2013年05月30日

『ネメシスの杖』第5話『夜への長いドライブ』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『ネメシスの杖』第5話『夜への長いドライブ』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

・前回まではこちら。
『ネメシスの杖』第4話『阿里玲の長い一日 後編』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

深夜、帰宅を急ぐ倉井が乗車したタクシーは彼にとって最悪の選択となった。
運転手の名は江里口。
そう、倉井が隠蔽したシャーガス食害事件の被害者の父親だったのだ。
復讐に怯える倉井に対し、江里口は静かに拳銃を突き付ける。
そして、引金に指がかかり……。

ところが、出て来たのは水。
拳銃は水鉄砲だったのだ。

舐められたと激怒する倉井に、江里口は迂闊に動かない方がいいと告げる。
何故なら、江里口が倉井にかけた水にはある原因物質が含まれていたからである。
何の?……決まっているシャーガス病のだ。
もしも、倉井が目をこすれば傷口から彼もたちまちシャーガス病に罹患するだろう。

「何かをするんじゃないですよ。あなた方のように何もしなかったらどうなるかを教えてあげたいだけです」
倉井の狼狽を喜ぶでもなく、ただ淡々と口にする江里口。
こうして、動けなくなった倉井はそのまま江里口に連れ去られてしまう。

翌朝、前日に倉井より左遷を言い渡された阿里はショックな朝を迎えていた。
しかし、これで終わりに出来るワケがない。
異動までに残された時間を真相究明に割くと決意する。
時間を有効に活かすべく、再度、紐蔵に助けを求めることに。

だが、紐蔵もまた阿里同様にその傷心を必死に癒そうとしていた。
阿里へ共に行動できないことを告げる紐蔵。
彼の義手が幻肢痛を訴えていたのだ。

人の裏切りの証明であるというソレ。
紐蔵のニューヨーク時代の友人が命と引き換えに彼から奪って行ったのだそうだ。
これにより、紐蔵は研究者としての客観性を断たれた。
何を行うにしても常に義手が気にかかり、客観性を保持できなくなったのだ。
紐蔵の信じる研究者は、客観性を重んじるもの。
つまり、現在の紐蔵は彼の理想とする研究者足りえていないのである。
それは紐蔵が紐蔵らしさを喪失していることを意味する。

苦しむ紐蔵に、阿里は告げる。
「私は昔の先生の手を知らないですが、今の手も良いと思いますよ」と。

この言葉を聞いた紐蔵は苦笑いを浮かべると、阿里に情報協力することに。
ただし、義手の件がある限り、同行は出来ないと断言する。
常に冷静であろうとする紐蔵にとって、義手はそれほど大きいものなのだ。

紐蔵は友人・時田経由で入手したシャーガス病の特効薬購入者リストを提供。
それは、過去の食害事件の関係者とピッタリ一致していた。
つまり、阿里たちが現在把握している以外にも被害者は存在しており、それは過去の関係者だったのだ。
もはや、現在のシャーガス病事件が過去の復讐であり、人為的なものであることは明らかであった。
こうして、紐蔵から今後の指針を与えられた阿里は行動に移る。

そんな阿里に倉井が行方不明との報が飛び込む。
その直後、動揺する阿里の前に、1台のタクシーが停車する。
その運転手は江里口であった。

江里口の招きに応じた阿里は彼と対決する。

「怖くは無いのか」と問う江里口。
「江里口さんは関係者だけを狙うんでしょう?」と阿里。

阿里の言葉の正しさを認めた江里口は自身の復讐について語り出す。
それは江里口の復讐の標的である彼らによって行われた……いや、検査や正しい報道が行われなかった為に起こった悲劇への警告であった。
2度と同じことを起こさない為に……と語る江里口。

そんな江里口に、阿里は「人的問題はもちろんだが、システムの弊害が原因である」と指摘。
人は弱い。
たまたま、当時その場にあった者がそのような事なかれに走ったに過ぎない。
人が替わっても同じことが繰り返されるだろう。
そもそも、人はミスをする生き物である。
だからこそ、システムを整備しミスを無くせば良い。
人はプレス機で手を挟まないように、両手でボタンを押すシステムを構築した。
同様に食害を起こさないようなシステム作りも可能な筈なのだ。

これを聞いた江里口は薄く笑う。
阿里のそれは人を信じていない人間の発言だと言うのだ。
人は悪いことは悪いと教えられれば、変わることが出来る。
それだけの力を持っている。
だから、江里口は今回の挙に踏み切った。

此処でふと真顔に戻る江里口。
そもそも何故、こんな話を阿里にしているのか。
江里口は懐から食害事件で自殺した娘の写真を取り出す。
江里口の娘の名は慈帆。
その名の通り、人を慈しむ娘であった。
だが、彼女の命は心無い者たちの怠慢により奪われた。

そして、その慈帆が生きていれば阿里とほぼ同い年だったのだ。
娘もあなたのように正義を行っていたのかもしれない―――そう口にする江里口に声もない阿里。
遂には、江里口の心の傷の深さを感じ取り泣き出してしまう。

そして、阿里は家に籠ってしまった。
自身の無力感と本当の正義の意味に苦しんだのである。
それは江里口の主張を阿里が受け入れたことを示していた。

其処へ一本の電話が。
電話の主は紐蔵だ。
彼は阿里にある事実を伝えようとしていた。
だが、阿里は電話を聞こうともせず切ってしまう―――6話に続く。

<感想>

新進気鋭の朱戸アオ先生による連載「ネメシスの杖」、その第5話「夜への長いドライブ」です。
これまで同様に勢いのある線で描かれたキャラに骨太な内容が展開されました。
そして、今回から一気に「食害事件編」が佳境へ。

まずは、紐蔵の過去がまた少し明かされました。
紐蔵の腕は彼自身の友人により奪われたとのこと。
何とも意味深長ですね。

ただ、他人に義手を見られること嫌う紐蔵が、一部とはいえ過去を明かした上で義手を曝け出すあたり、阿里に対し心を開きつつあると考えても良い様子。

そして、江里口により論破された阿里。
心の支えを失った彼女は立ち止まってしまいました。

そんな彼女を救うのは、同じく心の支えを求める紐蔵しかない筈。
紐蔵、ついにトラウマを乗り越え1人で阿里のもとへ向かうのではないでしょうか。
熱い展開に期待です!!

一方、復讐を果たすべく行動する江里口を止めることは出来るのか?
こちらも注目です!!

タイトルである「ネメシス」はギリシア神話に登場する女神の名前。
「憤り」と「罰」を司り、「神罰の執行者」としての側面を持つとのこと。

ちなみに「シャーガス病」は実在の病気のようです。
『ネメシスの杖』はそれだけとってもかなり本格的な医療ミステリと言えそうですね。

それと、ネタバレあらすじはかなり改変されているので、オリジナルを読むことをオススメします!!

◆関連過去記事
『ネメシスの杖』第1話『占い師の杖』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『ネメシスの杖』第2話『オカピの群れ』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『ネメシスの杖』第3話『阿里玲の長い一日 前編』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

『ネメシスの杖』第4話『阿里玲の長い一日 後編』(朱戸アオ作、講談社刊『月刊アフタヌーン』連載)ネタバレ批評(レビュー)

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