2013年03月01日

「名探偵マーニー」第29話「メカニック」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第29話「メカニック」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第29話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

メカニック:マーニーの宿敵。最凶最悪の愉快犯。29話より登場。
佐賀瀬清:元特捜班刑事。ロイド、毛利の先輩。29話に登場。
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話、24話、29話で登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

炎が吹き荒れていた。
幼い少女が炎の中に立ち尽くし、その傍らには何者かのシルエットが……。
泣きじゃくる少女……彼女を助けようと刑事が飛び出そうとするが他の刑事に止められる。
刑事の正体はロイド。
そして、少女の正体は数年前のマーニーであった。

そして現在。
とある喫茶店にて1人の中年男性の姿が。
彼の名は佐賀瀬清―――元特捜班の刑事である。
佐賀瀬は周囲の気配を探り尋常ではない気配の人物たちに囲まれていることを気付く。

そんな佐賀瀬に声をかけた少女が居た。
ぼさぼさ髪に愛嬌のある表情……あの事件より数年が経過し、我々読者も知るマーニーである。

マーニーと佐賀瀬は待ち合わせをしていたらしい。
待たせたことを謝罪しながら席に着くマーニー。
その間も佐賀瀬は左手でサンドイッチを貪っていた。

早速、本題を切り出すマーニー。
その内容はある人物についてであった。
その人物はマーニーにとって忘れられない人物。

名は「メカニック」。
当時、最凶最悪の愉快犯として名を馳せた男である。
爆弾や放火、殺人すらも厭わず、典型的な劇場型犯罪で人々を嘲笑う。
現場には「歯車」のマークを残すことから、ついた名前が「メカニック」。
それこそが奴の犯行手口であった。

マーニーは佐賀瀬にある事実を語り出す。

「メカニック」は数年前に逮捕されていたが、証拠も不十分ですぐに釈放され姿を消してしまったそうだ。
ところが、最近になって「メカニックを殺す」との犯行予告がネット上で行われているようだ。
もともと、メカニックを恨む者は多い。
被害者遺族や便乗犯などもこれに乗り、大きな騒ぎとなっていた。

佐賀瀬の左腕に填められた時計を目にするマーニー。
佐賀瀬自身はサンドイッチを皿に戻すと、携帯を左手で弄り回し始めた。

そもそも、マーニー自身も「メカニック」とは深い因縁があった。
これに俯いたまま頷く佐賀瀬。

数年前、マーニーは「メカニック」に狙われ炎の中に連れ去られた。
しかも、その身体には爆弾を巻きつけられてである。
これを助けようとするロイドだが、マーニーを助ければ他の人質たちを殺すと脅迫を受けていた。

この危機をどう乗り越えたのかは、未だ語られてはいない。
だが、これを契機にロイドはマーニーを守るべく警察を辞めたのだ。

「メカニック」は何としても逮捕しなければならない。
そして、その「メカニック」がこの喫茶店に出没するらしい。

と、そこまで佐賀瀬が語ったそのとき―――「メカニック」によく似た男が来店する。
身構える佐賀瀬、手錠を握り込むマーニー。
男はどんどんと近付いて来て……。

佐賀瀬はこれまで使っていなかった右手をポケットから出そうとする。
ところが、その手をマーニーに掴まれ手錠を架けられてしまう。

「マーニー!!」叫ぶ佐賀瀬だが、その右手には拳銃が握られていた。

そして、近付いて来た男が変装を解く。
彼は「メカニック」とは似ても似つかぬ男性であった。
同時に、周囲に居た人々が一斉に立ち上がる。
その中には毛利刑事やロイドの姿もあった。
店内の人間はすべて警察官だったのだ。

此処で佐賀瀬は自身が試されていたことに気付く。
マーニーの目的は「メカニック」についての情報交換ではなく、佐賀瀬を止めることにあった。
実は佐賀瀬こそが「メカニック」殺害の予告を行った人物であった。

「メカニック」を追い続けた佐賀瀬。
だが結局、致命的な証拠を握ることが出来ず逃げられてしまった。
これは佐賀瀬のキャリアにとって唯一の汚点となった。
そして、被害者遺族たちの「メカニック」への怨嗟の声。
佐賀瀬自身、捜査の過程で家族を失っており彼らと同調した。
逮捕出来ないのならば……とその殺害を狙ったのである。
この喫茶店に居たのも「メカニック」が出没すると知ったからであった。

マーニーたちはそんな佐賀瀬の気持ちに気付き、これを止めようとしていたのだ。
サンドイッチや携帯を左手で扱っていた佐賀瀬。
だが、腕時計を左腕に填めていた以上、左利きとは思えない。
つまり、利き手である右に何かを隠し持っていたのである。
それこそが、佐賀瀬の「メカニック」への殺意の象徴―――拳銃だったのである。

肩を落とす佐賀瀬に「奴は必ず逮捕します」と約束するロイドと毛利刑事。
席を立つ佐賀瀬だが、その目の前の飲み物に敷かれたコースターを見て衝撃が走る。
ロイド、毛利、マーニーも我が目を疑った。

そこには「メカニック」のシンボルマーク、歯車が記されていた。

「メカニック」はすぐ其処で彼らをじっと眺め見ていたのである。
自分の起こした波紋が如何に影響を与えるのか……凝視していたのである。

慌てて周囲を確認するロイドたち。
その頃、店の外には店員の変装を解く1人の男が。
男の口元は小さく笑っていた―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。
コミックス1巻も発売中です!!
2巻も3月発売予定!!

今回はその第29話「メカニック」です。

「怪人二十面相」然り「モリアーティ教授」然り、名探偵には宿敵の存在が不可欠。
彼ら宿敵の存在あってこそ、名探偵もまた輝くのです。

そして、遂にマーニーにもその宿敵が現れました。
その名も「メカニック」。
それにしても、マーニー世界に似合わぬかなりの凶悪犯の様子。
果たして、マーニーはこの強敵に勝てるのか?

マーニー単独では到底勝てそうにもないので、これまでに培ってきた仲間と協力して対抗しそうな予感。
那智先輩、天、雪彦、白鳥、ゆりかたち……彼らの力を借りてこの強敵に打ち勝つことになるのでしょうか。
その日こそが、本作の最終回になりそうな予感もしますね……ドキドキ。

それにしても「メカニック」意外と若い?
作中描写だとマーニーとそう変わらないような……。
でも、過去の犯行から考えるとロイドくらいの筈なんだけど「メカニック」自体も代替わりしている可能性もあるか?
案外、2代目と称して学校内に潜んでたりして……どうだろ。

そして、今回の話によりマーニーのトラウマの正体はどうも「メカニック」のような感じ。
少なくとも前回幻視した怪物の正体はコレか。
だとすると、「メカニック」の「お前は俺だ」や「愛している」発言などからマーニーの中に眠る闇に執着していることになるのか?
マーニーの未だ見ぬ母親などから母親こそがトラウマと想定していましたが、「メカニック」がマーニーに闇の資質を見出しているところを見ると母親の血に何かありそうか。
或いは、「メカニック」とは別のトラウマがマーニーに存在し、これに母が関わっており、それに「メカニック」が目をつけている?

少なくとも不在の母親は何処かで重要なポイントとなる筈。

それにしても、過去のマーニーはあの絶体絶命的な状況からどうやって抜け出したのだろう。
どう足掻いても不可能な気がするが……。
この点はいつか明かされるのか?

また、注目すべき点が増えたな!!

ちなみに「佐賀瀬」は「(メカニックを)探せ」をもじったものでしょうか。
この遊び心も流石です。

きちんと登場したキャラを活かしきっているあたり、マーニーはやっぱりイイ!!
次回も期待です!!

ちなみに、上にもある通りマーニーのコミックス1巻の発売中。
2巻も3月に発売予定とのこと。
これでいつでもマーニーの活躍を読むことが出来ます。
興味のある方は本記事下部アマゾンさんリンクよりどうぞ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
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これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話、24話、25話、26話、28話に登場。
前花:マーニーの友人。オカルトに造詣が深いらしい。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話、16話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
累:白鳥の友人。1話、22話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話に登場。
鈴村蝶子:カーディガンズの1人。12話で登場。
黒屋明彦:雪彦の双子の兄、社交的。13話に登場。
黒屋雪彦:明彦の双子の弟、内向的。13話、20話、25話(25話は名前だけ)に登場。
露島:新聞部部長。自腹でニュースサイトを運営し多大な影響力を持つ。16話に登場。
吉沢:新聞部員の1人。16話に登場。
舞城天:マーニーと同じ学校の生徒。27話にて趣味はロードレースと判明。17話、27話、28話に登場。
マキちゃん:本名は真希田、マーニーの級友。
波峰りあ:マーニーとゆりかの同級生。巻野という名の幼馴染で年上の彼氏が居るらしいが……24話に登場。
浜沢志乃:マーニーの同級生、不動産を多数所持する。「幽霊マンション」もそのひとつ。25話に登場。
枯野:目立とうとしない天才。マーニーも一目置く。26話に登場。
3人組:マーニーのファンたち。探偵団を結成しようとするが……。26話に登場。

【警察&探偵】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話、24話、29話で登場。
武頼:ロイドの先輩。22話にて登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。4話、23話、24話、28話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
光輪:往年のヒーロー「ブリット」を演じた俳優。現在では病を患っている。11話で登場。
鈴村都:蝶子の妹。12話で登場。
マックス鞠野:高名なマジシャン。効果を最大限に発揮するマジックがモットー。18話より登場。
真希田流:マキの姉。18話より登場。
玄武:大学生。日本有数のセレブで白鳥の知人。19話より登場。
宝蔵院はるか:大学生。玄武のフィアンセ。玄武同様にセレブ。19話より登場。
市長:マーニーとロイドが暮らす地域の市長。20話より登場。
阿刀孟:世界的に著名なアニメクリエーター。20話より登場。
瀬尾俊幸:阿刀のマネージメントを担当していたスタッフ。20話より登場。
ラッキー:白鳥が保護した「首なし鶏」。21話に登場。
君津和臣:化粧品メーカーの重役。今回の依頼人。22話にて登場。
日出有吉:木ノ崎順也の功績はこの人物の物であった。22話にて登場。
武藤遊助:片岡のいとこ。国公立トップである東都大学のエリート学生。23話で登場。
メカニック:マーニーの宿敵。最凶最悪の愉快犯。29話より登場。
佐賀瀬清:元特捜班刑事。ロイド、毛利の先輩。29話に登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。
安崎良則:映画会社の社長。11話で登場。
安崎みどり:良則の娘。故人。11話で登場。
ゆりかの祖父:幽斉の中学時代の同級生、緊急入院してしまう。14話に登場。
河野幽斉:祖父の中学時代の同級生。同窓会の主催者。14話に登場。
幽斉の妻:幽斉とは犬猿の仲。14話に登場。
甲本:宮島の大学時代の同級生、宮島曰く「オタクっぽい人」。15話にて登場。
相葉:宮島の大学時代の後輩、宮島曰く「他人の恋人を寝盗る男」。15話にて登場。
甲本の元恋人:相葉に殺されかけたが……秘密が!?15話にて登場。
天の大叔父:年嵩の紳士然としたドイツ人。17話に登場。
はるかの母:はるかの母。健康志向であった筈だが……。19話より登場。
木ノ崎順也:『悪意の天国』で知られる往年の名監督。その正体は誰も知らない。
巻野大輝:波峰の彼氏とされる人物、誰も姿を見た者がいない。24話に登場。
古書泥棒:2人組、リーダー格は「LUCK」と指に刺青している。
大神:自転車のチューンナップを生業とする男性。27話に登場。
ゴーストレーサー:髑髏マスクに黒装束の怪人。その正体は……。27話に登場。
お腹の大きな猫:エリオットに連れられてやって来た猫。

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