2013年06月17日

『三人の女神の問題』(法月綸太郎著、光文社刊『犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題』収録)

『三人の女神の問題』(法月綸太郎著、光文社刊『犯罪ホロスコープII 三人の女神の問題』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

六星座に潜んだ六つの事件。冴えわたる推理は、夜空の星のごとく輝く。

10年前に解散した女性3人組アイドル・トライスター。
彼女たちが所属していた事務所の元社長・折野が他殺死体で見つかった。

犯人と目されたのは、元ファンクラブ会長の安田。
安田は自身のブログに折野殺害をほのめかす声明文をアップした直後、服毒自殺していた。

しかし捜査を進めるうち、安田の共犯者がトライスターのメンバー内にいたことがわかる。モッチ、メグ、アズミン、三人の女神のうち、いったい誰が犯人なのか――。(表題作)

名探偵・法月綸太郎が六つの難事件に挑む本格ミステリ後編!
(光文社公式HPより)


<感想>

『キングを探せ』にて『本格ミステリ ベスト10 2012』1位を飾った法月綸太郎先生の短編集です。

2013年(2012年発売)ミステリ書籍ランキングまとめ!!

法月綸太郎先生と言えば『都市伝説パズル』が管理人の中で短編ベスト3に入る作家さん。
それだけに期待していました!!

なお、本作は『犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題』に続く第2弾となっていますが、レギュラーメンバーと「星座をテーマに据えている」こと以外に特に繋がりはないので安心して読める点も良し。

そんな本作の収録作は次の6編。

『宿命の交わる城で』
『三人の女神の問題』
『オーキュロエの死』
『錯乱のシランクス』
『ガニュメデスの骸』
『引き裂かれた双魚』

中でも、表題作である『三人の女神の問題』と『宿命の交わる城で』は傑作。
其処で今回は『三人の女神の問題』をネタバレ書評(レビュー)。

本作では、既に犯人の正体は判明しています。
しかし、「誰が、犯人を動かした黒幕なのか?」がポイント。
あえて、「犯人」と「黒幕」とぼかしていますが、その意味は本作を読めば分かる筈。
中盤に明らかになる事実により、反転する構成は見事!!
ラストを見れば分かりますが、犯人を動かした黒幕―――その真の正体はあの人ではなく、「トライスター」それ自体だったんだろうなぁ……。

ちなみに『宿命の交わる城で』はイタロ・カルヴィーノの『宿命の交わる城』をモチーフに、『キングを探せ』のパイロット版的な作品でもあるので、オススメ。

安心して、論理の海に耽溺せよ!!

なお、ネタバレあらすじでは意図的に改変している部分があります。
改変部分は是非、本作を読んで確認してみてください。

これに興味を持たれたら『法月綸太郎の功績』(講談社刊)収録の『都市伝説パズル』も是非!!
あれも凄い!!

<ネタバレあらすじ>

10年前、女性3人組による人気アイドル・トライスターが解散した。
モッチ、メグ、アズミンからなる3人はファンクラブ会長・安田からすれば女神のような存在であった。
そう―――たとえ命を投げ出しても惜しくないほどの。

そして、10年後。
トライスターが所属していた事務所の元社長・折野が刺殺死体で見つかった。
明かな他殺である。

犯人は、ファンクラブ会長の安田。
安田は、自身のブログに折野殺害をほのめかす声明文をアップすると、各メンバーに電話し犯行を仄めかした直後に服毒自殺していた。
この事件に法月綸太郎が関わることに。

どうやら、折野がトライスターの再結成話を持ち掛け詐欺を働いていたらしい。
メンバー自身も被害に遭ったそうだ。
これに義憤を感じた安田が止めるべく追っていたのである。

安田が折野を殺害したのは状況から間違いない。
だが、不審な点が残されていたことから、法月警視は安田に犯行を指示した人物が居たと考える。
安田に指示できるとなれば、元トライスターのメンバーであるモッチ、メグ、アズミンの誰かに違いない。
安田が3人に電話したのは殺害成功について連絡を入れたのではないか?

安田の電話順に注目する綸太郎。
安田は折野の殺害後、モッチ、メグ、アズミンの順に電話を架けていた。

モッチは現在も芸能活動を続けており、電話に出ることは出来なかった。
そこで留守番電話にメッセージが吹き込まれていた。

続いてメグ。
メグは引退後に経営者に転身し成功していた。
安田はメグと通話すると、すべてを打ち明け自殺を仄めかしたそうだ。

ここから次のアズミンの間に10分ほどの時間を挟む。
この間にメグはアズミンに連絡を入れ、安田を引きとめて欲しいと依頼した。

アズミンは田舎に戻り、実家の旅館を継いで女将になっていた。
安田からの電話を受けたアズミンはメグのアドバイスに従い、生きるよう説得を行った。
だが、安田には聞く気がなく、すぐに切られてしまったそうだ。

メグは安田のもとへと向かい、電話を切られたアズミンは警察に通報し事件が発覚した。
これが事件のあらましである。

果たして、3人の女神のいずれが安田に犯行を指示したのか?
推理を巡らせた綸太郎は、別の可能性に思い当たる。

折野には独断で詐欺を行えるほどの度胸は無かったのだ。
つまり、何者かの指示で動いていたことになる。
此処に綸太郎は、捜査の仮定が真逆であったことに気付く。

確かに、天空にはさそり座のアンタレス(安田)とオリオン(折野)が共にあることはない。
これから、蠍がオリオンを殺害したとの神話に繋がった。

だからこそ、さそり座のアンタレス(安田)がオリオン(折野)を殺した物語がすんなりと受け入れられたワケだが、折野こそが安田を殺そうとしていた可能性は無かったか?
其処で、安田が折野を返り討ちにしたとしたら……。
だからこそ、安田の手には自殺用の毒物が残されたのだ。
本来ならば、ナイフと毒物を両方用意する必要は無い。
おそらく、折野が安田を自殺に見せかけ服毒死させようとナイフで脅し、逆に殺害されてしまったのだ。

動機は、折野に再結成詐欺を命じた黒幕がトライスターの元メンバーの1人だとしたら筋が通る。
折野の詐欺に義憤を感じた安田はこれを追っていた。
安田から事実が明るみに出ることを怖れた黒幕は折野を使い殺害を目論んだのだ。

ところが、折野は失敗し安田に殺害されてしまった。
しかも、この際に黒幕の存在を安田に告げたのだ。

安田は半信半疑ながらも確かめようとした。
其処で3人に電話することで黒幕を確認したのだ。
この電話で、安田なりの確証が取れた為に女神を庇うべく自殺したことになる。

問題は此処からだ。
トライスターのメンバー3人のうち、一体、誰(あるいは誰と誰)が折野の黒幕だったのか?

再結成詐欺の被害、その対象はメンバー自身であった。
となれば、1人よりも2人が被害に遭っていると考えられる。
標的1人を黒幕2人で狙うよりも、標的2人を黒幕1人で狙った方が儲けが大きいからだ。
となれば、おそらく黒幕は1人だろう。

黒幕の正体―――それは安田の電話順が明らかにした。
安田が電話を架けたのはモッチ、メグ、アズミンの順番である。
綸太郎と違い、安田は折野の言葉を信じたくなかった。
トライスター全員が無実である可能性を信じていたのだ。
其処で3人全員に電話を架けた。

まず、モッチに架けたが留守番電話で連絡がつかなかった。
これでは分からない。
とりあえず、犯人ならば反応があるだろうと留守電にメッセージを残した。

次に、メグだ。
此処で安田は次のアズミンとの間に10分もの時間を置いている。
つまり、安田はメグの犯行を確信したのだ。
だから、トライスターを庇うべく折野とトライスターに繋がる証拠を隠滅した。

この間、モッチからも折り返しは無い。
モッチの可能性も低い。

では、アズミンの可能性は無いのか?
これも考えにくい。

アズミンは安田について警察に通報している。
これは彼女自身が事件には関わっていないことを示している。

一方、メグは安田のもとへ向かっている。
安田が折野と自身の関係の証拠となる物を所持している可能性を怖れたからだ。
当の安田が身を以て、トライスターを守ろうとしていたにも関わらず。
やはり、黒幕はメグ1人だったのである。

安田がアズミンへと架けた電話。
これに関しては、メグが犯人と分かっている以上、純粋にお別れの電話になるだろう。
ファンクラブ会長である安田だが、アズミンのファンだったのだ。
安田は3人ではなく、彼が愛を捧げた1人の女神に殉じたのである―――エンド。

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