2013年06月02日

『泡 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2013年6月号』掲載)

『泡 統括診断部の事件カルテ』(知念実希人著、新潮社刊『小説新潮 2013年6月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

カッパが現れた!
超個性派天才女医が謎の正体を追い詰める。
(新潮社公式HPより)


<感想>

『誰がための刃 レゾンデートル』(講談社刊)にて「第4回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」を受賞された知念実希人先生の短編です。

登場人物がイイキャラしてますね。
ホームズ役は、院長の娘で統括診断部部長の天久鷹央。
ワトスン役となるのが、その部下の小鳥遊優。
一見、鷹と小鳥の関係の如く捕食者と被捕食者……に見えますが、その実は支え合う関係ですね。
うん、このバランスが良い。

そして、タイトルにもなっている泡に重大な意味があることが判明するラストがイイですね。
良いサプライズでした。

伏線も上手く張られており、それが回収される心地良さもあり、なかなかの作品です。

ちなみに、知念先生の次回作ですが『50/50ダンス』改め『ブラッドライン』とのこと。
2013年7月下旬発売予定とのことなので、注目です!!

<ネタバレあらすじ>

久留米池公園―――その奥にある雷桜を深夜に撮影した者はクラスのヒーローになれる。
そんな噂があった。

クラスのヒーローになりたい!!
そう願った山本俊介少年と遠藤幸太少年は、夜の公園を訪れ雷桜を撮影しようとすることに。

ところが、いざ雷桜撮影に臨んだその時、彼らは止まってしまった。
雷桜の傍にある池、其処へと続くぬかるみに人の足跡があったのだ。
そういえば、つい先日大豪雨があって雷桜周辺の土が池へと流れ込んだと聞いていたが……。
だが、よくよく見れば足跡は池の中へと続いている。
まさか……河童!?

興味を覚えた少年たちは池の中を覗くことに。
手にしたライトで池の底を照らすと、すぐに反応が現れた。
池の中央部分が盛り上がったかと思うと、中から人影が浮かび上がったのだ。
その姿はまるで河童であった。
少年たちは慌てて逃げ出した……。

その日、小鳥遊優は多忙を極めていた。
多くの患者が治療に訪れていたのである。
優は天久中央病院の統括診断部で働く医師であった。

と、其処へ優を呼び出す連絡が入る。
小鳥、小鳥と呼ばれれば、相手が誰かはすぐに分かる。
相手は優の上司、統括診断部部長にして院長の娘・天久鷹央であった。
優にとって鷹央は天敵と言える存在。
出来ることならば、関わりたくない相手である。

例えば、こんなエピソードがある。
優の苗字は小鳥遊。
これは鷹が居ないから小鳥が遊ぶとの意味で「たかなし」と読む。
鷹央はこれを知るとすぐに言い放ったものだ。
「じゃぁ、鷹央である私が居るからお前は遊べない。だから、小鳥な」と。

その言葉通り、優は遊ぶ余裕を持てなかった。
統括診断部に暇があれば、他所へ貸し出されてしまうのだ。
今日も今日とて多数の患者を受け持ったのはその為だ。
優はこれを理由に逃げようとするが……。

優への態度に難があるとはいえ、鷹央が優れた医師であることに異議を挟む余地は無かった。
類稀な洞察力により、患者の病名を見抜くのだ。

今日も優が鷹央から逃れるべく挙げた患者の症状を聞くなり、次々と病名を言い当ててしまう。
身体が痛く腕が痺れると訴えていた男性患者には、女性と関係を持った際にベッドの上で腕枕し過ぎたからだと断定。
遂には、別の薬目当ての患者の詐病すら見抜いてしまった。

これでは逃げ切れる筈もない。
哀れ、優は鷹央の呼び出しに応じざるを得ないことに。

優には呼び出しの理由は分かっていた。
病院という場所にはさまざまな患者がやって来る。
当然、さまざまな情報も集う。
患者の中には、心の不安から病を発する者も居る。
其処でいろいろな悩み事が持ち込まれるのだ。

そんな悩み事が統括診断部には集うのである。
そして、鷹央の洞察力はこの悩み解決にも役立つのだ。
そのうち評判が評判を呼び、悩みだけではなく謎も寄せられるようになった。
優はその謎解決の為の助手役を仰せつかっているのである。

屋上へ鷹央を追った優。
鷹央は悩み事のリストがずらっと並んだPCを優に見せ、今回、彼女が興味を持った謎が何か当てるよう促す。

PC上には溢れんばかりの悩み事が書き込まれている。
そんな中でも明らかに鷹央好みのものがあった。
「金の皿が盗まれた」の下、「河童を見た」との一文。

思わず頭を抱える優だが、その優の想像は的中していた。
今回、鷹央と優が挑むことになったのは、山本少年と遠藤少年が目にした河童の謎だったのだ……。

鷹央は直接、少年に会うと事情を聞き出した。
途端、興味を失った様子を見せる。
どうやら、既に真相を突き止めたようだ。

優が真相を尋ねるも、答えようとしない鷹央。
身体が痛く腕が痺れると訴えていた患者を診察しながら、明日にでも池の中を調べれば分かると繰り返すばかり。
患者自身はその日のうちに退院させてしまった。

その夜、久留米池公園に鷹央と優の姿があった。
彼らは真っ直ぐに池へと向かっている。

すると、池からは奇妙な水音が……。
身構えた優の前に、潜水服に身を包んだ不審な人物が!!
優は咄嗟に相手を叩き伏せる。

何が何やら分からない優に、鷹央は潜水服の人物こそが河童の正体であると告げる。
そして、知人の成瀬刑事に引き渡すよう指示する鷹央。

なんと、潜水服の人物こそ相談が寄せられていた金の皿を盗んだ泥棒らしい。
さらに、彼こそが退院した「身体が痛く腕が痺れると訴えていた患者」であった。
身体が痛く腕が痺れたのは潜水病の症状だったのだ。
潜水病は、気圧により血中に泡が生じることで起こる病気である。
どうして、そんなことになったのか?

彼は金の皿を盗み出し、雷桜の下に埋めた。
ところが、先日の豪雨で皿が土砂ごと池へと流れ込んでしまった。
困った彼は、潜水に自信があったので潜ることにした。
深夜の人気のない時間を選んだのだが、少年たちがやって来てしまう。
さらに、ライトを当てられたことでパニックになり、緊急浮上してしまった。
此処で血中に泡が生じ、潜水病になったのだ。
だが、理由を明かすワケにはいかない。
其処で症状だけを訴えていたのだ。
これでは治る筈がない。
加えて、鷹央から明日に池を調べると聞かされた為に慌てて回収しようとして捕まったのだ。

つまり、すべては真実を見抜いた鷹央の罠だったのだ。
こうして、犯人はやって来た成瀬刑事の手で逮捕された。
ただし、その前に鷹央の手で適切な治療が施されたのは言うまでもない。

金の皿は持ち主から鷹央へと感謝の印として贈られたが「それを使うことで味が変わるワケでも無いし」とは鷹央の言である―――エンド。

◆関連過去記事
『誰がための刃 レゾンデートル』(知念実希人著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

知念実希人先生、新作刊行予定を明かす。タイトルは『50/50ダンス(仮)』とのこと。

知念実希人先生、新作長編はタイトル『ブラッドライン』!!2013年7月発売予定とのこと!!

知念実希人先生、受賞後第一作は短編『泡 -統括診断部の事件カルテ-』に!!『小説新潮 2013年6月号』に掲載予定とのこと!!

第4回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞作決まる!!

『泡 -統括診断部の事件カルテ-』が掲載された「小説新潮 2013年 06月号 [雑誌]」です!!
小説新潮 2013年 06月号 [雑誌]





「ブラッドライン」です!!
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「誰がための刃 レゾンデートル」です!!
誰がための刃 レゾンデートル





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