2013年03月07日

『猫弁と指輪物語』(大山淳子著、講談社刊)

『猫弁と指輪物語』(大山淳子著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

猫弁シリーズ、第二弾のドラマ化に続き、第三弾も刊行。

カギのかかった部屋で、女優の飼い猫が妊娠した。
天才弁護士・百瀬太郎に持ち込まれた依頼は「密室猫妊娠事件」。そこに盟友の動物病院を訴えたいという、新たな依頼が降ってきた。アルビノのビルマニシキヘビを、無断で転売されたという。しかし百瀬は、当日に婚約者にエンゲージシューズをプレゼントするための秋田旅行を控えていて……。
一生懸命生きる人たちが胸に抱えた、それぞれの迷いと謎。果たして百瀬は、欠けたピースを埋めることができるのか?
すべてがつながるハートフルミステリー、大好評第三弾!

目次
第一章 黄色いヘビと灰色猫
第二章 密室猫妊娠事件
第三章 三千代の靴
第四章 ワトソンの指輪
第五章 ハンスと花びら
第六章 くるくるキャット
(講談社公式HPより)


<感想>

『猫弁』、『猫弁と透明人間』に続く「猫弁シリーズ」第3弾。
どんどん広がる猫弁世界が楽しいですね。
今作だけでも、白川ルウルウに、美波に、くるみなど新キャラが続々です。

そんな第3弾では『猫弁』に登場した大河内三千代さんが再登場。
靴工房を創めるべく秋田へと去って行った彼女ですが、此処で百瀬と亜子の愛のキューピッド役に。
さらには亜子の後輩・春美に経営者としてのセンスを見出し、これを磨くべく指導する活躍ぶり。
第1作のファンは必読と言えそう。

一方、注目となるのは百瀬と亜子の関係。
これも少しずつですが進展している模様、見守りたくなりますね〜〜〜。

でもって、肝心の事件自体は些か弱いですが……その結末に安堵するのも前回同様。
なので、シリーズ既読の方は是非!!

<ネタバレあらすじ>

本当に少しずつではあるが距離を縮めて行きつつある百瀬と亜子。
とはいえ、周囲から見ればその進捗状況たるや全く微々たるもので心配になってしょうがない。

亜子の後輩である春美などは、理解できないとぼやきつつ彼らの為の「交際計画」を立案し課題として一段階ずつ提示して行く。
今回、春美が亜子に与えた課題は「百瀬と朝食を共にする仲になる」こと。
これに対し、亜子が実際に行ったことは「朝8時に喫茶店で百瀬と待ち合わせし朝食を共にした」ことであった。
確かに「朝食は共にしている」。
だが、目指したのはそういうことではない。
普段ならば頼り甲斐のある先輩な亜子であるが、こればかりはどうしようもないようであった……。
とはいえ、百瀬と亜子自身は満足している様子なので、それ以上は春美も踏み込めないのだ。

そんな百瀬と亜子が遂に旅行に出かけることとなった。
目的地は秋田、『猫弁』で登場した大河内三千代のもとである。
百瀬はエンゲージリングならぬエンゲージシューズを亜子に贈ろうと計画していたのだ。

その頃、百瀬を「猫弁」にしてしまった獣医・柳まことは人知れず頭を抱えていた。
横柄な客が捨てたニシキヘビの引き取り先を無事に見つけ届けた直後に、客がニシキヘビを返せと主張して来たのだ。
これが意外な結果に繋がるのだが……。

一方、女優の白川ルウルウは自身の飼い猫が妊娠し困惑していた。
猫は常に屋内で誰にも触れられない状態で飼っており、妊娠する筈がなかった。
まさに「密室妊娠事件」である。
この事件が百瀬のもとに持ち込まれることとなる。
同時に、ニシキヘビの件もペット専門の弁護士として百瀬が選ばれ、まこと相手に訴訟に踏み切るよう要請されていた。

亜子との旅行を控えた百瀬だが、まことを見捨てるワケにはいかず亜子1人で旅行させることに。
この百瀬の仕打ちに亜子は強いショックを受ける。

傷心の亜子に三千代は同情するも「百瀬にはそれが相手を傷つけることになるとの認識自体がないのだ」と説明。
そもそも、三千代の分析によれば、百瀬には「自分が必要とされている」との実感自体が存在していないらしい。
そんな百瀬だからこそ、時には本音をぶつけることも必要だと助言される亜子。
三千代は亜子が「百瀬を愛する才能を持っており、また百瀬からも愛されている」と断言し、応援するべく「自身の理想を込めた」最高の靴を亜子にプレゼントする。

その頃、白川ルウルウの飼い猫妊娠事件は意外な展開に。
実は、猫自体が入れ替わっていたのである。
ルウルウの飼い猫は隙を見て逃げ出しており、ルウルウに猫を飼うように勧めた本人である美波がこっそりとそっくりの猫に代えていたのである。
ところが、不覚にも入れ替えた猫が妊娠していた為に大騒ぎになったのだ。
ルウルウにとって猫は、海外進出を目指すに当たり猫好きの監督との架け橋になれば程度の狙いで飼っていたものであった。
それゆえに入れ替わりに気付かなかったのだ。
こうして、「密室妊娠」事件は解決。
ルウルウは自身に愛情が無かったことを責めるが、百瀬は愛情が無かったのではなく、愛情の示し方を知らなかっただけだと励ます。

ニシキヘビ事件については、猫弁・百瀬のファンであったアイドルが間に入り円満解決を見た。
こうして、事件は無事に解決したのである。

百瀬自身はと言えば、事務所の事務員・七重から貰った指輪を亜子にプレゼントすることに。
こうして、秋田から戻って来た亜子は百瀬との距離をさらに縮めることとなった。

起業を狙う春美は三千代から助言を受け、経営者としての心構えを得る。
一方、ルウルウ自身は猫に頼らず自力で成功してみせると単身渡米するのであった―――エンド。

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