2013年04月24日

『名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)

『名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状』(倉知淳著、講談社メフィスト掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

超豪華執筆陣の「超」最新作!
(アマゾンドットコムさんより)


<感想>

やっぱり、倉知先生はイイ!!
シリアスからコメディまで、千変万化の作家さんです。
惜しむらくは寡作な事か……。

そんな倉知先生の新作短編が『メフィスト』に掲載されました。

今回の『名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの挑戦状』は、まさに倉知先生らしさが大爆発。
シリアスとギャグが上手くバランスが取れており、同時にロジックも面白い。
まさになかなかの完成度の作品。

トリック自体は倉知先生作品に慣れている方ならば、開始当初の不自然な会話でその正体に気付く筈。
本作ラストで再三、述べられるほどアンフェアとは感じませんでした。
むしろ、ところどころにヒントらしきものが散りばめられており、予想もし易かったように思います。

とはいえ、本作の要はトリックそのものよりも、それが生み出す効果の方。
ラストで判明する犯人の正体とそのキャラクターのインパクトは抜群。
読後も時折、ふとした拍子に思い出してしまったほど。
さらに、トリックが介在していることを暴くロジックの展開の妙も素晴らしかった!!

本当に倉知先生は作品の雰囲気の作り方が上手い!!
この雰囲気はあらすじで到底伝えられるものではなく、思い切ってかなり改変しています。
この点、注意!!

興味を持たれた方は倉知先生の緩急自在ぶりを味わう為にも読むべし!!
こうなると、猫丸先輩の新作も読みたいぞ!!

<ネタバレあらすじ>

亀井警部は溜息を吐いていた。
思いもよらぬ事態にどう対応すればよいか分からなかった為である。
彼の常ならばこう言っていたであろう。
「まったく、どうしたらいいんだ!!」と。
だが今回、彼がそれを口にしなかったことには1つの理由があった。
彼の前には名探偵として名高い南郷九条がおり、その言葉を口にすることは敗北宣言に等しかったからだ。

亀井警部をして溜息を吐かせた事件、その内容は次のようなものである。
小説家の鈴木宅に予告状が届いた。
彼がお宝として周囲に自慢していた「アニメのレア色紙」に落書きするとのものだ。

鈴木からの通報を受けた亀井は真偽を訝しみながら現場へと訪れた。
すると、鈴木はそんな亀井の心情を見透かしたかのように南郷をも呼んでいたのである。

だが、亀井の立場からすれば「仕方がないだろう」としか言いようがない。
なにしろ、モノがモノだし、予告自体が悪戯の可能性もある。
亀井自身がこうして足を運んでいるだけでも評価してもらいたいぐらいだ。

一方、そんな亀井の心情を知ってか知らずか南郷は嫌みな笑いを浮かべて何やら楽しそうである。
一矢報いるべく亀井は南郷へと話しかける。

「あれ、いつも君の傍に居る助手は何処へ?」
「ああ、彼なら今は修行に出ています……でも、そんなに不便ではありませんよ」
何処か歯切れ悪そうに語る南郷。

其処へ、予告状に怯える鈴木が現れる。
鈴木は亀井警部と南郷に色紙の死守を懇願。

しかし、その必要があるとは亀井には思えなかった。
何故なら、当の色紙は透明なプレート2枚の間に挟まれ、プレートの4隅はネジ止めされていたのである。
たとえ、賊が落書きしようとしても、ネジを外す必要があり短時間では不可能だ。
その間に亀井か南郷に見つかってしまうだろう。

ところが、この亀井の予想は外れることになった。
なんと、謎の煙が部屋を満たしたほんの一瞬の隙に色紙に落書きが施されてしまったのである。
これにショックを受けた鈴木は倒れてしまう。
何故か、南郷は余裕を崩さないが……。

それから数時間後、意識を取り戻し改めて色紙を改めた鈴木。
止められていたネジを外し、色紙自体を確認するが落書きは間違いない。
此処で初めて南郷は激しく動揺する。

失敗だった……と呟く南郷。
早速、南郷は落書き事件の犯人を指摘し始める。

実は……と明かし始める南郷。
南郷は今回の予告状を鈴木の余興だと思っていたらしい。
だからこそ、初めから終始余裕だったのだ。
ところが、犯行は実際に行われてしまった。
南郷は初めて犯行が本気であったことに気付いた。
同時に、誰が犯人かも。

まず、南郷が疑問視したのは「煙幕に覆われたわずかな隙に、ネジ止めされた透明プレート2枚に挟まれた色紙に落書きか出来るのかどうか」。
答えは「否」である。
それは不可能だ。

其処で南郷は考えた。
あれは本当に落書きだったのだろうか―――と。

そもそも、落書き犯人は犯行後に改めてネジで止め直す必要は無かった筈である。
だが、ネジを止めた。
これには意味がある筈だ。

南郷は語る。
そもそも、ネジは初めから外されていなかったのではないか。
あの落書きは薄い透明フィルムに書かれた物であった。
犯人はそれを透明プレートの隙間に差し入れ、色紙と重ねるだけで良かったのだ。

だが、実際に数時間後に鈴木が確かめた際には落書きが施されていた。
つまり、偽の落書きに鈴木が意識を失っている間に本当の落書きが行われたのだ。
これが出来るのは、鈴木が倒れている間、色紙の警護を任された南郷の新しい助手・尾田倉しかいない。

えっ、尾田倉って誰だ?
いやいや、だから南郷の新しい助手である。
前任者が修業に出た後に、助手としてやって来た人物だ。
だから、南郷は不便を感じなかったのである。

尾田倉は鈴木がレア色紙を持っていることが許せなかった。
あのアニメを一番愛しているのは自分だとの自負があったからである。
其処で鈴木にひと泡吹かせてやろうと考えたのだ。

まず、南郷の助手を志願した。
その後、鈴木に予告状を出した。
そうすれば、怯えた鈴木が南郷に依頼することは予想出来た。
実際、事はその通りに推移し、尾田倉は鈴木邸に疑われることなく侵入。
トリックを駆使し、犯行に及んだのである―――エンド。

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(収録作『Aカップの男たち』について)

【その他】
倉知淳さんの「猫丸先輩」が舞台化!!

倉知淳先生の作品集「なぎなた」&「こめぐら」は東京創元社さんより9月30日発売!!

『名探偵南郷九条の失策 怪盗ジャスティスからの予告状』が掲載された「メフィスト 2013 VOL.1 (講談社ノベルス)」です!!
メフィスト 2013 VOL.1 (講談社ノベルス)





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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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