2013年05月24日

「実は私は」第16話「大人になろう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「実は私は」第16話「大人になろう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第16話登場人物一覧:
黒峰朝陽:主人公、通称「アナザル」。
白神葉子:朝陽の意中の人物。ある秘密が……。
紫々戸獅狼:葉子の幼馴染。彼もまたある秘密を……。
紫々戸獅穂:葉子の幼馴染。彼女もまたある秘密を……。

藍澤渚:クラス委員長。彼女にも秘密が……。
紅本茜:紅本の親族らしい。彼女にも秘密が……。
紅本明里:教師。
朱美みかん:朝陽の幼馴染。新聞部所属。通称「オレンジ」。
岡田:朝陽の友人の1人。通称・岡。割と友人想いの様子。
嶋田:朝陽の友人の1人。通称・嶋。軽い。
桜田:朝陽の友人の1人。通称・サクラ。渋い。
葉子の父:吸血鬼。額に十字傷を抱く巨人。

<ネタバレあらすじ>

〜〜〜これまでのあらすじ〜〜〜〜

「アナザル」こと「絶対に秘密を守れない男」黒崎朝陽は憧れのヒロイン・白神葉子の秘密を知ってしまった。
その秘密とは「白神葉子がハーフの吸血鬼である」こと。
朝陽は葉子の為に、この秘密を守らねばならない―――。
取り巻く人々を相手に、朝陽は秘密を守り抜くことが出来るのか?

矢先、実は宇宙人であった委員長・渚、狼男で肉食系女子な獅穂、悪魔っ娘の茜も加わって……。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

朝陽は目の前で起こっている事態に我が目を疑った。
此処は校長室、その主の席に紅本茜が座って居る。
その傍らには茜を支えるように紅本明里が立つ。

茜は語る。
「聞いての通り、この明里は私のひいひい孫だ。私は何千年と生きている。そして、私こそが校長である。どうだ、自身の愚かさを思い知ったか?」
頭上に輝く2本の角から威圧感を醸し出し、葉子と朝陽に迫る茜。
かしずく明里の姿もあり、それは遠目には玉座に座る魔王のようにも見えた。

いや、ごめん……嘘。
どう贔屓目に見ても、保護者に見守られながら背伸びするお子様の姿であった。
さらに、茜が両手で抱えたお菓子がそれを助長している。

当然、緊張にたじろぐ朝陽はともかく、超天然である葉子には通じない。
「そんな無理せんでええって!!そこ座っとったら校長先生に怒られるよ」
状況をまったく理解していない様子で葉子は茜に近付く。

朝陽はと言えば「事実ですか?」と目で紅本明里に問う。
頷く明里。
なんと、茜は何千年も生きていた悪魔であり、教師である紅本明里のひいひい祖母であり、この学園の校長でもあったのだ。
もっとも、そのひいひい孫である明里自身は悪魔の血は薄く、人と変わらないとのことだが。
茜は続ける。

どうやら、葉子が吸血鬼であることも承知の上で入学を許可したらしい。
さらに、藍澤や獅穂たちも正体を知った上で入学させたようだ。
どうだ、偉いだろう―――と凄む茜。

だが、相手が悪い。
葉子は茜の言葉が耳に入っているのかいないのか。
いや、おそらく入っていないだろう。
茜が抱えたお菓子を取り上げてしまう。

何たる無礼!!
てっきり茜が激怒するかと思いきや……。

お菓子を追いかけ、葉子にいいようにあしらわれている。

「ねっ!!大人の振りしてもダメやからね〜〜〜」
葉子の口調も子供へのソレだ。

完全にお子様扱い―――これを感じ取った茜は再度、威圧感を醸し出す。
確かに大物の空気は出ている……だが、葉子にそれは無意味だ。

「背伸びせんでもええんよ」と何処から取り出した物やら飴を差し出す。
そして、茜は……それを躊躇うことなく心底嬉しそうに口にした。
もはや、威厳は欠片もない。

(ああ……この人も……)
溜息を吐く朝陽。
そんな朝陽が求めた助けの視線から、ふと目を逸らす明里。
どうやら、茜にとってはいつものことのようだ。

飴を頬張ったことで、衝動から解放されたらしい茜。
年長者として舐められっ放しではいられない。
「見せてやる……」とばかりに、圧縮した力を解放する。

周囲の壁に罅が入り、床は沈み、机の上の書類は弾け飛び、壁に固定されていたエアコンが嫌な音を立て軋む。
直接、ビリビリと空気が震え、朝陽は思わず萎縮するが……。

「壊した物は校長の給料から天引きですので」

血縁者である明里の冷たい一言で、茜がピタリと動きを止める。
目が覚めた茜は威厳より何より自身の財布に大きなダメージを負ったことを知った。
そのまま無言で深く項垂れてしまう。

そして、よせばいいのに追い打ちをかける葉子。
「ごめんね。そう言えば藍澤さんが言うとったよ。自分らしくあればいいんやって」

えっ、それはもしかしてどういう意味でしょうか……白神さん。
心中で問いかける朝陽。
だが、茜がその真意に気付き叫びを上げる。

「だから〜〜〜子供じゃないって!!」
堪忍袋の緒が切れた茜(いや、とうに切れてはいたのだろうが結果に繋がっていなかったのだろう)は大人の威厳を見せつけるべく「セクシー対決」を葉子に挑む。
互いにもっともセクシーと思われるポーズを取り合い、よりセクシーだった方が大人と認定されるのである。

思わぬところで、葉子のセクシーポーズを拝見できることになったと年頃の男の子らしさを見せる朝陽。
そんな朝陽を無言で見守る明里。

先行は葉子だ。

葉子は腰に手を当て、顔を逸らす。
そしてドヤ顔を決めた!!
どちらかといえば、仁王立ちと呼ぶに相応しいものである。

えっ、これがセクシーポーズ?
朝陽が失望感に包まれる中、茜は「流石にやる!!」と称賛する。

そして後攻の茜。

気合を入れるや、ボンッと珍妙な音と共にまるで別人のようなグラマラスな美女が現れた。

愕然とする朝陽、葉子、明里。
あろうことか、茜は幻覚を駆使したのだ。

「は、反則負け〜〜〜」
いち早く、事態を察した明里は校長の負けを声高らかに宣言する。
セクシー対決、よもやの決着であった。

ぐぬぬぬぬ……歯噛みして悔しがる茜。
自身の言い出した勝負で勝敗が決したにも関わらず、次なる勝負を申し出る。

「学力テスト対決だ!!高校2年の問題で勝負だ」

大の大人、しかも教師が高校生相手に学力勝負を挑んだのだ。
本末転倒である。明らかに大人げない。
ひいひい孫の明里も呆れ果て「校長、あなたって人は……」と呟いている。

だが、その結果は予想だにしないものとなる……。

テストを終え、それぞれが机に突っ伏したまま微動だにしない茜と葉子。
そう、両者相討ちだったのである。
互いに手も足も出ないとの結果であった。

再度、愕然とする朝陽、明里。
明里は思わぬ事態に完全に頭を抱えている。

2度にわたり、対決が行われたが決着はつかない。
いや、本当は「セクシー対決」時点で決着していたが、それはそれ。
このままでは茜、葉子共に納得がいかない。

そして、第3対決が行われることに。
この対決の提案者は葉子。
そして、葉子にとって対決と言えばアレだ。

朝陽の脳裏をあの事件(6話「背比べをしよう!」参照)が過る。
その方法とは「ロシアンシュー」、それをさらに改良した「ロシアンシューX」であった。
ちなみに、この改良は葉子とみかんが熱く語り合い互いの情熱を込めた逸品だそうだ。

(何してんだよ、白神〜〜〜。しかも、みかんには正体がバレるからあれほど近づくなと……)
絶叫したい気持ちを必死に抑える朝陽。
精神衛生上、宜しくないことこの上ない。

そんな朝陽の気も知らず、葉子と茜はロシアンシュー対決を開始してしまう。
1つ口にする度、交互に上がる悲鳴。
それは茜と葉子の魂の叫びであった。

「お前も苦労するなぁ……白神が好きだから守ろうとしてるんだろ」
悲鳴を背景にしつつ、朝陽に語りかける明里。
「ええ、でもそれだけじゃなくて、純粋に守りたい気持ちもあるんです」
悲鳴を背景にしつつ、はっきりと想いを口にする朝陽。
そんな朝陽に、明里は「生徒を辞めさせたくないから頼むぞ」と悲鳴を背景にしつつ告げる。
茜と葉子を他所に、朝陽と明里は深い信頼関係を築き上げようとしていた。
「ひいやああああああああああああああ」
その背後では、未だに断末魔のような悲鳴が上がり続けている……。

そして、ロシアンシュー対決は終わりを迎えた。
対決の場は凄惨であった。

茜はあの見事な2本の角で天井へと突き刺さったままピクリとも動かない。
葉子は羽を隠すことなく、宙に浮いたまま壁際に寄り添い小刻みに震えている。

「本当にお互い苦労するな……」
「頑張りましょうね……」
朝陽と明里は互いの被保護者から顔を背けつつ、涙ながらに呟くのが精一杯であった―――17話に続く。

<感想>

「週刊少年チャンピオン」にて「さくらDISCORD」を連載されていた増田英二先生の新作。
「さくらDISCORD」は未読の管理人ですが、1話を読んで注目している作品です。
コミックス1巻の発売も決定とのことで、目出度い。
そして、本作かなり面白い!!

その16話です。
紅本先生の「ひいひい祖母ちゃん」こと、茜の詳細判明回。
まさか、何千年も生きた本物の悪魔、しかも校長だったとは……。
だが、外見は幼い子供風。
やっぱり属性多っ!!

前回よりも茜の幼さが強調されており、見た目自体もさらに若くなった様子。
前回時点では、朝陽、葉子の1つ下(後輩?)くらいかと思われましたが、設定上はさらに若いと言うより幼いとのものになりそうか。

そして、学園内に葉子、渚、獅穂が転入出来た理由も判明。
分かってて、茜が校長の権限で入学させたんですね〜〜〜。
当然、明里も葉子たちの正体には気付いていたワケか。
だとすると、13話「冷静になろう」の際も薄々事情は察していたことになるのかな。

「実は私は」第13話「冷静になろう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

ちなみに、茜は何千年も生きているとのことなので、校長の座についたのもだいぶ古くからとなりそうか。
だとすれば、卒業生である葉子パパと葉子ママとも知り合いの可能性があるな。
これは期待!!

そして、「ロシアンシュー再び」とみかんも回想ながらの登場。

「実は私は」第6話「背比べしよう!」(増田英二作、秋田書店刊「週刊少年チャンピオン」連載)ネタバレ批評(レビュー)

今回は割と盛り沢山でしたね。

それにしても、どんどん常識人化する朝陽。
何時の間にやら、葉子の保護者ポジションにまで。
恋人からは遠くなっているような……朝陽、前途多難かも。

そして、お笑いの基本は繰り返しということで、茜の子供ネタが繰り返されていました。
基本にも忠実な回でしたね。

そう言えば、茜はあの容姿で校長が出来るものだろうか?
学校行事とか、公式な業務とかはこなせるのか?
う〜〜〜ん、幻覚で誤魔化しているのかな?
でも、何十年と校長として居たら流石に目立ちそうなものだが……。
でもって、あれだけ悲鳴が上がってたら、誰かが校長室を確認しそうなものなのですが……。
やはり、何かまだ秘密がある……のでしょうか?

うわ〜〜〜いろいろ気になるぅぅぅぅぅ。
そんな次回ですが、どうやら獅穂関係になりそうか。
引っ越しにまつわるエピソードのようなのでドタバタにも期待出来て楽しみ!!

上記のあらすじは本作の魅力を伝えられるよう改変を加えてまとめていますが、その面白さを伝えきれていません。
やっぱり、あの絵とコマ割りなどのテンポあっての本作。
是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を読んで欲しい。

コミックス1巻も発売決定とのことで、次回も注目です!!

もう1度繰り返しましょう。
本作に興味を持たれた方には、是非、「週刊少年チャンピオン」本誌を捜して読んで欲しい。
最近の「週刊少年チャンピオン」は「名探偵マーニー」や本作など本当に粒揃いでクオリティが高い作品が多い。
注目の雑誌の1つと言えるでしょう。

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