2013年05月01日

『関守』(米澤穂信著、新潮社刊『小説新潮 2013年5月号』掲載)

『関守』(米澤穂信著、新潮社刊『小説新潮 2013年5月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

一年に一件、車が落ちて人が死ぬというこの峠に、ネタを探すライターの俺はやってきた
(新潮社公式HPより)


<感想>

米澤穂信先生の短編です。

旅行者を護る道祖神が、結果としてその命を奪うことになるとは。
そして、伏線が回収されるにつれて明らかになる真相は恐ろしい。

桂谷関の関守は通行人すべてを排除していた。
同様にあの人はすべてを排除し、娘を護ることを望んでいたということでしょう。

ぶっちゃけると、読んでて『水滸伝』を思い出しました。
何故、『水滸伝』なのか?

『水滸伝』と言えば「峠の茶屋」。
客が出された酒を飲むと……のアレですね。
宗江も危機一髪になったアレですよ。
さ、寒気がするアレですよ……。

なので、結末自体は予測がつきました。
ただ、動機が分からなかった。
そして、本作は間違いなく動機が重視の物語であり、米澤先生があとがきでも述べられている通り「ハウダニット」ものです。
そして、「(被害者たちを繋ぐ)ミッシングリンク」ものでもあります。
伏線自体はあちこちに張られていますが、これには気付けませんでした。

読後に衝撃があなたを襲う筈です!!
チャレンジを!!

<ネタバレあらすじ>

ライターの俺は4ページの記事を埋める為に四苦八苦していた。
いいネタが見つからないのだ。
困った俺は、この道で成功している先輩に相談を持ちかける。
先輩は「桂谷峠」のエピソードを教えてくれた。

「桂谷峠」には「桂谷関」があり、其処では1年に1度の割合で死亡事故が起こっているらしい。
これまでにも4件の事故が発生し、5人の犠牲者が出ていたが……。

一度は教えてくれたものの、止めた方がいいかもしれないと洩らす先輩。
だが、溺れる者は藁をも掴む―――俺は取材に乗り出すことに。

峠の中腹にあるドライブインへ立ち寄った俺は、其処の主である老婆から事故について話を聞くことに。
老婆は珈琲を差し出しつつ、事故に遭った人々について語り出す。
俺は老婆に分からぬように胸元のボイスレコーダーにこれを録音する。

まず、1年程前に事故に遭い命を落とした前野。
県庁の職員で資源を捜していたそうだ。

次に、2年程前に事故に遭い命を落とした田沢と藤井のカップル。
これまたドライブインにやって来て酒を注文したそうだ。
田沢はかなり乱暴な客だったらしく、当たるを幸い周囲の器物を蹴り倒していたらしい。

そして、3年程前に事故に遭い命を落とした大塚という学生。
どうやらフィールドワークにやって来て事故に遭ったらしい。

此処で老婆は2杯目の珈琲を勧めて来た。
情報料代わりに了承し、その間に「桂谷関」の逸話を読み込む。
当時の関守は通行人をすべて排除し、住民から恨まれていたそうだ。
関が撤廃された後、道祖神が設置されたとのことだが……。

老婆から手渡された珈琲を口にする。
老婆は4年程前の高田の事故の前に、自身とその家族について語り出す。
老婆は元看護師。
このドライブインは彼女の夫が主であったが、夫が高齢の為に死去し彼女が引き継いでいた。
彼女と夫の間には娘が居るらしい。

それが高田とどう関わって来るのか?
胸元のボイスレコーダーの録音残量を気にかける俺に、老婆は怪しげな笑みを向ける。

次に老婆の口から発せられた言葉は驚くべきものであった。
高田は老婆の娘の2番目の夫であった。
老婆の娘は高田から暴力を受け続けていた。
どうやら、高田はヒモのように老婆の娘を利用していたらしい。

老婆の娘と高田の間には娘が居た。
娘が大きくなるに及んで、高田は娘をも喰い物にしようと考えた。

この事態に老婆の娘は高田のもとを逃げ出した。
向かった先はもちろん、老婆の住むドライブインである。
当時は老婆の夫も生きていた。

高田は老婆の娘を追ってドライブインへやって来た。
そして、彼らの子供を連れ去ろうとしたのである。
娘はこれを止めようとして、高田を殺害してしまった。
老婆の夫は事故死に見せかけ死体を処理した。

だが、問題が1つ発生していた。

老婆の娘は焦りのあまり安置されていた道祖神で高田を殴り殺していたのである。
この際、道祖神の首がもげてしまっていた。

老婆の夫は高田の死と道祖神が結び付けられることを怖れ、接着剤で修復した。
だが、彼らにとって道祖神は注意すべきモノとなった。

その後、老婆の夫は死去。
娘と孫と共に老婆は暮らすこととなった。
これで事態は解決するかと思われた。

ところが3年前、大塚がフィールドワークの為に訪れた。
彼の目的は道祖神。
その首筋に継ぎ目があることを発見した大塚は騒ぎ立てた。
だから、彼は事故に見せかけて殺された。

さらに2年前、田沢と藤井のカップルが訪れた。
田沢は当たるを幸いに蹴りまくり、道祖神の首を落とした。
しかも、断面に接着剤があることに気付いてしまった。
だから、事故に見せかけて殺された。

そして1年前、前野が資源を求めて現れた。
彼が捜していたのは観光資源。
特に道祖神に興味を示した。
だから、事故に見せかけて殺された。

すべては老婆の犯行であった。
だが、その事実を俺に明かすのは何故だろう?

老婆は続ける。
秘密に近付く者はすべて排除すると。
老婆は最近になって、事故を調べる者の存在に気付いていた。
だが、その人物はドライブインに訪ねてくれなかったので手が出せなかった。
しかし、遂にその当人がやって来たのだ。
絶対に逃がしはしない、と。

気が付けば、身体が動かない。
此処で初めて気付いたのだ。
何かを盛られたことに。
そして、声にならない声で必死に訴える。
その調べていたのは先輩だ、俺じゃない……と。
だが、その声はどうしても声にならないのであった―――エンド。

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