2012年12月28日

「名探偵マーニー」第21話「ラッキーバード」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第21話「ラッキーバード」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第21話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話に登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
謎の白い塊:マーニーたちの通う学園内で発見された何か。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

今日も今日とて、引き受けた依頼の結果を白鳥へと報告していたマーニー。
其処へ、女子生徒の悲鳴が聞こえて来る。

「何事?」
驚くマーニーたちは声の発生源である窓の外を確認。
ところが、走り去る女子生徒の後ろ姿以外に特に珍しいものはない。

「不審者でも出たんですかね?」
「さぁ?」
何が起こったのか分からないが特に気にする必要もないだろうと話題を変えた白鳥。
ところが、この事件がマーニーはもちろん白鳥にも影響を及ぼすことになるとはこのとき誰も思わなかったのである。

その夜、マーニーは昼間の悲鳴について思索に耽っていた。
何かあったようだが、それが何かは分からない。
学園掲示板やSNSなどにも特にそれらしい記述は無い。
強いて挙げれば「白い何か」についての話題がちらほら出ていたことだろうか。

同じ頃、教師の宮島小百合は不意の残業を強いられ不貞腐れていた。
早く帰りたい―――そんな小百合だが、恋人である舟木(10話で登場)との楽しい時間を想像し耐えていた。
「舟木君との時間を考えると〜〜〜後略(宮島氏のプライベートにつき割愛させて頂く)」
したがって、気分転換に打った舟木へのメールが思わず少女趣味になったとしても誰が責められるであろうか。

メールを打ちつつ、心を弾ませた小百合。
少しやる気が出て来たところで、校内の巡回へと出向く。

……と、見慣れた光景の中に、見慣れぬ白い塊が。
「なんだろう?」と不審に思いながら近付くと……。

翌朝、マーニーが学園内で発生していると思しき異常事態について白鳥に報告していた。
なんと、小百合が学校を休んだのだ。
マーニーが舟木に確認したところ「何か分からないがおそろしいことが起こった」らしい。
これは捨て置けない事態だ。
以前のモンスター騒ぎ(9話の事件のこと)の例もある。
こうして、早急に対処すべく白鳥からマーニーへ依頼が為されることに。

早速、SNSを駆使して情報収集に励むマーニー。
その甲斐あって、人間の頭部大ほどもある謎の白い塊を廊下の隅に発見する。
どうやら、これが原因のようだ。
遠目には羽毛のように見えるソレ。

対応について白鳥に相談したところ、白鳥自ら確認することに。
白いソレへ、大胆不敵に歩み寄る白鳥。
その目の前で、塊が動き出した。

羽を広げ、大きく羽ばたくソレ。
鶏?―――だが、その確認は能わない。
鶏ならば、トサカを確認すればよい。
だが、ソレには肝心のトサカどころか頭部自体が存在しなかったのだ。
何故なら、その鶏は首から先が落とされていたのだから。

数分後、混乱の極みの中、何をどうしたのか首なし鶏を捕獲した白鳥とマーニー。
マーニーの調査により、過去にも同様の例があったことが確認される。
なんでも、食卓に並べる為に首を落とした鶏がそのまま生き続けたのだそうである。
この鶏も同様の理由でこうなったのだろう。
夜の闇の中、これを目にすれば小百合が寝込むのも当然と言えた。

今後についてどうするか―――悩むマーニーに白鳥は飼い主が見つかるまで自分が引き受けると請け負う。
それも生徒会長の役目なのだそうだ。

おそろおそる抱え上げると自宅に連れ帰る白鳥。
食事については首から直接食道へ栄養を与えれば良いらしい。
白鳥はこれに従って、鶏を育て始める。
食事も一緒、寝る時も一緒。
そのうち白鳥は鶏に愛情を抱くように。
やがて、「ラッキー」と名付けると愛玩するまでになった。

数日後、白鳥はマーニーに「ラッキー」を自分が育てると告げようとする。
ところが、そんな白鳥に意外な報がもたらされた。
マーニーがネット回覧を通じて飼い主を捜し当てたのだ。
言い出すことも出来ず、引き渡す日時を決める白鳥。

引き渡し当日がやって来た。
校門前で待ち合わせした白鳥たち。
マーニーは鶏の飼い主を白鳥に引き合わせる。

飼い主は普通の気さくなおじさん。
なんでも、娘の誕生日に調理しようとしたらこんな事態になったらしい。
今度こそ―――と意気込む飼い主に苛立ちを覚える白鳥。
遂に「ラッキーはお宅の鶏ではありません。よく似た別の鶏です」と引き渡しを拒んでしまう。

もちろん、「こんな鶏がそう居るワケがない!!」と飼い主も譲らない。
そうこうするうちに、首なし鶏は2人の手を離れ校外へ。
そのままトラックの幌の上に座り込むと、動き出したトラックと共に何処かへ行ってしまう。

これを目にした白鳥は力なく崩れ落ちる。
その様子に流石に気まずくなったのか謝罪する飼い主。
だが、白鳥は動かない。

「あの状態で生きている鶏ですよ、また何処かで会えますよ」
俯いた白鳥の背中へと、根拠のない励ましを行わざるを得ないマーニーなのであった―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。
コミックス1巻も発売中です!!

今回はその第21話「ラッキーバード」です。

気丈で完璧に見える白鳥の意外な弱さ(人間らしさ)が窺える物語でしたね。
いつの間にか、情が湧いてしまったのでしょうか。
不意に現れた「鶏」は、ひとときの温もりを与えると不意に去ってしまいました。
寂しい結末ではあります。

ただ、9話「モンスター」や10話の舟木が登場したように、いつかまた「彼(彼女?)」も再登場する機会があるかもしれません。
そのときこそ、再会となるのでしょうか。

そして、これが単なる迷い猫や迷い鶏ではないところが、如何にも「マーニー」(ひいては木々津先生)らしさと云うべきか。
さらに、猫でも犬でもなく鶏だったのは、対象が“白鳥”だったからかもしれないですね。

次回も期待出来そうです。

ちなみに、上にもある通りマーニーのコミックス1巻の発売が判明。
これでいつでもマーニーの活躍を読むことが出来ます。
興味のある方は本記事下部アマゾンさんリンクよりどうぞ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話から20話まで(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)まとめ

◆関連過去記事
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これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話に登場。
前花:マーニーの友人。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話、16話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
累:白鳥の友人、1話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話に登場。
鈴村蝶子:カーディガンズの1人。12話で登場。
黒屋明彦:雪彦の双子の兄、社交的。13話に登場。
黒屋雪彦:明彦の双子の弟、内向的。13話、20話に登場。
露島:新聞部部長。自腹でニュースサイトを運営し多大な影響力を持つ。16話に登場。
吉沢:新聞部員の1人。16話に登場。
舞城天:マーニーと同じ学校の生徒。17話に登場。
マキちゃん:本名は真希田、マーニーの級友。

【警察】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話で登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:大学生、4話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
光輪:往年のヒーロー「ブリット」を演じた俳優。現在では病を患っている。11話で登場。
鈴村都:蝶子の妹。12話で登場。
マックス鞠野:高名なマジシャン。効果を最大限に発揮するマジックがモットー。18話より登場。
真希田流:マキの姉。18話より登場。
玄武:大学生。日本有数のセレブで白鳥の知人。19話より登場。
宝蔵院はるか:大学生。玄武のフィアンセ。玄武同様にセレブ。19話より登場。
市長:マーニーとロイドが暮らす地域の市長。20話より登場。
阿刀孟:世界的に著名なアニメクリエーター。20話より登場。
瀬尾俊幸:阿刀のマネージメントを担当していたスタッフ。20話より登場。
ラッキー:白鳥が保護した「首なし鶏」。21話に登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。
安崎良則:映画会社の社長。11話で登場。
安崎みどり:良則の娘。故人。11話で登場。
ゆりかの祖父:幽斉の中学時代の同級生、緊急入院してしまう。14話に登場。
河野幽斉:祖父の中学時代の同級生。同窓会の主催者。14話に登場。
幽斉の妻:幽斉とは犬猿の仲。14話に登場。
甲本:宮島の大学時代の同級生、宮島曰く「オタクっぽい人」。15話にて登場。
相葉:宮島の大学時代の後輩、宮島曰く「他人の恋人を寝盗る男」。15話にて登場。
甲本の元恋人:相葉に殺されかけたが……秘密が!?15話にて登場。
天の大叔父:年嵩の紳士然としたドイツ人。17話に登場。
はるかの母:はるかの母。健康志向であった筈だが……。19話より登場。

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