第10話「猛き祈り」(12月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
・「相棒season11(eleven)」第9話「森の中」(12月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
何者かに暴行を受け、記憶喪失になってしまった甲斐(成宮寛貴)。
一体、甲斐の身に何が起こったのか?
右京たちは捜査を開始した。
119番通報した女性が「まろく庵」にいる伏木田真智子(柴本幸)であることが声から判明。
さらに、看護師から提供された甲斐が所持していた毛髪が人毛である事も分かる。
やはり「まろく庵」の人間たちが事件に関わっていることは間違いなさそうだ。
伊丹(川原和久)らは入院中の甲斐に「まろく庵」の面々の写真を見せ記憶を探る。
庵主である伏木田は既に死亡しているらしい。
生方豊茂(山本學)は保険金殺人、榊大輔(相葉弘樹)は薬物の常習者、三隅信二は窃盗で逮捕歴があった。
これに伏木田の娘・真智子、長尾恭子が居る。
もう1人、坂口(ウダタカキ)を加えた6人が「まろく庵」の住人である。
甲斐は坂口の写真に反応を示す。
実は、坂口が甲斐の病室に現れていたのだ。
だが、坂口は甲斐が記憶喪失だと分かると立ち去ったらしい。
危く口封じされるところだったと推測する伊丹。
しかし、それ以外には目新しい情報は出て来ない。
甲斐は「鈴の音が聞こえた」と繰り返すのみである。
一方、右京(水谷豊)は「まろく庵」周辺で聞き込みを。
近くの商店の女店主の話では、伏木田は病を患い、医師に往診して貰っていたようだ。
女店主によれば、半年前の伏木田は骨と皮だけのように見えたらしい。
目撃地点付近を調べる右京。
一方、伊丹たちは家宅捜索令状をとり「まろく庵」へと乗り込む。
長尾恭子の髪の毛も回収。
その頃、真智子は恭子に「辛い思いをさせるわね」と告げていた。
生方にも「これから大変な仕事が待っている」らしい。
右京が伊丹らに合流。
すると、生方が「甲斐さんを半殺しの目にあわせたのは私です」と自供を始める。
生方によれば「甲斐が恭子を襲ったので助けようとして暴行を加えた」らしい。
これを恭子と真智子も認める。
恭子の首には甲斐がつけたとされる傷跡が残されていた。
こうして、甲斐は被害者から一転、加害者の役割をも振られることに。
記憶を喪失している甲斐だが「茶髪の女性の首を絞めた様な気がする」と供述。
さらに、甲斐の手に付着していた髪の毛が恭子の物と合致。
その頃、中園からこの報告を受けた内村は「聞かなかったことにしよう」と主張。
中園の顰蹙を買う。
その夜、「花の里」を訪れた峰秋。
右京に対し「甲斐の不行状」を嘆く。
これに対し、右京は「甲斐が恭子を襲ったのは事実だろうが、何か理由があった筈だ」と見解を述べる。
翌日昼、甲斐は「森ではなく、車の中で首を絞めた」と語り出す。
これを聞いた右京はある推理に行き着く。
一方、伊丹たちは生方を連れ現場検証を開始する。
其処へ角田たちと共に右京も登場。
右京は「甲斐が暴行を受けたことは事実」だが「理由が異なるのではないか」と主張。
さらに、「甲斐が恭子の首を絞めたことにも意味がある」と語る、。
右京は、真智子が通報者であり発見地点までワゴン車で運んだと指摘。
この甲斐を運んだワゴン車に恭子も同乗していたと推理する。
甲斐が恭子の首を絞めたのは、このときだ。
生方たちに暴行された甲斐は意識を失い、目覚めた際に目の前に居た恭子に飛び掛かったのだ。
目の前の恭子を甲斐が暴行犯と誤認したからであった。
さらに、「まろく庵」の庵主が死んでいないと続ける右京。
これに角田も同意する。
角田は右京に依頼され調べ物をしていたのだ。
角田は「まろく庵」付近の医者と葬儀社を調べたらしい。
しかも、役所に死亡届も提出されていない。
右京はこれを受けて、甲斐が山を訪れたその時までは伏木田は生きていたと断言。
何故なら、甲斐が鈴の音を聞きつけたからだ。
伏木田は即身仏になろうとしていたと明かす右京。
鈴の音は生存を確認する為のもの。
竹筒は空気を確保するもの。
新聞記事には世界で起こる事件が記されていた。
伏木田は世界の平穏を願い即身仏になろうとしたのだ。
伏木田が半年前に骨と皮だけの身体になったのもこの準備だった。
即身仏は現行法上では自殺にあたる。
つまり、真智子たちは自殺幇助になるのだ。
さらに、即身仏化した伏木田を掘り出す行為は「墳墓発掘」の罪になる。
生方たちは「それは構わない。だが、伏木田の願いを無にしないでくれ」と頼み込む。
これに対し右京は「法律に触れる行為は見過ごせない」と断言。
生方は「おんなじですねぇ」と憎々しげに吐き捨てる。
鈴の音を手掛かりに即身仏に気付いた甲斐も、同じ対応をしたのだ。
甲斐は「気持ちは分かるが、許すことは出来ない」と伏木田を掘り起こそうとしたそうだ。
それを止めようと、生方たちが追い縋り暴行を加えたのだ。
しかし、事態に気付いた真智子が「生方たちを人殺しには出来ない」とこれを制止し、路傍に瀕死の甲斐を放置すると通報したのである。
伏木田の意志を守るべく、甲斐を殺そうとした―――右京は弾劾する。
空気口となった竹筒が回収されていたことから、伏木田が既に死亡していると推理する右京。
これを認める生方たち。
伏木田が死亡したのは、甲斐を襲撃した夜の出来事だったと言う。
生方たちは息の絶えた伏木田を埋めたそうだ。
生方は「伏木田が今は何処に埋められているか……知っていても教えない」と主張する。
そんな生方に「甲斐の記憶が戻れば、伏木田の居た場所も分かるだろう」と伝える右京。
だが、生方はそんな右京をせせら笑う。
その頃、病室に横たわる甲斐の前に死亡した筈の伏木田が現れる。
「申し訳ありませんでしたねぇ」呟きながら手をかざす伏木田。
甲斐の顔がどんどん綻んで……。
悦子が病室に戻って来た。
「何を言ってるんだか、俺たちの出会いは渋谷の合コンじゃねぇか」唐突に語り出す甲斐。
それは前回に悦子が語った2人の馴れ初めが嘘だったことを告げるもの。
つまり、甲斐の記憶が戻ったのだ。
気付いた悦子は甲斐の胸に飛び込んで行く。
数時間後、右京や伊丹たちも甲斐の病室に集まっていた。
伏木田が甲斐のもとを訪れたと聞かされた伊丹たちは夢だろうと笑う。
ところが、右京は「甲斐は伏木田と一面識もなく、その顔を知らない」点を指摘。
そんな甲斐が伏木田の顔を判別出来ている以上、夢ではなく事実だと主張。
またも幽霊を見たと思われる甲斐に嫉妬まじりの羨望を露にする。
峰秋に甲斐の回復を伝える右京。
峰秋は「甲斐にとって。今回の事件は刑事として潮時ではないか」とぼやくが、右京はこれを否定する。
生方たちは傷害で逮捕。
殺人未遂の容疑もかかっている様子。
真智子と恭子は自殺幇助の罪に問われたが、見送りになりそうだ。
数日後、あの森へと足を運んだ右京と甲斐。
甲斐の記憶を頼りに伏木田の「かろうと(墓所)」を捜すが、その記憶だけがぽっかりと抜け落ちているらしい。
其処へ真智子が。
「3年3ヶ月経過したらまた来てくださいね」
それは、即身仏となった伏木田を掘り出すときである。
ニッコリと告げると歩き去る真智子。
「3年3ヶ月が過ぎるまでは出て来ないでしょうねぇ」
残された右京はポツリと洩らす。
翌朝、甲斐が負傷を引き摺りながら特命係に復帰。
其処へ伊丹が訪れる。
今回は甲斐が被害者だった為に共同戦線を張ったが、今後はないと主張する伊丹。
去り際に「2度とキノコ狩りに行くんじゃねぇぞ!!」と捨て台詞まで残す。
これを聞いた甲斐は「あんな人なんですか、伊丹さんって」と呟く。
「ええ……」とニコヤカに応じる右京―――10話了。
<感想>
シーズン11(eleven)第10話。
脚本は輿水泰弘さん。
ちなみに2012年最後の放送になります。
さて、今回はというと……。
9話「森の中」に続く、前後編の後編です。
流石に前編ほどのワクワクドキドキ感はありませんでしたが、後編もなかなか良かったですね。
前編の方が面白く感じた理由は「即身仏」情報を事前に掴んでいたからでしょう。
こういうときは、事前のネタバレも善し悪しですね。
でも、こればかりは自分の意志でネタバレを目にしたので仕方が無いところ。
そんな10話「猛き祈り」ですが、少なくとも「相棒」らしさがフルに発揮されていました。
「幽霊屋敷」に続き、非科学を追い求める右京さんの姿が視られたのは良かった。
現状のところ、「シーズン11」ベストか。
「まろく庵」の面々は狭い世界で生きて行くうちにその世界が全てとなってしまっており、排他的になり過ぎたと言えなくもない。
集団が暴走するケースを描いた作品と言えるでしょう。
特に、伏木田の理想の為とはいえ、甲斐を殺そうとした上であらぬ罪を着せるのは許されることではない。
真智子と恭子は甲斐をあらぬ罪で陥れようとしており、偽証罪や虚偽申告罪は適用されないのだろうか?
ここらは気になるなぁ……。
一方、テーマも深く重いものでした。
それは、人が抱える矛盾について。
平和を祈ろうとする伏木田の願いを守ろうとしながら、甲斐を殺そうとする生方たち。
平和を願う手で人を殺す―――明らかに矛盾する行為です。
注意:ここから管理人なりの思想を述べて行きます。
あくまで管理人独自の解釈なので、注意!!
伏木田が目指した仏の理想は「衆生、皆同じ」である筈。
つまり、仏の前では「どんな命も理想も同じ重さであるべき」との思想。
人であろうが、動物であろうが命の重さは同じ。
同様にどんな理想も個人の命と等価値となる。
だからこそ序列が無意味になり、意志が統一され一律的な平和を構築出来るようになる。
これが価値観による世界平和の理想像である筈です。
何故なら、すべて同じ価値なのだから。
価値感すらも無意味となるでしょう。
すべて同じことなのですから。
つまり、伏木田の視点からは「伏木田の理想」も「甲斐の生命」も同じ価値である筈です。
どちらかなど選べない。
ところが、生方たちは「自分に近しい伏木田の意志」を尊重し、「親しくない甲斐」を抹殺しようとしたワケです。
だが、選んだ筈の伏木田の意志に従えば「甲斐を殺すこと」どころか「甲斐を罪に落とすこと」も出来ない筈なのに……。
これは大いなる矛盾と言えるでしょう。
さらに、甲斐への暴行を真智子が止めた理由も「甲斐の命を奪うことが父の理想に反する」からではなく「生方たちを人殺しにしたくないから」とこれまた「親しい生方たちを慮って」のものでした。
ともに、明らかに伏木田の意志に反しており「師の心、弟子知らず」と言えそう。
だからこそ、最後に不肖の弟子の尻拭いに伏木田が甲斐のもとを訪れたのでしょう。
ラストにて伏木田が甲斐の前に現れた事実は既に伏木田が人の身を解脱したことを示しているのでしょうか。
だが、同じく仏が重視するであろう「人間愛」の観点に立つと、生方たちの行為も全否定出来ない点がある。
親しい恩人や仲間を思いやるのは人の根本だったりするからだ。
それは同様に伏木田にも言えることで、仏になるからには執着も捨てねばならない筈。
その点、「即身仏」になるとの希望は執着にはならないのかと疑問に思ったり。
そもそも、平和を願うこと自体がある種の欲望とも言えないこともないワケで。
あ〜〜〜難解だ!!
結局、立場により見解は異なることになるのか?
ここらが人の身の限界なんだよなぁ……。
ちなみに今後の放送予定について入手した情報を。
毎年恒例元日スペシャルですが、今年は11話「アリス」となるそう。
脚本は去年も「ピエロ」にて元日スペシャルを担当した太田愛さん。
公式ツイッターによると「元日スペシャルは、テレビ朝日開局55周年記念作品。57年前の未解決事件の謎に迫ります。あの『不思議の国のアリス』に隠された秘密とは? 壮大なスケールでお送りします。元日よる9時!」とのこと。
『不思議の国のアリス』ということで、やはりドジスンか?
「幼児の神隠し」も絡んできそうですね。
「小児性愛」「児童虐待」もテーマか。
さらには、今年も相棒パンが発売!!
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