2013年01月18日

「空が灰色だから」56話「マルラマルシーマルー」(2013年1月17日掲載)ネタバレ批評(レビュー)

第4巻も発売された阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書店)。
もはや、その勢いは留まる所を知らず『ダ・ヴィンチ 2013年2月号』では、特集「『普通』と戦うマンガ主人公たち」にて大きく取り上げられています。

『空が灰色だから』が『ダ・ヴィンチ 2013年2月号』にて取り上げられる。

実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

というわけで、2013年1月17日に掲載された56話「マルラマルシーマルー」のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
ちなみに、1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2013年1月17日「週刊少年チャンピオン」掲載 56話「マルラマルシーマルー」

此処はとある高校、その廊下にて女子学生が2人会話を交わしている。
1人は、背は低いが自己主張の強そうな“大鬼怒”。
もう1人は、どちらかといえば大らかな雰囲気を纏った“筒”だ。

大鬼怒は勉強が得意らしく、試験の成績について語る。
これを聞いた筒は、自分の成績が良くないことを告げ「“ジェスチャー”して貰わないと」と口にする。
「“ジェスチャー”じゃなくて“レクチャー”ね」すかさずツッコミを入れる大鬼怒。

次いで、大鬼怒の持ち物についてに話題が移る。
大鬼怒によれば、母は経営者でお金持ちらしい。
持っているバッグも当然、かなりのものらしいが……。
「ああ“ブレンド”もののバッグね」
「“ブレンド”じゃなくて“ブランド”ね。ブレンドだと混ぜ物っぽい」
またも、筒の言葉に大鬼怒がツッコミを入れる。

話題は転がって、大鬼怒の父が大学教授であることについても語られる。
そのまま、思い込み効果についての話になり……。
「それ、“プラシーボ”効果ってやつね」
「いやいや、“トランシーバー”効果だから」
“プラシーボ”と口にした筒に、もはや呆れ顔の大鬼怒。

そんな大鬼怒に筒は「凄いよね〜〜〜」を連発。
「まさに“パースペクティブ”だね」
「それを言うなら“パーフェクト”。何故、そんな難しい言葉が出て来る?」
大鬼怒のツッコミも板についてきた。

そんなとき、筒の言葉が事件を招く。
「あの〜〜〜、やっぱり思ったんだけど、さっきの思い込みについては“トランシーバー”じゃなくて“プラシーボ”じゃないかなぁ」
おそるおそる大鬼怒に尋ねる筒。

「なんだと!!私はテストで全校9位だぞ!!その私が間違うとでも!!」
恫喝紛いに詰め寄る大鬼怒。

「あれ〜〜〜珍しい組み合わせだねぇ」
「あ、まーちゃん!!」
其処へ現れたのは第3の人物、まーちゃん。
事情を説明した筒、まーちゃんはどちらが正しいかスマホで検索する。
すると……。

「あ〜〜〜やっぱり。“プラシーボ”だね」
まーちゃんによる非情なジャッジが下された。
勝者は筒だったのだ。

ところが、これを聞いた大鬼怒は黒化する。
「あたしは、9位だぞ。選ばれたんだぞ。お前らとは違うんだぞ。間違うワケが無い」
聞くに堪えない言葉を発すると、まーちゃんのスマホが間違っていると主張し始める。
さらに、廊下に横たわると駄々っ子のように手足を振り回し始める。
明らかに年齢にそぐわない行動である。

ざわつく周囲。
そんな中、大鬼怒の姿を見出した教師は彼女に声をかける。
「おい、大鬼怒。お前、カンニングの疑いがあるから後で職員室に来い」
そのまま立ち去る教師。

「やっぱりね〜〜〜私見ちゃったんだ。大鬼怒さんが、テスト中に携帯をいじってるところ」
「うんうん、普通あそこまで大胆にはしないよね」
大鬼怒たちを囲むギャラリーから声が上がる。

思わぬ急展開に呆気にとられる筒とまーちゃん。
と、其処へさらなる登場人物が。
誰あろう大鬼怒の母である。

「あっ、居た居た。お母さん、今日はパート休みだからお弁当作って持って来たんよ」
その姿はどう見ても、会社経営者には見えない。

母親の姿を確認した大鬼怒は慌てたように「あんたなんて知らない」と言い募る。
追い払うように母親に向かい張り手をかます大鬼怒。
廊下はさながら修羅場である。

この事態に動く人影があった……筒である。
「お母さんになんてこと言うの!!」
筒は大鬼怒に近付くと頬を張る。

ぶたれた大鬼怒は号泣。
見かねた母親が大鬼怒を抱きしめる。

「ねぇねぇ、“プラシーボ”じゃないよね。“トランシーバー”だよねぇ」
必死に同意を求める娘の姿。
娘が追い込まれていると感じた母は庇うように頷く。
「うんうん、あなたは頭いいから。そうだ、お父さんも暇だからファミレスで豪華なご飯にしましょう」
これを聞いた大鬼怒は泣きながら頷く。

さて、ぶった張本人である筒はと言えば……。

「ううううう……感動した。これぞ母の愛。もう正解でいいよ。これこそ“プラシーボ”……いや、“トランシーバー”効果だよ」
この光景を見て貰い泣きしている。
もう何が何やらだ。

(いやいやいや、それは洗脳されているんだよ)
そんな筒の隣で、1人冷静にツッコミを入れるまーちゃんであった―――エンド。

<感想>

2013年1月17日掲載の56話「マルラマルシーマルー」です。
かなり改変加えてます、本作の真価を楽しむ為には連載を読むべし。

なんともインパクト大なサブタイトル「マルラマルシーマルー」、その意味はこうすれば分かる筈。
「マル」を「○」に置き換えると「○ラ○シー○ー」になりますね。
如何でしょう、お分かりになりましたか?

そうです、「マル」の箇所は伏字箇所なんですね。
つまり、「プラシーボ」と「トランシーバー」を指していることになります。
ねっ、両方とも「ラ、シ」が含まれているでしょ。
まさに、事態の発端であり結末を示す言葉です。

それにしても大鬼怒さん……虚構と欺瞞で身を固める少女でありました。
本話にて、大鬼怒さんが口にした嘘はこちらになりますね。

・テストで学年9位(実際はカンニングしていた)
・母が会社経営者(実際はパート)
・父が大学教授(実際は真偽不明だが、暇らしい)

そして、“プラシーボ”と“トランシーバー”。
僅かの間にこれだけの虚構を築き上げていたワケですね……恐ろしい。

しかし、その欺瞞も暴かれることになった。
果たして、大鬼怒さんの学校生活はどうなるのか?
筒こそ感動していたが、まーちゃんのように冷静な視点で眺める人の方が多数派だと思うぞ。
というか、むしろ筒の方が怖かったりもする。

どちらにしろ、学校で排斥されても大鬼怒には親という逃げ込む先があるワケでまだ救いは残されているか。
第一、大鬼怒の性格だと、自身の非は認めそうにないし、いずれはああなっていたような……。

そして、今回は展開こそがキモな回でしたね。
いつもの掛け合いに始まり、サスペンスチックな黒化から、親子愛溢れる(でいいのだろうか……)ラスト。
実に目まぐるしく展開しつつ、面白い。
流石の本領発揮と言えるでしょう。

特に十八番とも言える最初の掛け合いなどはこの話(「日本語は難しいギャラクシー」)を髣髴とさせました。
大鬼怒はギドラに近いのかもしれませんね。

「ブラックギャラクシー6」外伝最終話(最終回、第4話)「日本語は難しいギャラクシー」(秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

そう言えば、最近になって星新一先生の作品ともテーマ選択的な面で近い点もあるなと発見。
人の本質は時代を経ても変わらぬモノ。
これを描く点で同じ道を行く両者が近い視点に立つのは必然なのかもしれません。
ただ、其処からの味付けが両者とも卓越しているからこそ読者の心を動かすのでしょう。

さて、「空が灰色だから」ですが、4巻が発売。
さらに「大好きが虫はタダシくんの 阿部共実短編集」も発売中。
もうタイトルからしてやる気満々です。

確実に言えることは短編集には「大好きが虫はタダシくんの」が収録されるってこと。
これに前回の「あつい冬」もついてくる。
うわあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は星新一先生の作品以外に、過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』にも通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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