2013年04月07日

『留守宅の事件』(松本清張著、文藝春秋社刊『証明』収録)

『留守宅の事件』(松本清張著、文藝春秋社刊『証明』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

小説が認められず苛立つ夫に、毎日の行動を執拗に追及される雑誌記者の妻。怯えからつい口にした嘘が、惨劇をひき起こす。「証明」「新開地の事件」「密宗律仙教」「留守宅の事件」収録。
(文藝春秋社公式HPより)


<感想>

短編です。

栗山宗子という主婦が物置から死体で発見された。
第一発見者は夫の栗山。
萩野光治という栗山夫妻共通の知人が容疑者として浮上するが……との物語。

本作は「フーダニット」ではなく「ハウダニット」がテーマですね。
メインは「アリバイ崩し」になります。
如何にして、あの人は被害者を殺害したのか?
其処に注目して読むと楽しめる筈。

ちなみに、本作は「水曜ミステリー9」さんでドラマ化されるとのこと。
主演は寺尾聡さん。
放送予定日は2013年4月24日予定。

<ネタバレあらすじ>

自動車セールスマンである栗山敏夫が交番を訪れていた。
栗山は妻・宗子の寝間着姿の死体を物置で発見したと通報しに来たのだ。
それこそが事件の始まりであった。

この捜査に石子刑事が乗り出した。
容疑者として栗山夫妻と交友関係にあった萩野光治が浮上。
光治は宗子に邪心を抱いていたのだ。
しかも、光治は栗山の留守を知りつつ、その留守宅を訪れていた。
宗子に言い寄る為である。
この際、鍵をこじ開け屋内にまで侵入していたのだ。

光治は不法侵入までは認めたが、宗子は留守であったと主張。
殺害は否定する。

石子もまた次の2点から光治の犯行を否定する。
光治が邪な心を抱いておきながら、宗子の遺体が特に乱暴された形跡がないこと。
そして、光治の供述通り玄関付近には指紋が存在したが、物置付近からは指紋を検出できなかったこと。
これは光治の犯行だとすれば不可思議な点であった。

矢先、栗山自身が賭け事に興じる癖があることが判明。
さらに、宗子に栗山から多額の生命保険が掛けられていたことも分かる。
栗山にも動機が出て来たのだ。

だが、栗山には肝心の殺害実行の機会が無い。
宗子が殺されたと思われた期間には東北に営業旅行に出ており、東京での犯行は不可能だったのだ。
栗山のスケジュールを確認する石子だが、どう考えても東京に戻る時間は捻出出来なかった。

其処へ意外な情報がもたらされる。
宗子の妹・昌子から、宗子が購入した新品のウールのツーピースが無くなっているとの証言が得られたのだ。
さらに、東北地方で車泥棒が頻繁に起きていたことを知った石子はある仮説を立てる。

宗子は東京で殺害されたのではなく、東北で殺害されたのではないかと考えたのだ。

つまり、加害者ではなく被害者が移動していたのだ。
まさか、自分が殺されるとも知らずに。
だからこそ、ウールのツーピースを着用した。

こうして、殺害された宗子は栗山が盗み出した車のトランクに隠されていた。
それを栗山は帰宅に乗じて運び込んだのであろう。
その後、ツーピースから寝間着に着替えさせた。
だが、ツーピース自体は放置中に埃にまみれてしまった為に破棄せざるを得なくなってしまったのだ。

こうして石子は、栗山が宗子を呼び出した電話を旅館の従業員が聞いていたと嘘を吐き、栗山から自白を引き出すのであった―――エンド。

水曜ミステリー9「松本清張没後20年特別企画『留守宅の事件』〜証明より〜妻は何故殺されたか?密会と密告の罪深い闇 空白5日間の不在証明を追う刑事達の執念」(4月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

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