<あらすじ>
通信販売で業績を急成長させているファッションデザイナーの宇佐美洋子(岡千絵)が何者かに刺され、噴水に投げ込まれる事件が発生する。取材で現場に居合わせた西野沙織(高島礼子)は、洋子のスタッフの近田明菜(木内晶子)、元夫でフリーライターの佐々木祐一(佐藤二朗)とともに遺体を発見。また、カメラマンの梅崎忠司(朝倉伸二)が撮影した映像には、噴水に突っ伏した洋子の遺体も捉えられていた。さらに、映像にはなかったが、沙織は洋子が倒れた場所に残されていた十字架のような血文字を見ていた。デスクの小久保満(近江谷太朗)は、映像の生々しさとダイイングメッセージが持つ話題性こそ視聴者の求めている情報だと、大はしゃぎでオンエアしようとする。しかし、沙織は、興味本位な情報の垂れ流しに反論。プロデューサーの大倉健(益岡徹)も沙織の意見を尊重し、より深い取材を行うよう指示を出す。
沙織は、ディレクターの石田翼(原田龍二)とともに関係者を訪ねることにする。
元夫の佐々木と洋子は10年以上前に離婚。その後は、仕事絡みでときどき連絡を取り合う仲だったという。佐々木によれば、洋子は資産家の娘で財力を背景に事業を展開。対照的に佐々木の実家は貧乏で、現在の暮らしぶりも洋子の華やかさからはかけ離れていた。
一方、スタッフの明菜は、洋子が辞めさせた派遣社員の高山拓海(森本亮治)が怪しいとにらんでいた。高山は最近、不当解雇を訴えて会社に乗り込んできたばかりだったのだ。
確かに高山は洋子に恨みを抱いていた。犯行そのものは否定するが、解雇以来、ネットカフェでの寝泊まりを余儀なくされている状況から、高山は「殺してくれてありがとう」とさえ口にする。また、犯行時刻に出逢い系サイトで知り合った女性とラブホテルにいたというアリバイは、立証はされなかった。
そのころ、小久保が勝手な判断で血文字のダイイングメッセージに関する情報をワイドショーで流してしまう。警察はこれに即時反論。慌てた小久保は、セレブな洋子と派遣切りにあった高山の間に起こった“格差社会殺人”に論調を切り替え、どうにか面子を保とうとする。もちろん、沙織たちは大反対するが…。
翌日、NPO代表の森幸治郎(西ノ園達大)の刺殺体が、荒川の河口で見つかる。森が運営する団体は、労働者やホームレスに生活保護の申請をさせ、そこから宿泊代や食事代を搾取する、いわゆる貧困ビジネスで利益を上げていた。小久保は嬉々として、格差社会の軋轢で殺された洋子の事件とカップリングで報道しようと提案する。しかし、その後の沙織たちの取材で、洋子と森が同郷であることが判明。また、二人とも刃物で刺された後に水の中に投げ込まれていることから、何かしら関連があるとみて、沙織は二人の故郷の御殿場に向かう。すると、洋子の姉から驚きの真実が明かされる…。
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
ファッションデザイナーの宇佐美洋子に続き、NPO法人「大木」の主催者・森幸治郎も殺害された。
沙織は2人が30年前に同じ御殿場にある小学校の同級生であったことを突き止めた。
同級生は他に十朱達也、岡崎和子、山本隆、田島満男の4人―――合計6人だったらしい。
なんでも、最近になってタイムカプセルを掘り出したそうだが……。
沙織はこの被害者のミッシングリンクについて報道してしまう。
これにより、十朱たちは加熱する報道被害に遭ってしまう。
矢先、洋子の元夫である佐々木祐一の記事により、6人の元担任・青木真由子の存在がクローズアップされる。
真由子は過去に窃盗したことにより、教師を辞めさせられていた。
佐々木は連続殺人の犯人が真由子であると主張、「格差殺人」と報道されるが……。
当の真由子に接触した沙織は、彼女の胸に下がった十字架に注目する。
洋子の残したダイイングメッセージも「十」だった……。
遂に報道は真由子へと向かう。
身を隠すことを決めた真由子は沙織を呼び出し、30年前の秘密を打ち明ける。
実は真由子の教え子は6人ではなく7人であった。
もう1人、中川宏美という女子生徒が存在したのだ。
だが、宏美は30年前に沼で溺死していた。
何やら、意味ありげな表情を浮かべつつも肝心なことには触れない真由子。
この事実を十朱や田島に確認する沙織だが、2人とも何やら隠している様子。
2人は何故か谷川俊太郎の詩に拘る姿勢を見せる。
さらに、田島は自分たちは人を殺したと思わぬ告白を。
数日後、岡崎和子と山本隆も殺害されてしまう。
一方で、10年前の別れた元夫・佐々木を今になって洋子が呼び出していたことに疑問を抱いた沙織。
洋子の助手・明菜に確認したところ、洋子が佐々木を呼ぶことを決めたのはタイムカプセルを開けた翌日のことらしい。
佐々木を呼んだ洋子は何かを謝罪していたそうだが……。
しかも、洋子が必要以上に文字を書かなかったことに注目する沙織。
さらに、宏美を失った中川家が一家離散していたことを突き止める。
直後、十朱と田島もまた姿を消してしまう。
佐々木によれば、また人が死ぬかもしれないそうだが……。
同じ頃、湖畔に田島が佇んでいた。
その背後にナイフを手にした人影が。
人影はナイフを振り上げようとするが……其処へ沙織が駆け付ける。
ナイフを手にした人影の正体は十朱であった。
十朱は田島が4人を殺した犯人だと思い込み、返り討ちにしようと狙ったのだ。
だが、沙織によれば、十朱も田島も犯人ではないと言う。
其処へ佐々木たちも現れる。
これを確認した沙織は洋子のダイイング・メッセージの謎について語り始める。
洋子は「ディスグラフィア(書字障害)」であった。
つまり、「十」が書かれていたとしても「十」ではない。
洋子は「十」ではなく「中川の中」の字を遺したのだ。
洋子が指し示したのは―――中川宏美の兄で養子に出た為に苗字が変わった佐々木であった。
これを受けて田島がすべてを語り始める。
30年前、田島と宏美はイジメに遭っていた。
あの日も、沼の近くでイジメが行われた。
耐え兼ねた宏美は沼に飛び込み自殺したらしい。
田島はこれに罪を感じ、タイムカプセルに宏美を名乗り死の真相を記した。
これがタイムカプセルから見つかったことで洋子は恐怖を覚え、宏美の兄である佐々木にすべてを明かした。
佐々木は宏美の死を知り、復讐を決めたのだ。
こうして佐々木は洋子を殺し、森を殺し、和子を殺し、山本を殺した。
真由子の窃盗を仕立てたのは山本主導による6人全員の犯行であった。
宏美の死の真相を真由子に知られていることを怖れての罠だったらしい。
田島は真由子が「教師として気付いてくれていれば」と責め、十朱は罪の意識に苦しんだことを訴える。
谷川俊太郎の詩だけが救いだったそうだ。
沙織は、その谷川俊太郎の詩こそが真由子が真相を知りつつ教え子を守る為に沈黙した証拠であると告げる。
この様子を眺めていた佐々木は錯乱すると自殺しようとするが、谷川俊太郎の詩を口にした沙織に説得され思い留まるのであった。
こうして、佐々木は逮捕された。
沙織は真実をニュースで伝えるのであった―――エンド。
<感想>
「逆転報道の女」シリーズ第2弾。
前作は2012年2月18日に放送されており、実に1年1ヶ月ぶりの新作となりました。
シリーズ前作はこちら。
・土曜ワイド劇場「逆転報道の女 〜ワケあり主婦キャスターが挑む天才医師の不審死!2億の保険金!?医療ミスに隠された復讐の殺意!」(2月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
原作なし、オリジナル作品です。
では、ドラマの感想。
なんかいろんな意味で凄いな。
なんとも言えない作品です。
ある意味、怪作と呼ぶに相応しいものでした。
佐々木や十朱達也のキャラが立ち過ぎでした。
完全に主役を喰ってました。
ちなみに、佐々木が真由子犯人説を報道したのは妹の死を止められなかった復讐だったんでしょうね。
でもって、当の真由子がなかなかに酷い。
過去の事件も知ってて沈黙を貫くし、今回の事件の動機も知りつつ教え子が殺されるままに放置するし。
窃盗の罪を被ったところで何の解決にもならない。
むしろ、悪い例にしかならないだろう。
少なくとも、30年前の時点で真相を知ってたのならば、教師として白黒はっきりすべき。
現代になって、犯人の動機に気付いたのならば然るべき筋にきちんと伝えるべき。
これでは、単なる無責任。
東野圭吾先生『麒麟の翼』に登場した糸川みたいだ。
あのとき、加賀は糸川になんと告げたか。
・『麒麟の翼』(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
にも関わらず、本作だと真由子の行為が正当化されているのには違和感があるなぁ。
ある意味、真由子は放任主義の極北的な存在かもしれない。
信頼は大事であるが、なんでも信じて放置すれば良いものではない。
それなりの物を積み上げていなければ、単なる無責任にしかならない。
此の点「知らなかった」のと同じようなもので、確かに田島が恨んでも不思議ではないような……。
沙織は何故、行動を起こさない真由子を庇うのか……理解に苦しむ。
半端に真由子の行為を正当化したことで、佐々木らの行為が奇妙に見えてしまうし。
さらに、本作の内容だとあながち「格差殺人」は間違っていないような気も。
動機は確かに30年前の復讐となるが、それもこれも「30年前に宏美が持っていた可能性を奪った人々に対する復讐」だし。
つまりは、宏美の可能性という富を奪った略奪者(成功者)に対する復讐だもんなぁ。
現に、佐々木自身も宏美死後一家離散の憂き目に遭って、それも込みの復讐だし。
そう考えると立派な「格差殺人」だよなぁ……。
何だか全体的にチグハグな印象。
でもって、洋子は何やかやで佐々木が犯人であるとのダイイング・メッセージは遺すんだなぁ……。
しかも、「佐々木」ではなく「中川」で。
何故だ?
あれなら、佐々木は証拠隠滅せずに放置していた方が良かったんじゃないかなぁ。
どのみち、まず分からない気が。
今回、佐々木に辿り着いたのも先に佐々木が犯人だと分かったからだと思うよ。
ダイイング・メッセージからは「中川」までしか出て来ないから。
そう言えば、特に「逆転報道」もしてないんだよね。
さらに、高山拓海が容疑者に上がって10分以内にアリバイが成立したのにも驚いた。
本当に関係ない人だったんだねぇ。
単に「格差社会」を言いたいだけなのではないかとモヤモヤ。
結局、深い所には全く迫れていないし。
何の為に持ち出して来たのか。
……などなど、本作はいろんな意味で無茶したなぁとの感想。
登場キャラ自体は立ち過ぎているほど立っているので、ストーリーを改善して欲しいかな。
次回に期待です!!
<キャスト>
西野沙織:高島礼子
石田 翼:原田龍二
小久保満:近江谷太朗
江畑佳代:秋本祐希
梅崎忠司:朝倉伸二
田島満男:正名僕蔵
十朱達也:大浦龍宇一
西野雅子:水野久美
青木真由子:根本りつ子
佐々木祐一:佐藤二朗
坂口銀三郎:渡辺哲
大倉 健:益岡徹 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
◆逆転裁判シリーズはこちら。
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