2013年07月01日

「Q.E.D.証明終了 失恋」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン+(プラス) 2013年6号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

「Q.E.D.証明終了 失恋」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン+(プラス) 2013年6号」連載)ネタバレ批評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

登場人物一覧:
燈馬想:言わずと知れた主人公。
水原可奈:言わずと知れたヒロイン。

猫柳あやめ:駆け出しの女性落語家。猫柳に弟子入りしたが……。
猫柳:あやめの師匠。寄席を重視する堅実派。
椿屋亀吉:猫柳のライバル。テレビ局を舞台にする売れっ子。
椿屋はこふぐ:亀吉の弟子。はこふぐに似ていることからこの名がついた。
ヒロシ:あやめの恋人。あやめは彼にふられることになる。

<ネタバレあらすじ>

猫柳あやめは猫柳一門の落語家である。
今日も高座に上がっている。

彼女の持ちネタの中でも1番人気は恋人・ヒロシとのエピソード。
例えば誕生日プレゼントのエピソードはこうだ。

ヒロシがあやめの誕生日にプレゼントを贈った。
大きな箱に大喜びしたあやめだが、中を開けてみればお札とメモらしき用紙が1枚。
メモには「何を買っていいのか分からなかったので、このお金で好きな物を買ってください」と書かれていた。
あやめはまとめる「お金を貰ってあれほどがっかりしたことはない」と。

また、2人で食事に出かけた際のエピソードはこうだ。
ラーメン屋に足を運んだあやめとヒロシ。
あやめはチャーシューメン、ヒロシは普通のラーメンを注文した。
すると、ヒロシがあやめのチャーシューに興味を持った。
可哀想に思ったあやめは2枚あったチャーシューの1枚を譲った。
「美味しい」と喜ぶヒロシに、良かったと頷くあやめ。
ところが、「じゃあ、もう1枚貰うね」とヒロシは最後のチャーシューも口にしてしまう。
あやめがそれを楽しみにしていたにも関わらず。
「だったら、お前もチャーシューメンを注文しろよ!!」あやめの心からの叫びに客は大爆笑するのだ。

このようにヒロシをネタにするあやめだが、彼のことは悪からず思っている。
むしろ、ヒロシのその天然ぶりを愛していた。
あやめが軽蔑しているのは師匠の猫柳だ。
猫柳は最近、評判になっているあやめに嫉妬したのか「芸を磨くように」との苦言しか与えない。

もともと、あやめは椿屋亀吉の大ファンであった。
彼の芸を見て、この世界に入ろうと決めたほどである。
ところが、猫柳の大ファンだった父によりその門下に入るよう強いられたのだ。
あやめは第一歩から躓いたと不服であった。

そもそも、椿屋亀吉はテレビを中心とする落語家で売れっ子。
猫柳は寄席を本領とする本格派だが、知る人ぞ知る名人であった。
そして、椿屋と猫柳は互いに仲が悪い。
言っては何だが、あやめは椿屋を応援している。

そんなある日、猫柳と椿屋が同じ寄席に参加することになった。
嫌な予感を抱くあやめ。
案の定、2人は顔を合わせるなりいがみ合う。
さらに、挑むように椿屋が500万円もの大金を猫柳に叩きつける。
実は前回、猫柳が椿屋の浪費癖を笑っていた。
おそらく、稼いだ金も殆どを賭け事に使っただろうとの主旨だ。
これに、椿屋は大金を貯金していると主張し、次回に見せてやると豪語していたのである。
その約束をこうして実行したワケだったが……。

そんな大金を楽屋に置いておくことは出来ない。
かといって、今更持ち帰ることも出来ない。
椿屋は500万円の保管に頭を悩ますことに。

これに猫柳がある案を示す。
チャック式の袋に500万円を収納すると、それを壺の取っ手に南京錠で固定したのだ。
これで、袋の口を開けて札束を取り出すことは不可能である。
かといって、壺ごと運び出すにもこれまた目立つ。
盗まれ難いだろうとの猫柳の提案であった。

1度挑まれれば後には退けない椿屋はこれを了承。
それでも不安だったのか、見張り役に弟子の椿屋はこふぐを指名する。
とりあえず、事態が収拾されたとあやめも含め周囲の弟子たちも胸を撫で下ろすが……。

高座を終えた椿屋が楽屋に戻って南京錠を開けてみると、袋の中の500万円が消えていたのである。
これに、椿屋は大騒ぎ。
盗人だ、盗んだ奴が居ると色を変える。
だが、見張り役をしていたはこふぐは盗まれた筈がないと主張。
また、猫柳も何かの間違いではないかと揶揄する始末。
最終的には、椿屋が折れる形で終息することとなった。

椿屋に同情的なあやめとしては納得できない。
と、劇場の支配人がこの人なら信用出来ると燈馬想と可奈を連れて来た。
実はあやめと可奈は知り合い。
その伝手で高座を見物しに来ていたのだ。
結局、可奈の安請け合いもあって想が事件解決に乗り出すことに。

想は当日になって変更された演目に注目。
それは「壺算」や「時蕎麦」であった。
さらに、この演目変更が猫柳の指示であると知り、ある結論に至る。
不思議がる可奈に「トリックドンキーと同じだ」と告げる想。
どうやら、「トリックドンキー」と同じく意外な形で繋がり合う人物が居るらしい。

一方、猫柳が犯人ではないかと疑うあやめは独自の調査を開始する。
ところが、奇妙な事実が判明する。
椿屋は被害届を出すつもりが無いようなのである。
しかも、椿屋は猫柳の指摘通り浪費癖があり借金に追われ、到底500万円の貯金があるとは思えなかったことも分かった。
見張りをしていたはこふぐ自身は「この事件には天狗と狸が関わっている」と口にするが……。

さらに、あやめは兄弟子から「芸人として表に出してよい芸」と「出すべきではない芸」があることを教えられる。
「出すべきではない芸」を表に出せば「自身を切り売り」することになるのだそうだ。
どうやら、猫柳があやめに苦言を呈していたのはそれをあやめに教えようとしていたようである。

数日後、想により関係者が一同に集められた。
想は今回の事件の謎解きを始める。

今回の事件の犯人を猫柳だと指摘する想。
だが、猫柳は動じない。
それどころか、普段ならば猫柳を批難しそうな椿屋までが何故か黙り込んでいる。

まず、難関と思われていた壺と南京錠の壁が思い込みによる壁に過ぎないことを証明する想。
南京錠で固定された袋をU字型に歪めるだけでチャックを開けることが出来たのだ。
これはマジックの初歩だそうである。
猫柳は楽屋に出入りするマジシャンにこの方法を教わっていた。

だが、壺自体ははこふぐが見張っていた筈だが……。
ところが、はこふぐにも高座の出番があったことを忘れてはならない。
出番の迫ったはこふぐは、見張りを交代して貰う相手に頭を悩ませた。
師匠たちにはもちろん頼めない。
かといって、若手の弟子も信頼感に欠ける。
そこで、はこふぐは劇場の支配人に預けるべく楽屋の外へ壺ごと持ち出した。

その場面を椿屋を追っていた借金取りに見つかってしまったのだ。
これが「天狗」である。

椿屋が大金を袋に入れたと知った借金取りは返済をはこふぐに迫った。
そんなことをはこふぐが判断できる筈はない。
困っていたところに、猫柳が通りかかり例の方法で中身を取り出すと全額を返済に充てたのである。
これが「狸」であった。

いや、待て。
幾らなんでも、500万円すべてを持ち主に断りもなく返済に充てるのは問題ではないか。
ところが、此処が認識の相違であった。

実は、袋の中身は500万円では無かった。
なんと、札束の1番上と下のみは真札だが、他は新聞紙の束であった。
椿屋は猫柳の手前、取り繕っていたのである。
事実は猫柳の指摘通り、椿屋に貯金は存在しなかった。
つまり、500万円とされていた札束は10万円だったのである。
その10万円が返済に消えたのだ。

猫柳は椿屋のこの欺瞞に早くから気付いていた。
そこで、演目を急遽「壺算」と「時蕎麦」に切り替えさせた。
「壺算」も「時蕎麦」も共に釣銭詐欺の話である。
椿屋が騙りを行っていることを見抜いていたのだ。

そして、猫柳の演目変更により椿屋も見抜かれたことを知っていた。
さらに、その様子から大体の事情を察した。
そこで被害届を出さず、穏便に済ませる方法に切り替えたのだ。

そもそも、猫柳と椿屋はライバルだが互いを尊重していた。
椿屋が落語家を辞めようとしたときも、その実力を惜しんだ猫柳が説得したらしい。
そして、椿屋は大ブレイクを果たした。
ある意味、猫柳は椿屋の恩人であった。
猫柳は対立しているように見せつつも、椿屋を心配していたのだそうだ。
そんな猫柳の心情を椿屋も理解しているからこそ、本当の意味で決裂まで至っていなかったのである。

こうして、真相が明らかになった。
繋がっていないようで、実は繋がっていた猫柳と椿屋。
想の語った「意外な繋がり」とはこのことであった。

数日後、あやめの高座にヒロシが現れた。
これまで一度も見に来なかったヒロシが、だ。
だが、あやめの十八番はヒロシネタである。
こうして、あやめはヒロシの前で彼を馬鹿にするネタを演じることとなった。
ヒロシは聞きながら泣いていた。
そして、あやめはヒロシに捨てられた。
あやめの芸は「自身を切り売りする芸」だったのだ。

さらに数日後、椿屋が今回の騒動を演目に上げた。
すると、客席は大爆笑となった。
事の顛末を知る当事者のあやめたちまで思わず笑ってしまうほどの出来であった。

今、あやめは自身を見詰め直している。
今回の騒動を通じてイロイロな物を学んだあやめ。
彼女は本当の芸を身に着けるべく研鑽に励んでいる―――エンド。

<感想>

「月刊少年マガジン+」2013年6号掲載「失恋」です。
2013年6号には「C.M.B.番外編 M.A.U.」も掲載され、豪華な2本立てとなりました。

「C.M.B.番外編 M.A.U. “ブラック・マーケットの魔女”の事件目録 箪笥の中の幽霊」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン+(プラス) 2013年6号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

ちなみに本作「失恋」は「月刊少年マガジン」本誌に掲載された「初恋」と対になっています。
感性ゆえに結びついた「初恋」と感性ゆえに別れた「失恋」。
あなたはどちらが好きですか?
とはいえ、基本は「初恋」と「失恋」は別物ですね。
他の共通点は「トリックドンキー」か。

「Q.E.D.証明終了 初恋」(加藤元浩著、講談社刊「月刊少年マガジン 2013年7月号」連載)ネタバレ批評(レビュー)

でもって、本作「失恋」。
サブタイトル通り、最終的に「失恋」してしまうあやめ。

あやめの芸は本当の芸ではありませんでした。
それは「あやめがヒロシをネタにしたこと」に問題があるのではありません。
直前の師匠たちの台詞にもあるように「笑い飛ばすことが出来る」可能性もあったのですから。
つまり、あやめのそれは「自身を切り売りする芸」に留まったことが問題だったのでしょう。

同じく身内ネタで言えば、椿屋も今回の事件をネタにしています。
ですが、そのネタは当事者でさえも笑い出すようなものでした。
ヒロシが泣いたのとは対照的です。

あくまで、「椿屋のように当事者でさえ笑わせることが出来なかった」ことがあやめの問題だった。
もしも、あやめが本当の芸を身に着けていれば、ヒロシも自身がネタでも笑い飛ばしていたのかもしれません。

ここが芸論の本質に繋がり難しいところなのでしょうが、すわなち椿屋とあやめの差は「相手を虚仮にした段階で終わってしまっているかどうか」。
椿屋は相手を虚仮にしつつも愛情を込めた視線で物語っているのに対し、あやめは虚仮にする点で止まってしまったことが問題だったのでしょう。
だからこそ、ヒロシは泣いた。
それがあやめの本音だと思って。

ある意味、猫柳と椿屋のように信頼関係が成り立っていれば回避できた問題でもあり、ここもあやめとヒロシが本当の意味で交際出来ていなかったことを示しているのかもしれませんね。
イロイロ考えさせられましたね。

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