2013年03月08日

「名探偵マーニー」第30話「迷子」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第30話「迷子」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第30話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話、24話、25話、26話、28話、30話に登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話、30話に登場。
高齢の女性:迷子になった息子を捜す老婦人。30話に登場。
万田:マーニーたちの通う学校の副校長。30話に登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

学校が終わり帰路につくマーニー。
と、途中にて必死に捜し物をしている老婦人に出会う。
老婦人はマーニーを認めると「息子を知らないか」と問いかけて来る。

どうやら、老婦人の小学3年生になる息子が迷子になったらしい。
ぽっちゃりした体型の少年だそうだが……。

老婦人の様子を見かねたマーニーは自身も捜索を手伝うことに。
「周囲を捜し見つからなければ30分後に此処に集まってください」と言い置くのだが……。

そして、30分後。
それらしき少年を見つけられなかったマーニーは老婦人と出会った場所へ。
ところが、当の老婦人が現れない。
もしかして見つかったのだろうか……と思いつつ、かといって戻って来るかもしれない状況である。
離れるきっかけも見つからずマーニーは遅くまで其処で待ち続けることに。

翌日、結局、戻って来なかった老婦人に首を傾げながらも登校したマーニー。
1日が終わり、今日も昨日と同じ道を下校中だが……やはり、あの老婦人と出会ってしまう。
どうやら、今日も息子を捜しているらしい。
ところが、老婦人の語る息子像が昨日と異なっていた。

なんと、剣道部に所属する中学2年生に変わっていたのだ。

ワケが分からないなりに今日も手伝うマーニーだったが、それらしい人物も見つからず老婦人は姿を消してしまう。

さらに、翌日。
昨日、一昨日と狐につままれたような状況に陥っているマーニー。
そして案の定、今日もまた帰宅途中で老婦人に出会ってしまう。
老婦人によれば、今日も息子を捜しているのだそうだ。
しかも、息子は高校3年生で進路で揉めた為に家出中となっていた。

最初が小学3年、次は中学2年、そして高校3年。
少しずつ成長しているようだが……。

老婦人が去り、1人で考え込むマーニー。
その様子を目撃した副校長の万田に「寄り道をしないように」と注意されてしまう。
結局、この日も息子らしき人物は見つかることなく終わった。

そして、翌日。
老婦人とその息子について悩み込むマーニーに興味を抱いたゆりか。
マーニーから「老婦人の謎」を聞き出すと「自分も行く」と身を乗り出して来る。
マーニー自身も判断に戸惑っていたからだろう、ゆりかと2人で現場へ向かうことに。
すると……いた!!
4日目となる今日も老婦人は何やら捜し物をしていた。
物怖じしないゆりかが老婦人に問いかけると、今日も息子を捜しているそうだ。
何でも、息子は教師で副教頭になったらしい。
だが、結婚に反対したことが原因で家を出てしまったとのことだが……。

やはり、まだ見ぬ息子は成長している。
そして、老婦人の言葉が正しければ教師なワケだ。
マーニーは自身の情報網を用いて、それらしき人物を探るが該当する者が出て来ない。

困ったときは調査対象の同業者に尋ねるべきである。
こうして、教師である宮島小百合の出番となったワケだが……。
話を聞いた宮島によれば「灯台下暗し」らしい。
なんと、あの人物が息子だったのだ。

マーニーは万田副校長を例の場所に呼び出す。
だが、今日に限っては老婦人が現れない。
悪戯を疑い苛立つ万田に、マーニーは此処であった出来事を語り出す。
ところが、これを聞いた万田の表情がみるみる青褪めて……。

老婦人が捜している息子とは万田であった。
だが、万田の母は最近になって他界していたのだ。
万田によれば、もっと親孝行すれば良かったと後悔しているらしい。
では、此処数日の間にマーニーが出会ったあの人物は誰なのだろう……。
まさか……背筋の凍えるマーニー。

その目の前、万田がガタガタと震えだすや「母さん」と呟き膝から崩れ落ちてしまう。
万田の視線の先を追うマーニー。
そこには例の老婦人がニコニコと笑顔で立っていた―――。

数日後、万田に呼ばれたマーニーは事の真相を明かされる。
万田自身も良く知らなかったが、万田の母には一卵性双生児の妹が居たのだ。
姉と妹はそれぞれ違う道を選び、姉は家庭を持ち万田を生んだが、妹は孤独な人生だったそうだ。
そんな妹の心の支えは、姉からの手紙。
其処には本来あり得たであろうもう1つの自分の人生が綴られていた。
老婦人が万田について語った内容はすべて手紙からの情報だったのだ。
ところが、万田の母が死亡してしまった。
姉を亡くし、天涯孤独の身となった妹は大きな喪失感に襲われた。
結果、心を病んでしまい、自分自身を姉と置き換えてしまったのだ。
そして、家族を求めてふらふらと彷徨っていたらしい。

「叔母が母になるには部品となる息子が必要だったのだろう」と語る万田。
血縁ということもあり、これからは万田が彼女の面倒を看るそうだ。
迷子は此処に帰るべき我が家を得たのである―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。
コミックス1巻も発売中です!!
2巻も3月に発売開始されました!!

今回はその第30話「迷子」です。

今回、かなり変則的な点があり、またあらすじだけでは理解しにくい点もあったので、かなり「ネタバレあらすじ」に手を加えています。
「ネタバレあらすじ」をご覧になる前に、本作を読んだ方が良いかもしれません。

さて、「迷子」がテーマとなると思い出すのが「デパートの迷子コーナーで両親とはぐれた子供が、お母さんが迷子なの〜〜〜と口にする」とのエピソード。
実は迷子になっているのは自分自身ながらも、確かに彼ないし彼女の立場からすれば迷子になっているのはその両親の方で……的なアレですね。
これは誰を中心に考えるかとの発想法にも繋がるモノがありますが、ある意味「被害者だと思ったら加害者だった」的なミステリの逆転の構図を含む内容です。

これの応用が今回の30話「迷子」でした。

「迷子」を捜す母親、だが彼女こそが本当の意味で「家族を追い求める迷子」だったとの諧謔的な物語。
とはいえ、これに救いを与えたのが作者であり、此処に本来存在しない筈の家族として「万田」を登場させることで、老婦人には家族を、万田には親孝行のチャンスを与えるとの結末となりました。
さらにその救いの内容に読者が覚える抵抗を軽減すべく「実は一卵性双生児であった」とのエクスキューズが与えられている点も特筆すべきでしょう。

本来ならば「存在しない家族を追い求める永遠の迷子」との結末も十分にあり得た筈です。
ただ、それではあまりに寒々しく、かといって本当の家族が存在したのではあまりにご都合。
其処で「家族ではあるが家族ではない存在」として「万田」が登場した……。
ハートフルではあるが何処か歪な印象も残す……まさに作者の真骨頂と言えるでしょう。
これを両立しているだけに本作は凄い!!

物語の展開の仕方も良し。

1.「老婦人登場から謎提示」
2.「灯台下暗しで万田の母でしょ」
3.「いやいや、幽霊じゃね」
4.「実は一卵性双生児でした」

実に4段階。
これは「起承転結」にも置き換えることが出来るもの。
かなり良かった。

ただ、惜しむらくは詰め込み過ぎな点か。
「起」に筆を割き過ぎて、この二転三転する「承転結」が些か急過ぎた感はある。
今回のテーマ的に「怒涛の勢いを与えるよりも、読後に余韻を与えた方が良かった」かも。

とはいえ、優れた作品であることは間違いない。
マーニーはやっぱりイイ!!
次回も期待です!!

ちなみに、上にもある通りマーニーのコミックス1巻、2巻が発売中。
これでいつでもマーニーの活躍を読むことが出来ます。
興味のある方は本記事下部アマゾンさんリンクよりどうぞ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
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◆関連過去記事
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これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話、24話、25話、26話、28話、30話に登場。
前花:マーニーの友人。オカルトに造詣が深いらしい。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話、16話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
累:白鳥の友人。1話、22話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話、30話に登場。
鈴村蝶子:カーディガンズの1人。12話で登場。
黒屋明彦:雪彦の双子の兄、社交的。13話に登場。
黒屋雪彦:明彦の双子の弟、内向的。13話、20話、25話(25話は名前だけ)に登場。
露島:新聞部部長。自腹でニュースサイトを運営し多大な影響力を持つ。16話に登場。
吉沢:新聞部員の1人。16話に登場。
舞城天:マーニーと同じ学校の生徒。27話にて趣味はロードレースと判明。17話、27話、28話に登場。
マキちゃん:本名は真希田、マーニーの級友。
波峰りあ:マーニーとゆりかの同級生。巻野という名の幼馴染で年上の彼氏が居るらしいが……24話に登場。
浜沢志乃:マーニーの同級生、不動産を多数所持する。「幽霊マンション」もそのひとつ。25話に登場。
枯野:目立とうとしない天才。マーニーも一目置く。26話に登場。
3人組:マーニーのファンたち。探偵団を結成しようとするが……。26話に登場。
万田:マーニーたちの通う学校の副校長。30話に登場。

【警察&探偵】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話、24話、29話で登場。
武頼:ロイドの先輩。22話にて登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。4話、23話、24話、28話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
光輪:往年のヒーロー「ブリット」を演じた俳優。現在では病を患っている。11話で登場。
鈴村都:蝶子の妹。12話で登場。
マックス鞠野:高名なマジシャン。効果を最大限に発揮するマジックがモットー。18話より登場。
真希田流:マキの姉。18話より登場。
玄武:大学生。日本有数のセレブで白鳥の知人。19話より登場。
宝蔵院はるか:大学生。玄武のフィアンセ。玄武同様にセレブ。19話より登場。
市長:マーニーとロイドが暮らす地域の市長。20話より登場。
阿刀孟:世界的に著名なアニメクリエーター。20話より登場。
瀬尾俊幸:阿刀のマネージメントを担当していたスタッフ。20話より登場。
ラッキー:白鳥が保護した「首なし鶏」。21話に登場。
君津和臣:化粧品メーカーの重役。今回の依頼人。22話にて登場。
日出有吉:木ノ崎順也の功績はこの人物の物であった。22話にて登場。
武藤遊助:片岡のいとこ。国公立トップである東都大学のエリート学生。23話で登場。
メカニック:マーニーの宿敵。最凶最悪の愉快犯。29話より登場。
佐賀瀬清:元特捜班刑事。ロイド、毛利の先輩。29話に登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。
安崎良則:映画会社の社長。11話で登場。
安崎みどり:良則の娘。故人。11話で登場。
ゆりかの祖父:幽斉の中学時代の同級生、緊急入院してしまう。14話に登場。
河野幽斉:祖父の中学時代の同級生。同窓会の主催者。14話に登場。
幽斉の妻:幽斉とは犬猿の仲。14話に登場。
甲本:宮島の大学時代の同級生、宮島曰く「オタクっぽい人」。15話にて登場。
相葉:宮島の大学時代の後輩、宮島曰く「他人の恋人を寝盗る男」。15話にて登場。
甲本の元恋人:相葉に殺されかけたが……秘密が!?15話にて登場。
天の大叔父:年嵩の紳士然としたドイツ人。17話に登場。
はるかの母:はるかの母。健康志向であった筈だが……。19話より登場。
木ノ崎順也:『悪意の天国』で知られる往年の名監督。その正体は誰も知らない。
巻野大輝:波峰の彼氏とされる人物、誰も姿を見た者がいない。24話に登場。
古書泥棒:2人組、リーダー格は「LUCK」と指に刺青している。
大神:自転車のチューンナップを生業とする男性。27話に登場。
ゴーストレーサー:髑髏マスクに黒装束の怪人。その正体は……。27話に登場。
お腹の大きな猫:エリオットに連れられてやって来た猫。
高齢の女性:迷子になった息子を捜す老婦人。30話に登場。

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posted by 俺 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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