2013年07月22日

『IgE』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔のメロディ』収録)

『IgE』(島田荘司著、講談社刊『御手洗潔のメロディ』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

御手洗潔の過去・現在 貫き流れる音楽
次々と壊される便器と美女。不可解な事件に隠された真実とは……!?

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在するとき、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」などバラエティ豊かな4つの傑作短編を収録。
(講談社公式HPより)


<感想>

御手洗潔が活躍する短編です。
まさに、意外な繋がりと展開の妙を楽しむべき作品と言えるでしょう。

消えた美女、破壊される便器、伐採されかけた杉の木。
この3つの謎から導き出される結末の意外性たるや!!
タイトル「IgE」の意味と共に驚嘆せよ!!

ただ1点だけ疑問があって……これよく考えると実行犯以外は「IgE」かどうかの重要性は関係ないから目黒で十分な気もする。
危険を冒すよりは、黒服たち自身がマスクするなりで出来る限り「IgE」に対処して目黒で実行した方が良かったのではなかろうか。
そしたら、ハードルは存在しないことになるし。
さらに、御手洗が自身で発言した通り露見することも無かったのにねぇ……。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
御手洗潔:言わずと知れた名探偵。今回も健在。
石岡:御手洗の助手にしてベストパートナー。
丹下刑事:御手洗の助力を得て事件を解決した経験がある刑事。御手洗を信用している。

秦野大造:高名な声楽家。
本宮雅志:ファミレスS川崎店の従業員。
E連合会長:???
娘婿:???


御手洗のもとに、声楽家の秦野から依頼が持ち込まれた。
何でも消えた教え子の女性について調べて欲しいと言う。
秦野はどうやら、その女性に恋している様子だが……。

並行して、もう1つ御手洗のもとに依頼が届いた。
こちらの依頼人は本宮雅志。
有名なファミレスチェーンS川崎店の従業員である。
本宮によれば、何度も便器が壊されてしまうのでこの犯人を見つけ出して欲しいらしい。

さらに目黒の公園では、針葉樹伐採未遂事件が発生していた。
この報道を目にした御手洗は「IgE」と呟くや、大きな陰謀が蠢いていると指摘するが……。

御手洗は秦野に連絡を入れ、本日夕方頃に相手の女性から連絡があるだろうから彼女と共に外出することを勧める。
本日ならば彼女と想いを遂げることも可能らしい。
だが、いずれにしろこれが彼女との最後の逢瀬になるのだそうだが……。

さらに、御手洗の指示で丹下刑事が動いた。
御手洗は「ファミレスS川崎店にて殺人事件が起こる」と予言。
これを受けて丹下刑事は4人の部下と共にファミレスS川崎店に出向いたのだ。
これに石岡も同行する。
しかし、肝心の御手洗は何かを調べる為に別行動であった。

ファミレスS川崎店に詰める石岡たち。
其処へ秦野から連絡が入る。
御手洗の予期した通り、秦野のもとへ例の美女から連絡が入った。
秦野はそちらへ向かったようだ。

一方、何処に居るのか分からない御手洗は「被害者が黒服3人を連れた老人である」と連絡を寄越す。
さらに「加害者がライダーメットを着用した如何にもな男である」と断言。
しかも「加害者は2人1組である」とも断定した。

まさか……と思う石岡だが、実際に黒服3人を連れた老人が川崎店に来訪し驚く。
しかも、御手洗の予言通りの姿をした男も登場する。

石岡が御手洗の伝言を告げたことで、丹下刑事たちが動いた。
対象の男を捕まえようとするが、男はこれまた予言通りの2人組で隙を突いて逃げられてしまう。

しかし、此処へ御手洗が登場。
御手洗により、事前に逃亡用のバイクに細工されていた2人組はあえなく御用となった。
さらに、御手洗は被害者となる筈であった老人が連れていた黒服3人組も事件に関与していると指摘。
これに反発する黒服3人組を謎の粉で黙らせる。
さらにさらに、ファミレスからいずこかへと電話を入れると現れた男を黒幕として捕らえてしまうのであった。
何が何やら良く分からない石岡たちだが……。

その翌日、事態の説明を求めてやって来た丹下刑事に御手洗はすべての事情を明かす。
事の発端は、暴力団から企業へと転身したE連合株式会社にあった。
その会長こそが被害者として狙われた老人だったのだ。
そして、この老人殺害の黒幕こそがその娘婿であった。

実はE連合にはかねてから敵対するライバル組織があった。
会長はこれを武力制圧すると言い出した。
これを聞いて婿は困惑した。
時代とそぐわないにも程があったからだ。
黒服ら幹部もこの決定に戸惑った。
だが、彼らは誰1人として異議を唱えられる立場になかった。
E連合は会長のワンマンだったからである。

会長を説得する術を持たない彼らは困り果てた。
其処で強硬策を採用することとなった。
このまま会長に居座られるよりは、良い機会なので代替わりを促そうとなったのだ。
ただし、会長には死を以てその座を退いて貰うこととなった。
こうして、彼らは会長暗殺計画を練った。

普段、会長はほとんど表に姿を現さない。
殺害するのも困難だ。
しかし、ファミレスS目黒店にのみはお粥を楽しみに足を運んでいた。
さらに、其処から孫の声を聞く為に娘の自宅へ電話を入れることを日課にしていたのである。
チャンスはこの時しかない。

ところが、目黒店での襲撃はある理由により挫折を余儀なくされた。
困った彼らは次善の策を取る。

目黒店とそっくりな川崎店に目黒と偽り連れ出しておいて殺害しようとしたのだ。
ただし、目黒店と川崎店には一点だけ異なる点があった。
それがトイレの便器だったのである。
此の点を悟られないようにするべく、便器を破壊していたのだ。

そして、もう1つ困ったことがあった。
川崎からだと目黒からと同じ番号に架けても繋がる先が別になるのだ。
会長がいつも通りに娘宅に電話を入れようとすれば、嘘がバレてしまう。
これを解決するために、娘宅と同じ電話番号を持つ人物が調べ上げられた。
後は、目的の時間にその人物が留守になるよう計らい、その隙に婿が電話に出ればよい。
「孫は寝てしまった」とでも言い抜ければ不信は生まれないだろう。
そして、その目的の人物こそが秦野だったのである。
不思議な美女は秦野を誘き出す為に用意された人物であった。
そして、この美女は会長の娘婿の愛人であった。

こうして用意周到に張り巡らされた計画であったが、御手洗の介入により水泡に帰したのだ。
だが……と御手洗は語る。
そもそも、こんな回りくどい計画を採用しなければならなくなった時点で齟齬が生じていたのだ。

その理由こそが「IgE」。
いわゆるアレルギーだ。
なんと、黒服たちは全員が花粉症に苦しんでいたのである。
そして、目黒店そばの公園には杉の木が立っていた。
当初はこれを伐採しようとしたが失敗。
次に、この計画を立案したのであった。
御手洗が思わせぶりに見せつけた粉に屈したのもこの所為であった。
彼らは御手洗の所持する粉が花粉だと思い込み恐れたのである。

こうして事件は解決した。
ある夜、御手洗の前に例の美女が現れた。
彼女は日本に居られなくなったので海外に行くことにしたらしい。

会長、その娘、そしてその婿、その愛人、これを愛した秦野。
誰もが皆、報われない想いを抱くことになったのだ。
かくも悪だくみは割に合わないのである―――エンド。

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