2013年04月08日

『激流』(柴田よしき著、徳間書店刊)

『激流』(柴田よしき著、徳間書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

・上巻

京都。修学旅行でグループ行動をしている七名の東京の中学三年生。
知恩院に向かうバスで、その中の一人の女性徒、小野田冬葉が失踪し、消息を絶った――。
二十年後。35歳となり、それぞれの毎日を懸命に生きるグループのメンバーに、過去の亡霊が甦る。
「おひさしぶりです。わたしを憶えていますか?」
突然、送られてきた冬葉からのメール。
運命に導かれて再会した同級生たち。そして彼らに次々と降りかかる不可解な事件。
冬葉は生きているのか? 彼女の送るメッセージの意味とは‥‥?
渾身のサスペンス・ミステリー!

・下巻

十五歳の記憶の中の少女はいつも哀しげにフルートを吹いていた。冬葉は生きているのか?彼女が送ったメッセージの意味は?
離婚、リストラ、薬物依存、不倫…。過去の亡霊に、次第に浮き彫りにされていく現実の痛み。苦悩しながらも人生と向き合う、六人の三十五歳の闘い。「今」を生きる、すべての人に贈る、渾身のサスペンス・ミステリー!
(徳間書店公式HPより)


<感想>

感想の前に1つ指摘しておきたい点が。
公式HPのあらすじだと「小野田冬葉」なのですが、本編では「小野寺冬葉」になってます。
ネタバレあらすじでは、本編に従い「小野寺冬葉」で統一させて頂いております。

内容については、「ネタバレあらすじ」をご覧頂ければお分かりになるかと。
ただ、登場人物の数だけ視点が存在している為にまとめにくかったので作中時系列などを改変しているので注意。

テーマとしては「20年前に起こった冬葉失踪事件という激流に呑まれた人々のその後」となるのだろうけど……これに「現代で起きる事件」というサスペンス要素を加えた為に分かりづらくなってるのが難かな。
普通に「激流に呑まれた人々の心理描写」のみに徹すれば、もっと良くなったんじゃないかなぁ。

その意味で、本作はどちらかと言えば「30代後半男女による群像劇」と解した方が分かりやすい。

論語曰く「30にして立ち」と言うように「30代」にして一人前。
「40」の「不惑」を前にして戸惑うことも多い筈で、そんな彼らを描いた作品と言えるでしょう。
メインは此処なので「サスペンスの完成度についてはあまり問うべきではない」と思う。

にしても、耕司が浮いているねぇ……。
なるほど、あんな扱いになるワケだ。

そして、真犯人の動機が凄いなぁ。
どう考えても当事者の1人なので、責任の重さで言えば他の面々とは比べ物にならない筈なのだが、あの開き直りぶりは特筆すべきものだろう。
真相を知っていたのならば、20年前の時点で圭子たち生徒を巻き込まずに助けろよ。
このツッコミはこの本を読んだ多くの人の共通認識になるでしょう。

あの真犯人の告白シーンだけでも読む価値はあると思うので、興味のある方は読んでみるべし。

<ネタバレあらすじ>

20年前、彼らは京都へと修学旅行にやって来た。
グループのメンバーは三隅圭子、御堂原貴子、秋芳美弥、鯖島豊、東萩耕司、長門悠樹、小野寺冬葉の7人である。

何処か孤高を貫く音楽少女・小野寺冬葉、彼女は常に孤独であった。
彼女の味方と言えば、その才能を認めた音楽教師・毛利佳奈子ぐらいであったが……その冬葉が旅行中に突然消えてしまう。

引率を担当していた教師の旭村らが困惑する中で、この失踪事件は社会問題にまで発展する。
その矛先は冬葉と同じグループに所属していた圭子らへと向かうことに。
冬葉と距離をとっていたことをイジメであると報じられ、彼らは追い詰められて行く……。

そして、現在。
圭子は結婚しながらも、文芸誌の副編集長になっていた。
御堂原貴子はモデル並みの容姿を持ちながら主婦として生活。
秋芳美弥は作家兼女優。
鯖島豊はサラリーマン。
東萩耕司は警察官。
長門悠樹は行方不明になっていた。

それぞれがそれぞれの生活を生きていたが、ある日、冬葉を名乗るメールが届いたことを境に事件が発生する。
そして、彼らが抱えていた鬱屈が表に現れる。

圭子は夫の不倫が原因で離婚。
さらに、覚えのない巨匠の原稿紛失と改竄の罪を着せられてしまう。

貴子は結婚前に親友と思っていた女性の夫に言い寄られ、断ったにも関わらず妄想を膨らませたその夫が子供を道連れに心中したことで親友から恨まれていた。
以来、罪の意識に苛まれ自虐癖が生じ、それが原因で結婚後に主婦売春組織に加わっていた。
夫がリストラに遭い生活費が必要というのもあったのかもしれない。
結果、愛人契約していたIT社長が殺害され、その容疑者にされてしまう。

美弥は謎の男にストーカーされ、薬物疑惑を騒ぎ立てられることに。

豊は妻と離婚後、傷心を癒すべく交際していた相手にストーカーされ遂には刺されてしまう。

耕司は特になし。

悠樹は所在が判然としない。

それぞれの事件を通じ、彼らは20年ぶりに再会を果たし1つずつの事件解決に挑む。

圭子の巨匠原稿事件は巨匠が恨まれていたのであって、圭子が恨まれていたのではなかった。
単に巻き込まれただけであったのだ。
だが、夫の不倫相手が大物であったことから、所属部署を異動させられることになってしまう。
とはいえ、巻き込んだ巨匠が圭子に謝罪し、新雑誌に原稿を提供してくれることとなった。
さらに、昔から豊に恋心を抱いていたことに気付き素直になることにした。
再スタートとしては上々であろう。

貴子は主婦売春が露見。
さらに、IT会社社長を殺害したのは貴子の夫であることが分かる。
しかも、売春が原因で病気にかかってしまう。
これに精神的ダメージを負い入院することに。

美弥は騒動が起こったものの、なんとかこれを乗り越えた。

豊は一命を取り留め、ストーカー犯も逮捕された。
一方で、圭子から恋心を寄せられており、こちらはどうなるかは分からない。

耕司は特になし。

そして、キーマンである悠樹が帰国を果たす。
実はある事情で海外へ渡航していたのだ。

此の事情を語るにあたり、少し過去へ戻らねばならない。
数多くの事件が起きたことに冬葉の存在が関わっているのではないかと考えた圭子たち。
必死になって冬葉について思い出すうちに、美弥が冬葉の母と旭村が不倫関係にあった事に気付く。
ところが、旭村は謎の失踪を遂げていた。

これにより、冬葉の両親を訪ねた圭子。
冬葉の母は、夫の浮気への報復に娘の担任教師と不倫していたことを認める。
だが、旭村には婚約者が居た。
そこで、冬葉の母は別れを切り出したのである。
あの修学旅行の日も、旭村に呼び出され京都へと向かったらしい。
だが、ギリギリで思い留まり会わずに帰ったと言う。

これを聞いた圭子は、もう1人関係者が居ることに気付いた。
旭村の婚約者―――毛利佳奈子である。

佳奈子を訪ねた圭子に佳奈子は黒幕が自分であることを認める。
20年前、旭村が冬葉の母と不倫していることを知った佳奈子は深く傷ついた。
京都で密会しようとしていることを察した佳奈子はこれを追った。
ところが、その姿を冬葉に目撃されたのだ。

冬葉は自身が慕う佳奈子の異常な様子を見て、後を追った。

旭村は冬葉の母を待っていた。
だが、冬葉の母はギリギリで思い直し帰ってしまう。
1人残された旭村を佳奈子が見つけ、罵った。
これに逆上した旭村が佳奈子の腹部を殴りつけた。
この際、実は妊娠していた佳奈子は流産してしまう。

この様子を遠くから見ていた冬葉は佳奈子の出血に狼狽し、旭村に飛び掛かる。
旭村はこれを振り解いた。
ところが、場所が竹藪であったことが災いした。
冬葉は身を捻った際に、首に竹が刺さり死亡してしまう。

呆気にとられる佳奈子と旭村だが、冬葉が還って来る筈もない。
佳奈子は旭村を逃がすと、流産の為に動けない身体で冬葉の死体と一晩を過ごす。

翌日、冬葉失踪が問題になり、捜すふりをした旭村が戻って来た。
これに協力し着替えると、冬葉を其処に埋めたのだ。
これこそが20年前の事件の真相であった。

では、今になって何故冬葉の名を用いメールを送ったのか。
それは冬葉を忘れ安穏と暮らす面々を許せなかったらしい。
何故、あのとき冬葉がグループを離れることに気付き止めなかったのかと責め立てる佳奈子。

明らかな逆恨みに圭子は慄然とする。

結局、佳奈子は身勝手な復讐を決意。
美弥や貴子、豊のそれぞれに恨みを抱く人物を扇動し事件を起こしたのである。

では、圭子、耕司、悠樹に何もしなかったのは何故か?
悠樹は所在が分からず復讐できなかった。
圭子はあまり幸せそうではなかったので、復讐する必要を感じなかったらしい。
そして、耕司は平凡すぎて付け込む隙が見いだせなかったそうである。

佳奈子の復讐は恵まれなかった自身の人生の八つ当たりに過ぎなかったのかもしれない。
こうして、20年前の事件の真相が明らかになった。

前後して、悠樹が帰国した。
実は悠樹は冬葉と交際していた。
ところが、急に冬葉が消えたことで嫌われたのだと思っていたらしい。
しかし、冬葉から届いていた手紙を目にしたことで考えを改めた。
其処には、冬葉が冬葉の母と旭村の不倫に悩んでいたことが記されていたのだ。
これを目にした悠樹は旭村を問い詰めた。
今更ながらに罪深さを思い知った旭村は失踪したのであった。
おそらく、何処かで自殺しているに違いない。
これに責任を感じた悠樹は国外へと移住したのだ。

悠樹に恋していた美弥はこれを知るとガッカリするのであった。

佳奈子の供述をもとに、冬葉の遺体が掘り出されることとなった。
圭子たちが見守る中、遂に発見されることに。
このとき、圭子は冬葉の別れの声を聞くのであった―――エンド。

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