2013年02月19日

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録 72話「Nobody」(「月刊少年マガジン」2013年3月号掲載分)」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録 72話「Nobody」(「月刊少年マガジン」2013年3月号掲載分)」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
森羅:主人公。C.M.B.の指輪の主。多大な影響力を持つ。
七瀬:森羅のパートナー。身体を動かすことが得意。

鯨崎警部:森羅と旧知の警部。
カルロ:大規模密漁密輸窃盗グループを裏切り追われている。
容疑者A:監視役。
容疑者B:処分屋。
容疑者C:掃除屋。


「Nobody」
1.誰も〜〜〜ない。
2.死体が無い。

夜の埠頭―――其処で人間大の麻袋を遺棄しようとする男の姿があった。
男が海に袋を中身ごと捨てようとしたところ、周囲を取り囲む警官隊に取り押さえられた。
匿名の通報があり、男には殺人死体遺棄容疑がかけられていたのだ。
後に容疑者Aとして呼ばれるようになる男。
ところが、男が捨てようとしていた袋の中身は人形であった。
死体は何処にもない……これがこの奇妙な事件の発端であった。

旧知の鯨崎警部から森羅のもとへ依頼が持ち込まれた。
最近になって、密告がもととなり大規模密漁密輸窃盗グループが摘発された。
密告したのは、カルロという内通者。
窃盗犯グループから商品と金を持ち逃げし、追われる身となった為に裏切ったらしい。

組織は裏切り者には死の制裁を以て応えることで知られていた。
当然、カルロにも手が伸び、遂に拘束されたらしい。
そして、拷問が開始された。
結果、カルロは殺害され冒頭の死体遺棄へと繋がるそうなのだが……肝心の死体が見つからないらしい。
しかも、容疑者が3人おり、誰が犯人か分からないのだ。
この犯人を森羅に突き止めて欲しいそうだ。

森羅はグループが売り捌こうとしていた象牙を報酬に依頼を引き受けることに。

まずは、容疑者A。
例の埠頭で逮捕された男だ。
男は捕まったカルロの監視役をしていたそうだ。
男によれば、カルロを殺したのは本部から来た処分屋と掃除屋のいずれからしい。
少なくとも死体(と思われていた人形)遺棄以外には関与していないと主張する。

次いで、容疑者Aの証言で逮捕された処分屋と掃除屋。
処分屋が容疑者B、掃除屋が容疑者Cだ。

容疑者Bこと処分屋、彼はその名の通り殺し屋である。
だが、彼もまた殺害した覚えはないらしい。
もちろん、彼こそはその道の本職なのだが……。

容疑者Bはカルロに裏切りを吐かせるべく拷問も担当していた。
拷問部屋で金属バットを手に人形を殴りつけ、それを見せつけることで心理的に追い込む。
定時になると冷凍庫へ放り込み、凍えさせる。
拷問部屋にもどしては殴りつける。
こうして、拷問部屋と冷凍庫を往復させられたカルロだがどうしても裏切りを認めなかった。
認めること、すなわち死だと理解していたからだろう。

結局、拷問から10日ほどが経過。
状況が進展しないと見た上層部はカルロの殺害命令を出した。
こうして容疑者Bが職務を果たすべく部屋を訪れると、下半身が麻袋に隠れた状態で血塗れのカルロが倒れていたそうだ。
てっきり、容疑者A、あるいは容疑者Cの犯行だと思っていたと言う。

そして、容疑者C。
彼の本職は掃除屋……つまり、処分屋の後片付けが仕事である。
彼もまた仕事をすべくカルロの拷問部屋を訪れたところ、血塗れのカルロが転がっていたらしい。
てっきり容疑者Bが仕事をしたと思い込んだ彼は、そのまま穴だらけの麻袋にカルロを詰め込み、袋の口を縛った。
そして、容疑者Aに死体遺棄を命じたのだ。

こうして、埠頭へ容疑者Aが現れたワケだが、其処には鯨崎たちが待ち構えていたのだ。
そして、このときには人形を残しカルロの死体は消えていたのである。

此処まで聞いた森羅はニッコリと微笑む。
そして、森羅の口から発せられた「驚異の部屋(ヴァンダー・カンマー)をご案内します」との決め台詞!!

死体が消えた為に、殺人が立証できない。
では逆もまた真ではないか。

そう、殺人が立証できない以上、死体はそもそも存在しなかったのではないか?
つまり―――カルロが生きていると指摘する森羅。

疑えば、謎の通報自体が怪しかったのだ。
一体、誰が通報したのか―――それはカルロしか居ない。

捕まったカルロは死を察していた筈だ。
其処でイチかバチか勝負に出た。
死亡したように偽装し、逃げようとしたのだ。

容疑者Bに暴行されつつ、流れ出た血をビニール袋に溜めた。
その上で、凝固しないよう尿を加えた。
一方、移動させられた冷凍庫で、このビニール袋を凍らせて保存した。
量がある程度、貯えられた頃にいよいよ実行に移した。

貯えた血液をばら撒くと、穴の開いた麻袋に人形と共に入り込み、自身だけは上半身を剥き出しにしたのだ。
容疑者Bも容疑者Cも互いに誰かが殺したのだろうと特に気にも留めなかった。
出血量に騙されたのだ。

こうして、容疑者Cに麻袋に詰め込まれたカルロ。
だが、隙を突き麻袋の穴から紐を解くと人形を残し脱出したのである。
その上で通報し、死亡を偽装し逃げ延びようとしているのだ。
何しろ、カルロには組織から持ち逃げした資金と美術品があるのだから。

森羅の推理を聞いた鯨崎はすぐに手配をかけた。
数時間後、空港に現れたカルロ。
彼は知らない、その周辺を警察官が取り囲んでいることに―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン」2013年3月号掲載分「72話 Nobody」です。

サブタイトル「Nobody」の意味が良かったですね。
「死体が無くなったこと」と、そもそも「誰も殺されていない」ことのダブルミーニングでしょう。

血液の保存方法はあれで良いとして、その数パックにも上る血液を見張りに見つからずに如何にして持ち運んだのか(特に実行に移す際には冷凍庫から相当な量の持ち出しが必要、目につく筈)、また血液の解凍に要した時間など計算できたのかなど疑問も生じますが、この「奇想」こそが本作の優れた点だと思います。

ちなみに、「処分屋」と「掃除屋」は同じ意味のような気がしたり。
とはいえ、読むべし!!

そして、次回にも期待!!

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