2013年01月18日

「名探偵マーニー」第23話「ゲーマー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第23話「ゲーマー」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第23話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話に登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。4話、23話で登場。
武藤遊助:片岡のいとこ。国公立トップである東都大学のエリート学生。23話で登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

暇を潰すべくゲームショップを訪れたマーニーは、予算500円で楽しめそうなゲームを物色していた。

と、其処でデート中のゆりかと片岡(4話に登場)に遭遇する。
まだ交際していたんだ……と友人らしからぬ感想を抱くマーニー。

そんなマーニーの気も知らず、2人はイチャイチャぶりを見せつける。

暫くして、話題はマーニーが購入したゲームに移る。
マーニーとしては安かったので購入したに過ぎないソレ。
だが、同じゲームをプレイしたことがある片岡は想い出について語り始める。

それは彼のいとこの武藤遊助の物語。
武藤はヘヴィゲーマー、ありとあらゆるゲームに挑んではクリアしていたらしい。
片岡も彼に影響されてゲームに嵌っていた時期があるそうだ。
今、武藤は国公立最高峰の東都大学に合格し、その学生になっているとのことだが……。

その夜、自宅で購入したゲームをプレイするマーニーだが、難しいだけでちっとも面白くない。
奇しくもそれは、この後の展開を示していたのである。

数日後、ゆりかに頼まれ片岡に会うマーニー。
何でも片岡から依頼があるらしい。

先日、マーニーのゲームがきっかけで武藤を思い出した片岡。
懐かしさも手伝って、連絡したのだそうだ。
ところが、まったく連絡がつかない。
大学にも通っていないとのことであった。
武藤は何処で何をしているのか調べて欲しい……それが片岡の依頼であった。

ボランティアだと思い込んでいた片岡に日当5000円を請求しつつ、マーニーは調査を引き受ける。

まずは東都大学に向かったマーニー。
東都大学ゲーム研究会に所属していた武藤。
ゲーム研究会の会員によれば、最近姿を見せないとのこと。
しかも、武藤に関してあまりよくない噂を聞き込む。

武藤はゲームを安く買い、高く売る転売屋をしていたそうなのだ。
これが昂じて、投資紛いのことにも手を出していたらしいが……。

次に武藤の住所を辿り、転居先を突き止めたマーニー。
それは明らかに高級マンションであった。
しかも、警備員つきの最高級のモノである。

ゲーム研究会の後輩を名乗り、警備員から武藤に確認をとってもらうことに。
数分後、武藤はふらふらとマーニーの目の前に現れた。

これ以上は後輩では通らない。
片岡からの依頼であることを明かすマーニーだが、武藤は特に気にしていない様子。
そのまま部屋へと案内されることに。

武藤の部屋は高級マンションの最上階―――もっとも、値段の高い部屋である。
中へ入ったマーニーは唖然とする。

室内には何も無かったのだ。
あるのは窓から広がる眼下の景色だけ。

武藤は自身について語り始める。

何事もゲームとして捉えて来た武藤。
大学受験もクリアした彼は、ゲームの転売に挑んだ。
これもある程度の利益を上げクリアした。
そこで得た資金とノウハウをもとに、本格的な投資に挑んだらしい。
綿密な下調べの甲斐もあって、これで大きな利益を得たのだそうだ。
武藤は一大資産を築き上げたのだ。
今となっては、専門の投資ファンドに委ねるだけで巨額の利益を生み出しているらしい。

「人生と言うゲームをクリアしたんだ」豪語する武藤。
「もう、こうして窓から人を見下ろす以外に何も欲しくは無い」とまで述べる。
武藤は、言葉の内容とは裏腹に覇気に欠けた様子を見せていた。
それは過剰な自信や思い上がりなどから来るものではなく、本気で発せられた言葉であることを示していた。

本当に何も欲しくないんですか―――その質問を呑み込むマーニー。
武藤は何処までも本気で……そして、目的を失った虚無に囚われていたのである。

(これが人生の勝利者の姿だろうか?)
マーニーは言葉もなく黙り込む―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。
コミックス1巻も発売中です!!

今回はその第23話「ゲーマー」です。

今回も良かった!!

人生をゲームと捉え、これをクリアしたと豪語する武藤。
大きく成功した武藤は目的を見失い、虚無に囚われてしまいました。
これがゲームならばエンディングを迎え、新たなゲームに切り替えることになるのですが……。
生憎、人生はそうはいきません。

人生というゲームの勝者は、その死の瞬間に決められます。
例えば、資産の有無。
例えば、見送ってくれる人々の有無。
まさにその人の生き方が勝敗を決します。
これらは、マーニーで何度となく描かれたテーマですね。

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マーニー的には資産よりも見送ってくれる人の有無の方が重視されているように思いますね。

そんな中、今回の武藤は早々に見切りをつけてしまいました。
ですが、先程も申し上げた通り人生の勝敗はその死の瞬間にのみ図れること。

武藤にとって資産が1つの物差しならば、今ある資産を維持し続け、それを増やし、人生の最期にそれを達成できたかどうかこそがクリアしたかどうかと言えるでしょう。
現在は大資産家となっている武藤ですが、今後どのような事情で資産を失うか分かりません。
もっとも、其処に見送ってくれる人が居るのかとの問題も伴いますが。

現状の武藤はRPGで例えると、序盤(20代)でレベル上げを繰り返し高レベルになって(資産を増やす)いるが、ボスを倒し(人生の終焉を迎える)ていない状況と言えるでしょう。
おそらく、序盤でレベルマックスに達したと思った武藤がクリアしたと見切りをつけた状態。

通常のゲームならば、確かにクリアしたと言えるかもしれない。

ですが、この人生と言う名のRPGはおそろしいことに「思いもよらない事態」が発生することがあります。
どこで、レベルドレインが起こるか分からない(投機の失敗)。
どこで、ステータスが毒状態になるか分からない(体調不良)。
レベルマックスでも敵わない敵も登場する(人生の壁)。
パーティーを組んでいれば、自身の意志に関係なく不測の事態で解散ということも……(恋人、友人、同僚との別れ)。
時にはクリア不可能な場合すらある。
もちろん、1日寝たって瀕死の状態ならば回復しません。

武藤は本当の意味で生きていないからこそ、クリアしたと語っているのでしょう。
むしろ、本当にクリアしたと思っているのならば、新たなゲームに挑むべくその資産を寄付するという手もある。
あるいは、投資しつつも、新規事業を立ち上げる。
新しい分野に進出しても良い。

武藤はクリアしたと言いつつ、殻に閉じ籠っているだけなのではないでしょうか。
実際、武藤の能力と資産があれば、様々なことに挑戦出来る筈なのですが……。

ゲームはプログラマーのプログラミングした内容以上には行動できません。
当然、想定外の行動は取ることが出来ない。

ですが、ゲームと異なり人生は続くもの、想定外のことも起こるもの。
そして、他者と触れ合えば、思い通りにいかないことが多い筈。
ですが、思い通りにいかないからこそ、新たに知ることや楽しいこともある。

武藤が自身のゲームが本当はまだクリア出来ておらず、続いていることを知る日は来るのでしょうか?

ちなみに、武藤遊助。
ゲーム繋がりで「遊戯王」の武藤遊戯からのネーミングでしょうか?

でもって、片岡の再登場も良かった。
4話以来となりますね。
対照的でありながら、同好の士でもあるゆりかと静かに交際を続けている様子。
舟木、宮島カップルと共に見守りたいところ。

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片岡はもっと早めの再登場となるかと思っていただけに、此処で来るとは意外でした。
それだけネタのストックが多いのだと思うと、作品自体の今後にも期待が出来そうで嬉しい。

次回も期待です!!

ちなみに、上にもある通りマーニーのコミックス1巻の発売中。
これでいつでもマーニーの活躍を読むことが出来ます。
興味のある方は本記事下部アマゾンさんリンクよりどうぞ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
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◆関連過去記事
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これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話に登場。
前花:マーニーの友人。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話、16話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
累:白鳥の友人。1話、22話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話に登場。
鈴村蝶子:カーディガンズの1人。12話で登場。
黒屋明彦:雪彦の双子の兄、社交的。13話に登場。
黒屋雪彦:明彦の双子の弟、内向的。13話、20話に登場。
露島:新聞部部長。自腹でニュースサイトを運営し多大な影響力を持つ。16話に登場。
吉沢:新聞部員の1人。16話に登場。
舞城天:マーニーと同じ学校の生徒。17話に登場。
マキちゃん:本名は真希田、マーニーの級友。

【警察&探偵】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話で登場。
武頼:ロイドの先輩。22話にて登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。4話、23話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
光輪:往年のヒーロー「ブリット」を演じた俳優。現在では病を患っている。11話で登場。
鈴村都:蝶子の妹。12話で登場。
マックス鞠野:高名なマジシャン。効果を最大限に発揮するマジックがモットー。18話より登場。
真希田流:マキの姉。18話より登場。
玄武:大学生。日本有数のセレブで白鳥の知人。19話より登場。
宝蔵院はるか:大学生。玄武のフィアンセ。玄武同様にセレブ。19話より登場。
市長:マーニーとロイドが暮らす地域の市長。20話より登場。
阿刀孟:世界的に著名なアニメクリエーター。20話より登場。
瀬尾俊幸:阿刀のマネージメントを担当していたスタッフ。20話より登場。
ラッキー:白鳥が保護した「首なし鶏」。21話に登場。
君津和臣:化粧品メーカーの重役。今回の依頼人。22話にて登場。
日出有吉:木ノ崎順也の功績はこの人物の物であった。22話にて登場。
武藤遊助:片岡のいとこ。国公立トップである東都大学のエリート学生。23話で登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。
安崎良則:映画会社の社長。11話で登場。
安崎みどり:良則の娘。故人。11話で登場。
ゆりかの祖父:幽斉の中学時代の同級生、緊急入院してしまう。14話に登場。
河野幽斉:祖父の中学時代の同級生。同窓会の主催者。14話に登場。
幽斉の妻:幽斉とは犬猿の仲。14話に登場。
甲本:宮島の大学時代の同級生、宮島曰く「オタクっぽい人」。15話にて登場。
相葉:宮島の大学時代の後輩、宮島曰く「他人の恋人を寝盗る男」。15話にて登場。
甲本の元恋人:相葉に殺されかけたが……秘密が!?15話にて登場。
天の大叔父:年嵩の紳士然としたドイツ人。17話に登場。
はるかの母:はるかの母。健康志向であった筈だが……。19話より登場。
木ノ崎順也:『悪意の天国』で知られる往年の名監督。その正体は誰も知らない。

「名探偵マーニー(1) (少年チャンピオン・コミックス)」です!!
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