2013年05月27日

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 数字錠』最終話・第3話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』3号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 数字錠』最終話・第3話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』3号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
御手洗潔:言わずと知れた名探偵。彼はこの事件以来コーヒーを飲まなくなった。
石岡:御手洗の助手にしてベストパートナー。
竹越刑事:『占星術殺人事件』にも登場した刑事。御手洗を信用している。

吹田久朗:吹田電飾の社長。
北川幸男:吹田電飾の社員。看板描きが出来る。
石原:吹田に株で騙され、憎んでいた。
秋田:吹田電飾の若手社員の1人。
大久保:吹田電飾の若手社員の1人。
土屋:吹田電飾の若手社員の1人。
宮田誠:吹田電飾の若手社員の1人。少年。
吹田靖子:吹田の姪。寮で若手社員の世話を焼いている。

・前回はこちら。
『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 数字錠』第2話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』3号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

宮田誠少年の要望を汲み、東京タワーに上った御手洗たち。
と、其処へ竹越刑事が吹田殺害容疑で北川幸男を逮捕したと伝えに来る。

この報を耳にした途端、宮田誠少年の態度が急変する。
それまでの笑顔が消え、何かに耐えるような表情を浮かべたのだ。

「北川さんは犯人じゃない!!僕が……僕が社長を殺したんです!!」

そう言うなり、宮田少年は御手洗の制止を振り切り衝撃的な告白を始めた。

家出同然に上京した宮田少年。
行く宛もなく困り果てていたところ、吹田電飾の求人を目にしこれに応募した。
ところが、吹田は宮田少年を拒否しようとする。
そんな吹田をとりなし、宮田少年の雇い入れに口利きしたのが北川だった。

以後も、北川は宮田少年の面倒を見続けた。
宮田少年は北川のおかげで命を永らえたと言ってよい。
北川は彼にとって尊敬すべき先輩であり、恩人であった。

そんな北川を吹田社長は貶めたのだ。
しかも、発端は宮田少年であった。

ある晩、キャバレーに出かけた吹田たち。
思い思いに酒を飲む中、未成年の宮田少年はコーラを口にしていた。
これを吹田が見咎めたのだ。

酒を飲むよう強要する吹田。
宮田少年が困り果てていたところ、北川が救いの手を差し伸べた。
「未成年だからもう帰れ」と勧めたのだ。

ところが、この行為が吹田の勘に触った。
普段から気に喰わないと思っていたのかもしれない。
「いい恰好しやがって!!」と罵ると、芸をするよう強要したのだ。

北川はこの要求をあっさりと呑んだ。
そして、壇上で踊りを見事にやってのけた。

これがまた吹田の勘に触れた。
吹田は自身も壇上に上ると、北川のズボンを脱がし辱めたのだ。
北川は頭からズボンをかけられ、屈辱に震えていたと言う。

宮田少年は自身の不甲斐なさを責めた。
北川に恩になりながら、何も出来なかった自分を責めた。
それどころか、原因となった自分を責めた。
そして、少年さながらの潔癖さで報復を遂行しなければならないと決めた。

通勤途中、軽トラはラッシュに巻き込まれ遅々として進まない。
その隙を突き、荷台の宮田少年は軽トラから降りると並走する地下鉄に乗り職場へと先回りしてたのだ。
其処で吹田を殺害した。
その顔は北川を辱めたあの日のように嫌らしく笑っていたそうだ。
だから、後悔していないと言う。

そして、地下鉄で元来た道を戻ると、信号待ちをしていた軽トラの荷台に戻ったのだ。
これが事件の真相であった。

御手洗は宮田少年との別れを惜しみ、彼の好きな珈琲を喫茶店でご馳走する。
それは本格的な珈琲であった。
「こんな美味しい珈琲は飲んだことがない」と顔を綻ばせる宮田少年。

楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、宮田少年は竹越に連行されることとなった。
連れて行かれる宮田少年は御手洗に「これで思い残すことは無くなった」とお礼を述べる。
そんな彼に御手洗は激情のままに金銭を手渡す。
本日の為に用意した金である。
遠慮がちな宮田少年だが、御手洗の剣幕に押され受け取ることに。

こうして、宮田少年は逮捕された。

その夜、石岡は御手洗に数字錠の謎について尋ねる。
何故、宮田少年はそれをクリアできたのか?

そんな石岡に御手洗は3桁で0から9までの数字錠の場合は「10×10×10の1000通り」しか組み合わせが存在しないことを教える。
実質33分もあれば、すべての組み合わせを試すことが出来る。
下の位から試せば、もっと早く終わるだろう。

ならば、何故、御手洗は「数字錠が壁」だと嘘を吐いたのか?

実は御手洗は竹越に事情を聞いた時点で犯人の目星がついていた。
吹田の財布に現金が残されていたことから、石原の犯行ではない。
トラック通勤組の荷台に乗っている人物こそが犯人だ―――と。

此処で持前の好奇心が首をもたげた御手洗は犯人の人となりを知りたくなった。
其処で時間を稼ぐ為にありもしない「数字錠の壁」を持ち出したのであった。

だが、会ってみれば宮田少年は善良な人物。
これには御手洗も困った。
少しでも罪の意識を拭う為に、宮田少年の願いを叶えようとしたのである。
「僕はこれから珈琲は口にしないよ」
御手洗は宮田少年を騙したことを詫びるように口にした。

御手洗の意外な一面を目にした石岡は、より一層この奇矯だが情に厚い愛すべき人物に対し信頼を寄せることになったのである―――『数字錠』了。

<感想>

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録―』の第4弾。
今回、コミカライズ化されたのは短編集『御手洗潔の挨拶』に収録された『数字錠』。
その全3話中の最終話(第3話)でした。
原作短編『数字錠』に興味のある方は、こちらをどうぞ!!

『数字錠』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔の挨拶』収録)ネタバレ書評(レビュー)

本作のテーマはトリックよりも、御手洗という人物の人となり。
其処に注目して読むと楽しめる筈。

今回コミカライズされたパートもほぼ原作に忠実でしたね。
異なっている点は―――。

原作だと「吹田社長に辱められながらも自身を押さえて平然としていた北川」が「屈辱に耐える北川」に変わっていたこと。
それと、原作だと「竹越登場は喫茶店で宮田少年の告白には立ち会わない」だったのが「東京タワーでの登場であり告白に立ち会う」に変わっていたこと。
そして、カットされたかに見えた喫茶店ですが、御手洗の珈琲断ち宣言の為に「告白後に立ち寄る」に変更されていました。
うん、やはり宮田少年の告白は東京タワー上の多くの家庭の灯を前にしての方が絵的に映えたし、喫茶店のエピソードもあった方が良いのでベストな構成だと思います。

何より、ラストまで真犯人を明らかにすることを引っ張ったのは良かった。
やっぱり、ミステリとしては犯人判明は最終話の方が盛り上がるし。
内容的にも必要かつ十分に描かれており、ラストでは余韻も残されていたので好印象です。

『数字錠』のコミカライズとしては申し分のないものと言えると思います。
良かった!!

でもって、早速『週刊モーニング』本誌では第5弾の原作が発表。
今度は『IgE』(講談社刊『御手洗潔のメロディ』収録)とのこと。

『IgE』が収録された『御手洗潔のメロディ』のあらすじはこちら。

『IgE』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔のメロディ』収録)ネタバレ書評(レビュー)

<あらすじ>

御手洗潔の過去・現在 貫き流れる音楽
次々と壊される便器と美女。不可解な事件に隠された真実とは……!?

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在するとき、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」などバラエティ豊かな4つの傑作短編を収録。
(講談社公式HPより)


『IgE』コミカライズ、期待ですね!!

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 数字錠』第1話(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』3号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

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『山高帽のイカロス』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔のダンス』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『数字錠』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔の挨拶』収録)ネタバレ書評(レビュー)

『糸ノコとジグザグ』(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』3号連続掲載)ネタバレ批評(レビュー)

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録― 傘を折る女』(島田荘司原作、原点火画、講談社刊『週刊モーニング』4号連続掲載)まとめ

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【新刊情報】『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録―』コミック1巻が2013年1月23日に発売予定!!

『ミタライ ―探偵御手洗潔の事件記録―』第3弾の内容判明!!コミカライズ作品は『山高帽のイカロス』(講談社刊『御手洗潔のダンス』収録)に!!

コミカライズされる『IgE』収録「御手洗潔のメロディ (講談社文庫)」です!!
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『数字錠』収録「御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)」です!!
御手洗潔の挨拶 (講談社文庫)





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「ミタライ 探偵御手洗潔の事件記録(2) (モーニングKC)」です!!
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