2013年03月15日

「名探偵マーニー」第31話「秘密のゆりかちゃん」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「名探偵マーニー」第31話「秘密のゆりかちゃん」(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第31話登場人物一覧:
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話、24話、25話、26話、28話、30話、31話に登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。ゆりかと交際中。4話、23話、24話、28話、31話で登場。

これまでの登場人物については過去記事リンクの後に記載しています。

<ネタバレあらすじ>

その夜、マーニーは先に控えた数学の試験について、親友であるゆりかに相談していた。
とはいえ、相手はゆりかだ。
果たして、何処までマーニーの話を聞いているのやら怪しいものである。
と、そのうちに電話口のゆりかから「あ、駄目だったらぁ……」と甘い声が混じり始める。

良く知る人物の思わぬ声に「な、何っっっっっっっ」と激しく動揺するマーニー。
ゆりかには片岡という大学生の恋人が居る。
まさか、片岡と―――良からぬ妄想に駆り立てられたマーニーは慌てて電話を切ることに。
とはいえ、いろいろ妄想を逞しくしてしまったマーニーは悶々として眠れぬ夜を過ごすのであった。

翌朝、欠伸を押し殺しながら授業を受けるマーニー。
恥ずかしさのあまりに、ゆりかの顔をまともに見られない。

そんなマーニーの様子をどう勘違いしたのか。
ゆりかはマーニーの機嫌を窺いつつ、何を思ったのかこれまでの依頼料を支払ってくる。
そんな、馬鹿な……ありえないゆりかの行動に愕然とするマーニー。
果たして、ゆりかにどんな心境の変化があったのか。

矢先、マーニーは意外な事実を知ることに。
なんと、片岡は北陸へ出かけていたのである。
では、昨夜のゆりかの相手は一体誰だ!?

そう言えば、マーニーに依頼料を支払ったあの金回りの良さは怪しい。
まさか、援助交際では……。
片岡さんを裏切るなんて、そんな非道は友達といえど許せない。
怒りに震えるマーニー。

だが、待てよ。
流石にゆりかと言えど、其処まではしないのではないか。
そこでマーニーははたと気づく……ゆりかならばやりかねないことに。
人情に薄く、利に敏く、厚かましくて、恥を知らない―――これこそがゆりかである。
なんで友達をしているのだろう……。
ふと我に返るマーニーだったが、ゆりかはやっぱり親友。
人として正しい道を外れるのだけは止めなければならない!!

こうして、影ながらマーニーのゆりかに対する調査が始まった。
ゆりかは特に変わった行動を取っている様子は無いようだが……。

親友を調べるとの後ろめたさの中、「ワンセグ放送を視たい」と嘘を吐き携帯を調べてみた。
ゆりかの意外な顔の広さを知ることは出来たが、交友関係に特に不審な点は無い。

こうなれば最後の手段。
親友であることを利用し、留守を見計らってゆりか宅を直接訪問。
ゆりかの母から顔パスで部屋に入るや、ゆりかのPCを調べるとの手段に!!

もはや、親友として一線を越えているのは間違いない。
だが、その甲斐あってある文字列を発見する。
それはマーニーにとって何処か見覚えのある文字列で……。

その夜、帰宅したゆりかにゆりかの母はマーニーの来訪があったことを告げる。
「あの娘は良い子よねぇ〜〜〜」
この言葉にむくれるゆりか。

何処の家庭でも一度は行われるであろうやりとりを経て、自室に戻るゆりか。
早速、いそいそとPCを立ち上げ始める。
これから、ゆりかの夜の顔が暴露されるのだ!!

さて、PCの画面上に表示されたのは「リンドバーグ」の文字。
有名な「オンラインRPG」である。

「ID」と「パスワード」を入力し、仮想世界へとログインするゆりか。
其処でのゆりかはイケメンなソードマスター。
と、その周囲にゆりかのキャラを見知った人々が寄って来る。
心なしか、皆が皆、ゆりかのキャラと似た美男子ばかり。
中身もゆりかと同じく女性のようだが……。
彼(彼女?)らを連れてバーへと向かうゆりか。

画面が切り替わり、バーの店内へ。
中には、それこそゆりかが連れてきたような美男子キャラが溢れかえっていた。
そのそれぞれがカップルを作り、愛を語り合っているようだ。

そう、このバーはゆりかが作った「BLバー」であった。
「BL」は「ボーイズラブ」の略である。
つまり、「ボーイズラブ」に興味を持つプレイヤーを集め、その愛を形にする場所をゆりかは提供しているのだ。

バーの利用者は皆、女性。
それぞれが男性キャラクターを演じており、ゆりかに口説かれてこのバーへやって来る。
バーには同好の仲間が集っており、気が合えばチャットを駆使し愛を育むのだ。
利用料は課金アイテムやレアアイテムである。
そして、このシステムを築いたバーのマスターこそゆりかであった。
ゆりかの羽振りが良かったのは、これをリアルで現金に換えていたからだったのだ。
最近では、特にゆりかが動かなくとも噂が噂を呼び、利用者を集めていた。

そんなゆりかの店に、新たな来客が。
相手は店の客層に似合わぬ強面のファイター。
息を飲むゆりかは入店を断ろうとするが……。

相手はそんなゆりかを無視し、手にした武器……斧を振り上げる。
一方で例のポーズを取りつつ叫ぶ。
「マーニーにおまかせを!!」

ファイターの正体はマーニーであった。
「恥ずかしくないのか、アホ」
斧を振り下ろし、ゆりかにダメージを与えるマーニー。

「マーニー?なんで?」
狼狽しつつも反撃するゆりか。
それはエスカレートして……。

「こんなことしてるなんて、信じられない!!」
「いいでしょ、マーニーもお金を稼いでるじゃない!!」
「私はきちんと働いて汗水流して稼いだものだ!!」
「一緒よ、一緒!!」
「片岡さんにどう言い訳する気だ!!」
「片岡さんに告げ口したら許さない!!」

時ならぬ、ゆりかとマーニーの乱闘(マスターと闖入者の決闘にしか周囲には見えないが……)は大騒ぎに。

数日後、この騒ぎがもとで「リンドバーグ」の運営に「BLバー」が露見し、ゆりかは強制的に退会させられることとなった。
「最初はほんの出来心だったが、思った以上に上手く行った」とマーニーに語るゆりか。
だが、今回の件で危く罰金まで請求されそうになったのだそうだ。
自業自得としか言いようのないゆりかの所業だが……。
収入源を断たれたことで落ち込むゆりかは、マーニーの所為で損をしたと先に支払った依頼料を返却するように求めるのであった。
やっぱり、ゆりかは懲りないのだ―――エンド。

<感想>

「フランケン・ふらん」で知られる木々津克久先生が、2010年の「ヘレンesp」以来2年ぶりとなる「週刊少年チャンピオン」本誌への連載を開始されました!!
連載作品のタイトルは「名探偵マーニー」。
コミックス1巻も発売中です!!
2巻も3月に発売開始されました!!

今回はその第31話「秘密のゆりかちゃん」です。

今回はタイトルからして「やる気満々」な回。
そして事実、完全なネタ回でした。

たまにこういう回があるのもアリですね〜〜〜。
ネタ回ゆえに真面目な考察は野暮と思われますが、マーニーとゆりかの関係性がよく現れていて良かったですね。
ある意味、マーニーにあるとされている心の闇を照らしているのはゆりかのその遠慮の無さなのかも。
ああ見えて、マーニーにとってゆりかは良き相棒なのかもしれません。
そして、手段を選ばないように思えるゆりかですが、片岡を大切にしている様子なのも微笑ましかったですね。

さりげなく、2話の那智と西郷のエピソードを伏線に配していたのも良しでした。

「名探偵マーニー」第2話(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

ただ、幾つか気になる点もありましたね。

まず、マーニーが通話中にゆりかの甘い声を聞いたことから、ボイスチャットを行っていたと思われます。
ですが、ゆりかが地声で話していたのはマーニーが声を聞いて驚いたことからも証明済み。
「ボーイズラブ」を売りにしている設定上、女性声で良い物なのでしょうか?
台詞の内容も女性のモノでしたし。

もっとも、これについてはリアルな男性ではなく、あくまで趣味嗜好を理解した同性が演じる男性に魅力を感じるものなのかもしれませんね……。

次に、課金アイテムをリアルトレードしている筈なので、携帯やPCにネットオークションの形跡や取引相手の連絡先、取引履歴が残ってても不思議ではないと思うのも疑問の1つ。
マーニーが何故、それに気付かなかったのかが気になる。

ただ、そんな疑問など関係なく吹っ飛んでしまうほどの勢いとインパクトがありましたね。
そして結論、ゆりか恐るべし!!

マーニーはやっぱりイイ!!
次回も期待です!!

ちなみに、上にもある通りマーニーのコミックス1巻、2巻が発売中。
これでいつでもマーニーの活躍を読むことが出来ます。
興味のある方は本記事下部アマゾンさんリンクよりどうぞ!!

木々津克久先生といえば「フランケン・ふらん―OCTOPUS―」が『拡張幻想 年刊日本SF傑作選』(大森望・日下三蔵編、東京創元社刊)に掲載されています。
こちらも注目。

木々津克久先生が「週刊少年チャンピオン」本誌に帰還する!!2012年8月16日より探偵物語「名探偵マーニー」連載開始!!

さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。

「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。

衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。

既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。

◆「名探偵マーニー」関連過去記事
「名探偵マーニー」第1話から30話まで(木々津克久作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)まとめ

◆関連過去記事
「フランケン・ふらん 最終話(最終回) Dream」ネタバレ批評(レビュー)

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「Phase20」(木々津克久作、「チャンピオンRED 2012年1月号」掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「鋏女(チャンピオンRED 5月号掲載)」ネタバレ批評(レビュー)

「ヴァンパイア・アナライズ (チャンピオンRED 7月号掲載)」(木々津克久著、秋田書店刊)ネタバレ批評(レビュー)

これまでの登場人物一覧:

【ロイド探偵社】
マーニー:主人公にして名探偵。本名は真音(マリオン)。
ロイド(パパ):ロイド探偵事務所所長にしてマーニーの保護者。元刑事らしい(3話)。
母親:マーニーの母親、不在。事情があるらしい(1話)。
エリオット:マーニーの愛猫。

【学校関係者】
若島津ゆりか:マーニーの友人。4話、5話、9話、10話、14話、16話、23話、24話、25話、26話、28話、30話、31話に登場。
前花:マーニーの友人。オカルトに造詣が深いらしい。
那智先輩:学校のヒーロー。2話、4話、16話で登場。
白鳥:マーニーの先輩、白鳥財閥の令嬢。1話、7話、13話、16話、19話、21話で登場。
累:白鳥の友人。1話、22話にて登場。
香坂:生徒会書記、2年生。7話で登場。
宮島小百合:マーニーの学校に勤務する教師。10話、15話、21話、30話に登場。
鈴村蝶子:カーディガンズの1人。12話で登場。
黒屋明彦:雪彦の双子の兄、社交的。13話に登場。
黒屋雪彦:明彦の双子の弟、内向的。13話、20話、25話(25話は名前だけ)に登場。
露島:新聞部部長。自腹でニュースサイトを運営し多大な影響力を持つ。16話に登場。
吉沢:新聞部員の1人。16話に登場。
舞城天:マーニーと同じ学校の生徒。27話にて趣味はロードレースと判明。17話、27話、28話に登場。
マキちゃん:本名は真希田、マーニーの級友。
波峰りあ:マーニーとゆりかの同級生。巻野という名の幼馴染で年上の彼氏が居るらしいが……24話に登場。
浜沢志乃:マーニーの同級生、不動産を多数所持する。「幽霊マンション」もそのひとつ。25話に登場。
枯野:目立とうとしない天才。マーニーも一目置く。26話に登場。
3人組:マーニーのファンたち。探偵団を結成しようとするが……。26話に登場。
万田:マーニーたちの通う学校の副校長。30話に登場。

【警察&探偵】
毛利刑事:ロイドの後輩刑事。3話、18話、24話、29話で登場。
武頼:ロイドの先輩。22話にて登場。

【再登場しそうなゲスト】
亜羽:ロイドの過去の依頼人。3話で登場。
片岡:ある特異な趣味を持った大学生。ゆりかと交際中。4話、23話、24話、28話、31話で登場。
村枝紗平:政財界のフィクサー。ロイドによれば「黒い噂」で知られる有名人らしい。8話で登場。
野宮真理:ニュース番組の人気キャスター。9話で登場。
舟木真治:宮島の初恋の相手、10話、21話(名前のみ)に登場。
光輪:往年のヒーロー「ブリット」を演じた俳優。現在では病を患っている。11話で登場。
鈴村都:蝶子の妹。12話で登場。
マックス鞠野:高名なマジシャン。効果を最大限に発揮するマジックがモットー。18話より登場。
真希田流:マキの姉。18話より登場。
玄武:大学生。日本有数のセレブで白鳥の知人。19話より登場。
宝蔵院はるか:大学生。玄武のフィアンセ。玄武同様にセレブ。19話より登場。
市長:マーニーとロイドが暮らす地域の市長。20話より登場。
阿刀孟:世界的に著名なアニメクリエーター。20話より登場。
瀬尾俊幸:阿刀のマネージメントを担当していたスタッフ。20話より登場。
ラッキー:白鳥が保護した「首なし鶏」。21話に登場。
君津和臣:化粧品メーカーの重役。今回の依頼人。22話にて登場。
日出有吉:木ノ崎順也の功績はこの人物の物であった。22話にて登場。
武藤遊助:片岡のいとこ。国公立トップである東都大学のエリート学生。23話で登場。
メカニック:マーニーの宿敵。最凶最悪の愉快犯。29話より登場。
佐賀瀬清:元特捜班刑事。ロイド、毛利の先輩。29話に登場。

【その他ゲスト】
西郷:那智の親友。2話で登場。
徳吉すばる:亜羽の同僚。3話で登場。
望月楓:ラクロス部のイケメン。6話で登場。
謎の女性:望月の周辺に現れた謎の女性。6話で登場。
亀井:村枝の文通相手。8話で登場。
安崎良則:映画会社の社長。11話で登場。
安崎みどり:良則の娘。故人。11話で登場。
ゆりかの祖父:幽斉の中学時代の同級生、緊急入院してしまう。14話に登場。
河野幽斉:祖父の中学時代の同級生。同窓会の主催者。14話に登場。
幽斉の妻:幽斉とは犬猿の仲。14話に登場。
甲本:宮島の大学時代の同級生、宮島曰く「オタクっぽい人」。15話にて登場。
相葉:宮島の大学時代の後輩、宮島曰く「他人の恋人を寝盗る男」。15話にて登場。
甲本の元恋人:相葉に殺されかけたが……秘密が!?15話にて登場。
天の大叔父:年嵩の紳士然としたドイツ人。17話に登場。
はるかの母:はるかの母。健康志向であった筈だが……。19話より登場。
木ノ崎順也:『悪意の天国』で知られる往年の名監督。その正体は誰も知らない。
巻野大輝:波峰の彼氏とされる人物、誰も姿を見た者がいない。24話に登場。
古書泥棒:2人組、リーダー格は「LUCK」と指に刺青している。
大神:自転車のチューンナップを生業とする男性。27話に登場。
ゴーストレーサー:髑髏マスクに黒装束の怪人。その正体は……。27話に登場。
お腹の大きな猫:エリオットに連れられてやって来た猫。
高齢の女性:迷子になった息子を捜す老婦人。30話に登場。

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