2013年01月25日

「空が灰色だから」57話「私のルール」(2013年1月24日掲載)ネタバレ批評(レビュー)

第4巻も発売された阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書店)。
もはや、その勢いは留まる所を知らず『ダ・ヴィンチ 2013年2月号』では、特集「『普通』と戦うマンガ主人公たち」にて大きく取り上げられています。

『空が灰色だから』が『ダ・ヴィンチ 2013年2月号』にて取り上げられる。

実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

というわけで、2013年1月24日に掲載された57話「私のルール」のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
ちなみに、1巻が赤色、2巻が黄色、3巻が青色ということで「虹の7色」をイメージしているのでしょうか。
とはいえ、是非とも7巻以上続いて欲しい作品です。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2013年1月24日「週刊少年チャンピオン」掲載 57話「私のルール」

下校途中の女子学生が2人、何やらワイワイと話し合っている。
そのすぐ後ろにもう1人、可憐な容姿を持ちながら何処か冷たい雰囲気を醸し出す少女が居た。
彼女たち3人は1つのグループらしい。

「ねぇ、古積。猫可愛いよね〜〜〜」
そう呼びかけられる少女、彼女こそあの可憐な容姿の持ち主であった。
だが、少女にとってはそれどころではない事態が眼前で繰り広げられていた。

野生の野良猫を触る友人。
その手のままペットボトルを開くと、あろうことか回し飲みを始めたではないか!!
古積も勧められるが、もちろん「断る」の一択である。
友人はそのまま古積の肩に手を置いた―――古積の視線は手の置かれた肩から動かない。
いや、逸らせないのだ。
其処には、古積にのみ見える奇妙な塊が。

古積の脳裏で、チェックボックスに大きくチェックが入る。
その横には「野良猫」、そして「ペットボトル」と書かれていた。
それぞれの但し書きには「野良猫」が「野生で育つ為に雑菌が繁殖している」とあり、「ペットボトル」には「回し飲みは不可」と記載されていた。

露骨に表情を歪ませる古積。
そんな古積の隣では、友人2人がピアス談義に花を咲かせていた。
「耳に穴を開けるんでしょ〜〜〜錆とか入ると大変だって言うじゃない」

古積の脳裏で錆と書かれた項目にチェックが入る。
その間にも、古積の肩の塊は不気味にもぞもぞと蠢いている。

「ああ、そうそう、この間借りたお金、返しとくね」
そんな古積の気も知らず、友人は彼女の手に硬貨を握らせる。

不特定多数の者が触った硬貨。
古積の脳裏でとうの昔にチェックが入ったそれが蘇る。
同時に、硬貨を握り締めた手に例の塊が。

肩と掌に生まれた塊はもぞもぞと奇怪に動き続ける。
やがて、古積は耐え切れなくなった……。

「ごめん、先に帰るね」
塊が全身を覆い尽くすような感覚に耐えられず、古積は逃げ出した。

1人になった古積はウエットティッシュを取り出すと丹念に肩と手を拭いだした。
そう―――古積は潔癖症だったのだ。
古積にとって、水とウエットティッシュは命綱になっていた。
これがなければ1日たりとて生活できないだろう。

今や古積の脳裏には多数の言葉が並んでいる。
並んでいる言葉はすべて古積が触れないモノ。
いわば、ブラックリストだ。
今日も新たな言葉がリストに並んでしまった。
この調子で行けば、早晩日常生活すら営めなくなるだろう。
だが、古積には1つの希望があった。

「や、やぁ」
古積の前に現れた男性、黒木である。
古積は黒木のことが好きだった。
きっと、黒木なら触っても大丈夫―――それが古積の希望であった。

「あの……て、て」
緊張した様子の黒木が口ごもる。
手を繋ぎたいんだ……心浮かれる古積。
黒木君となら手を繋いだって大丈夫な筈。
そっと手を差し出そうとして……。

「ていうか、鞄重くない?地面に下ろしたら」
手を繋ぎたいワケじゃなかったのか……ガッカリする古積だが、もっと恐ろしい提案が為されたことに気付く。

部屋に持ち込む鞄を地面の上に置く。
それこそ、古積の忌み嫌うものであった。
躊躇する古積。

だが、そんな古積の気持ちを知らない黒木は気遣いを見せて、勝手に地面に鞄を置いてしまう。
鞄に付着する例の塊。

「私、潔癖症だから」
「ああ、あるね。僕も古書を購入したとき食べかすがあると萎えるもの」

おどおどと批判する古積だが、黒木は気付かない。
違う、そもそも違う。
潔癖症の人間は古書を買うことすら出来ないのだ。
黒木との間にある大きな壁。
絶望に囚われる古積の脳裏にリストが次々と浮かんでは消えて行く。
それは膨大な量に上がり、自身の身体が塊に覆い尽くされて行く。

(ああ、駄目だ……)
古積がその一心に囚われたそのとき。
世の中の塊がすべて晴れた!!

見れば、古積の手は黒木の手に包まれている。
黒木が古積の手を握り締めたのだ。

(やっぱり、私平気だった!!)
心中で歓喜の声を上げる古積。

だが、黒木の表情が浮かない。
その視線は黒木と触れた古積の肌に向けられている。
そこには何故か蕁麻疹が!!

泣き出しそうになる黒木。
「そうだよね、古積さんみたいな人が僕なんかじゃ吊り合わないよね。蕁麻疹が出るほど嫌いだったんだね」
言うや否や、振り向きもせず駆け出してしまう。

残されたのは古積1人。
ゆっくりと手を動かすと浮かび出た蕁麻疹をじっと眺める。
溜息は漏れなかった―――エンド。

<感想>

2013年1月24日掲載の57話「私のルール」です。
かなり改変加えてます、本作の真価を楽しむ為には連載を読むべし。

潔癖症の古積さんの物語でした。
そして、同時に敏感な黒木君の物語でもあります。
それにしても、切ないなぁ……。

潔癖症の古積さん、このままではいけないと思いつつもどうしようもない。
その焦りからどんどん追い詰められて行く。
そんな古積の最期の希望が、愛する黒木君。
彼の存在が、いや愛があれば、潔癖症を乗り越えられる筈でした。

精神的には問題なく、クリアできたかに思われました。
ところが、肌は口ほどに物を言う。
蕁麻疹が出るとの恐ろしい結果に。

古積さんは黒木君のことが嫌いではないのに、その信念により思わぬ壁が生じてしまいましたね。

あるいは、無理矢理にでも黒木君のことが好きであると思い込むことで古積さんは潔癖症を乗り越えるきっかけにしようとしたのかもしれませんね。
だから、深層心理下にある生理現象まではコントロールできなかったのか。

果たして、どちらなのでしょうか?

それにしても、黒木君、思わぬところで思わぬトラウマを背負わされました。
好きな相手に、文字通り蕁麻疹が出るほど嫌われる―――女性不信になってもおかしくない。
黒木君が立ち直れるか心配です。

あるいは、古積さんともっと話し合うことで乗り越えることが出来るのだろうか?
この2人の交際関係を描く後日談的な作品が登場することを願いたいですね。

それにしても、上げといて落とすんだものなぁ……読者の心にも些かの傷を残す作品でした。

そう言えば、最近になって星新一先生の作品ともテーマ選択的な面で近い点もあるなと発見。
人の本質は時代を経ても変わらぬモノ。
これを描く点で同じ道を行く両者が近い視点に立つのは必然なのかもしれません。
ただ、其処からの味付けが両者とも卓越しているからこそ読者の心を動かすのでしょう。

さて、「空が灰色だから」ですが、4巻が発売。
さらに「大好きが虫はタダシくんの 阿部共実短編集」も発売中。
もうタイトルからしてやる気満々です。

確実に言えることは短編集には「大好きが虫はタダシくんの」が収録されるってこと。
これに前回の「あつい冬」もついてくる。
うわあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は星新一先生の作品以外に、過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』にも通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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